10年前くらいのこと。海外駐在から帰国し、久々に昔良く行った、とある渋谷のバーに行った。そこはカウンターだけの、客が最大でも56人しか入らない小さな店である。店に入ってみると、見知らぬ中年女性がカウンターに立っていた。話を聞くと、ママが体調を崩したので、間借りして占いバーをやっている、と。とりあえず入ってしまったのでビールを頼み、興味はなかったが、じゃあ手相見てくださいよ、ということになった。生年月日を伝えて、両手を見せると一言。何かにリベンジしようとしていますね、と。


 ちょうどそのころ、私は格闘家として再挑戦を目論み、臥薪嘗胆の思いで再起を期してのトレーニングを再開していたところだった。生年月日以外は個人情報を一切伝えていない中、「リベンジ」というなかなか占いでは出てこなそうな尖ったワードまで使って、その時の状況をピッタリと当ててきたので、めちゃくちゃ驚いた。いつまでに勝負したほうがいいだの、いつ頃は勝負運が落ちるだのといったアドバイスを受けたが、それは忘れた。


 私は酔っぱらうと、ストリートミュージシャン、パフォーマー、占い師といった繁華街の路上で活動する人々に絡むのが好きだ。絡むと言っても別にダル絡みをするのではなく、そういった路上の奇人の話を聞いたり、会話するのが面白いのだ。だから、そんな活動の中、占い師と話した数も普通の人よりはかなり多いと思う。時には師匠を紹介する、といって怪しげな宗教に勧誘しようとして来たり、悪霊を祓ってやるから5万円すぐ寄越せと大胆に金銭を要求してくるような輩もいた。が、半ば冷かしで話しかけているだけなので、それらも含めて私は面白がっている。そして、そんなことをしている中、またピンポイントで私の素性や悩みを当ててきた占い師が現れた。


 ハンチング帽をかぶったそのおっさんは、電柱に手書きの看板を掛け、川沿いにいた。ウィース、手相みてくださいよ~!といつもの酔っ払いのノリで私が手相を見せると、おっさんは懐中電灯で私の両手をじっとのぞき込み、見つめた後に言ったのだった。「ずいぶん長い間、時間とお金を無駄につかっている女性がいるでしょう。絶対に別れることになりますよ」と。一気に酔いが吹っ飛んだ。…おっさんには手を見せた以外は何も伝えていないのだ。


 当時私には長い期間、遠距離で付き合っている彼女がいた。日々その彼女との付き合い方に思い悩み、今振り返ってみれば、当時頻繁に大酒を食らっていたのも、それ故だった。それでも、長い付き合いがあるので、ケジメはつけねばならない、と様々なことに目をつむり、近い将来の結婚を考えていたのだった。別れようなんて、考えもしていなかった。おっさんは特にアドバイスをくれることなく、うーん、この運命変えるのは難しいね、という言葉だけを残した。動揺しつつも、とりあえずおっさんが言ってきたことは忘れることにして、彼女とは関係を続けた。その2年後、詳細は割愛するが、色々とゴタゴタがあり、別れた。 


 世の中には占い師やら霊媒師やら、霊能力者やらと言った、胡散臭い肩書をもつ人たちがゴマンといる。私も上述の様に、酔っ払っている状態とは言え、人並み以上にそう言った連中と対話してきた。はっきり言ってその殆どが詐欺師か、自分が嘘を言っていることさえ分かっていない精神障害者だ。が、ごく稀にホンモノが居る、というのが上記の経験を通した私の実感だ。少し前に読んだ、田坂広志という工学博士の書いた本の中で、占いや、死後の世界といった非科学的な世界について、量子理論を背景に「ゼロポイントフィールド仮説」という仮説を立て、そう言ったものは実際にあり得るのではないか、と述べていた。私も大多数はニセモノと思うが、ホンモノも中にはいると思う。


 一昨日と昨日、妻への誕生日プレゼントとして弾丸沖縄ツアーをセットした。そのメインイベントが、妻が気になっていた沖縄の有名占い師に会いに行く、ということだった。

 聞かれたのは歳だけで、生年月日も聞かれず。そして、両手をチラッと見せるだけ。それだけで妻の職業をあて、人生をあて、今後のアドバイスをくれた。そして、私についても同様である。私の生い立ち、悩みもピンポイントで当ててきたのはビックリとした。私に至っては、帰り間際に席から立ち上がると(そこは喫茶店でもあるので、占い後も店内には居られる)、他の人の鑑定を中止してまで、もう一言いいですか、と追加でアドバイスをくれた。どんだけ私が心配なんすかw超概要で言うと、私は本来サラリーマンという運命ではなく、リーマンは向いていないらしいww 


 下手に威圧感や、ミステリアスさを演出するのではなく、あくまで淡々と、温かく、現実的に話をしてくれた。那覇の国際通りの喫茶店でやっている手相占い。店名はアメリカの西海岸の都市名。ここのおっちゃんはガチのホンモノ。いや〜びっくりした。夫婦そろってビビった。さすがに私がオナ禁修行者であることは当てられなかったがwww