伯母が死んだ。享年80歳。

 肝臓癌だった。癌になっても非常勤で直前まで働いていたという。

 

 今となっては悔やむところだが、私の記憶の限りでは最後に伯母に会ったのは24年前だ。9年前亡くなった祖母が元気だった頃までは、親戚の大々的な集まりが年一度はあり、毎年顔を合わせていた。兄弟の多い親父方の親戚の集まりともなると如何にも田舎モン風情の伯父伯母、従兄弟たちが集まってぐちゃぐちゃになるのだが、伯母はその中でも何となくスタイリッシュで都会的で、そして甥の私にもいつも明るく優しく接してくれた。仕事関係で手に入る文房具類なんかをよくくれた。子供ながらに大好きな伯母だった。その集まりもなくなり、私が転勤したこともあって、いつしか疎遠になった。


 わずかな交流が復活したのは数年前。結婚祝のお返しの御礼の電話をくれて、10数年ぶりに電話で話をした。口調も声も、当時と全く変わらなかった。大人になった私は敬語で話していたが、まるで小学生当時の私に話しかけるように、優しい口調だった。それがキッカケでLINEのアカウントもつながり、写真を送り合ったり、何往復かのやり取りをした。疎遠になった他の親戚の近況なんかも教えてくれた。子供が生まれた時も祝いの言葉をくれた。血縁のありがたみを感じた。こちらとしては何年もご無沙汰していて、正直なところ、ほぼ他人のような感覚になっていたから、血族としての何かを私に感じでくれているのかな、と嬉しくなった。そしてまた何年か交流は途絶えた。


 十日前、仕事中にLINEメッセージを受信。伯母からだ。伯母からLINEなんて珍しいな、なんだろう?と思って見てみると「ん」と一文字。あ、送信ミスね、と深く考えず、特に反応はしなかった。


 そして、その十日後の昨日、叔母の訃報。

 今思えば、すでにその頃、入院していたのかも知れない。考えてみれば、誤送信するにしても、私との通信画面に入らなければ、出来ない。もしかしたら病床にて、私とのメールのやりとり、写真のやり取りなんかを反芻したりして、頭の片隅にあった私のことを少しは思い出してくれていたのかな、なんてことを今更思った。血族として、何年も会っていない甥を少しは気に留めていてくれてたのかな、と。考えすぎかもしれんが。

 そして、昨夜、実家に泊まっていた妻とLINE通話で、お互いの顔を見ながら、そんな話していると…。突然、画面一面がピンク色になった。そんなことは初めてだ。どこを触っても画面いっぱいショッキングピンク一色で、元の画面に戻らない。…きっと、明るかった伯母が、フラッと自分の話をする私を見にきて仕掛けた、お茶目なイタズラだったんだろうな、と確信している。


 ありがとう。またいつか会おう!そう念じることしかもはや出来ない。合掌。