恥ずかしいことだが、他人の境遇や成功を見て、素直に喜べなかったり、嫉妬を覚えてしまったり、それによって自分のペースを崩してしまったり。そういうことが、私には良くある。

 往年の水泳の名選手、イアン・ソープがスランプに陥った際、彼のメンタルトレーナーは言ったらしい。とにかく自分のコースだけに集中しろ、隣のコースに人がいると思うな、と。つまり、自分ができることだけに集中しろ、ということだ。そのアドバイスでソープは復活を遂げたらしい。…私も人様にジェラシーがわいたり、それによって焦りが生じた時は、このエピソードを思い出すようにしている。…が、現実なかなか難しい。


 昨夜、記憶からほぼ消えていた、とある女子のことを、何故だか突然ふと思い出した。

 彼女と知り合ったのは大学に入ったばかりことで、約20年前のことだが、関わったのはほんの数ヶ月だけのことだし、大した思い出もない。が、記憶に残っているのは、当時、地獄の男子校生活から出所したての、ほぼ6年間「女子」という生物と触れ合って来なかった、真正バキバキ童貞だった私にアプローチしてきてくれたからだ。バキバキ童貞だったので、何をして良いかわからず、単にスルーするような形になってしまった訳だが(泣)あの時は、すまん…。そして何やってんだオレ!!…でも、そのおかげで、バキバキ童貞に仄かな自信が宿ったのも事実。ありがとうよ…。

 

 その後どうしてるんだろーなー、という単純な好奇心のもと、名前をググってみた。彼女の名前は、おそらく日本に二人といない名前だろうな、という独特な名前だ。SNS等が発達した昨今、わりと検索するとその人の大まかな現在のプロフィールとかはわかるものだ。特殊な名前の彼女ならば尚更特定しやすい。

 …姓と名ではヒットせず。次に、名前だけで検索してみるや…。出るわ、出るわ。なんと経済誌のインタビューが多数出てきた。まじかよ!!


 結婚したのであろう、苗字は変わっていたが、たくさん出てきた写真は明らかに20年の時間を重ねた彼女であり、バリッとスーツを着こなし、綺麗なオフィスでグッとカメラに目線を向ける彼女は、絵にかいたようなデキるキャリアウーマンの姿だ。現在は大手外資系会社で、様々な大規模プロジェクトを手掛けているという。百戦錬磨(たぶん)の経済誌のインタビュアーに対して、堂々とケーザイについて語っていた。そこには数枚の自信に満ちた彼女の写真が添えられていた。インタビューの内容は、まるで私の理解の及ばぬ話ばかりで、残念ながら最後まで読みきることは出来なかった。

 …片や20年前に取り残された様な、うだつの上がらぬオナ禁修行中のサラリーマンw、片やスーパーキャリアウーマン。不覚にも焦りとジェラシーでいっぱいになってしまった。

 

 自慢ではないが、私はそれなりに高学歴である。だが、20数年前にいっとき受験というゲームに熱中したというだけで、入学後は何もしなかった典型的ダメ学生であった。いわば、私に学んだ「歴」なんてものはなく、いわゆる私の「学歴」と呼ばれるものは、中身は何もないハリボテみたいなものである。それは重々分かっている。私は、同窓のインテリ達と同じ様なエリート街道は進めない。だが、自分なりの、自分らしい生き方をするのだ。そう思っていたはずだ。…それでも焦りやジェラシーを感じてしまったのは、自分が纏うハリボテの高学歴に、今だに自分自身が囚われてしまっているからなのだろう。

 

 さて、会社へと向かう電車の中である。会社でも色んな人間関係があり、マウントとったりとられたりと、なかなかに気持ちが悪く、しんどい世界である。しかし、それは今までもこれからも、他人と自分が存在する以上、変わらない。自分だけのコースを泳ぎ切ることだけに集中するしかないのだ。

 

 禁欲91日目。とりあえずは、あと9日。禁欲という私のコースをまずは泳ぎ切ろう!