52歳だというそのおやっさんは、見た目は若く、軽快な話口もあって同世代くらいに見えた。
昨日、たまに行く居酒屋のカウンターで、隣に座った男性に話しかけられ、だいぶ長いこと飲んでしまった。私が帰ろうとすると、おごるからもう一杯飲みましょう、と引き止められ、結局私が会計してから、ビールと、日本酒の計2杯をご馳走になり、初対面だというのにずいぶん長いこと話し込んでしまった。
高校三年、高校一年、そして小学校5年生の3人の親父であること、キックボクシングをしている高校3年生の息子と初めて殴り合いの喧嘩をしたが、なんとか引き分けまで持って行った、なんてことを話してくれた。殴り合ったあとは顔がボコボコになって、職場で白い目で見られたけど、なんだか清々しい気持ちだったと言っていた。息子さんが20歳になるまでは喧嘩で負けたくないなんて言ってたので、私が通う柔術道場に誘ってみたら前向きな感じであった。…私にもあと10年もすればそんな日がするのかなぁ、と楽しみやら不安やらの気持ちになった。
次第に酔っ払ってくると、その人は、実はいま気分が落ちまくっていて、たまんなくなって久々に一人で飲みに来た、なんて本音らしきものを語ってくれた。だから、私と話せてだいぶ気分が晴れた、ありがとう、と。私も楽しかっただけだし、なんだかこそばゆい気持ちにもなったが、そう言ってもらえて嬉しかった。
一級建築士だというその男性は、自分の技術的経験や素養には自信があったが、なぜか人事総務畑に異動させられてしまったという。自分は飛ばされたのではないか、自分の技術が劣っているためにそのような人事異動があったのではないか、とここ数年ずっと葛藤を抱えていたという。建築現場の職人だったお父さんに「お前は頭で勝負しろ」と言われて、一級建築士という難関資格を取り、それを生かした仕事に誇りを抱いていたにも関わらず、全く技術とは関係のない事務系職種に就いたことに忸怩たる思いを抱えているのだ、と。
そんな中、詳しくは聞かなかったが、身近な人の葬儀が続いて、だいぶ気持ちが落ち込んでしまっていると、酒が進むにつれて、腹のなかにたまってものを吐き出すように語ってくれた。
何故だか、出張先の温泉でゲイに襲われかけたエピソードを話してくれたので、私がいつだったか新橋のゲイに有名なカプセルホテルに入り込んでしまってエライ目にあったことを披露し、最終的にはゲイエピソードをゲラゲラ笑い合いながら話すという、男同志のしょーもない感じの会話で一期一会の飲みを終えた。…なんだか若いころはそういう出会いで見知らぬ人と本音で語りあうってことがあったけど、久々にそういう風に他人の人間らしさに触れることができて、なんだか私もとても暖かい気持ちになることができた。こちらこそありがとうだな、と思った。
中年クライシス、という言葉がある。
最近思うのは、まさに私はその真っ只中だなあということだ。転職活動を通じて、今までの自分の人生を嫌が応にも棚卸せざるを得なくなっているが、今まで自分が積み上げてきたものの薄っぺらさと、何も形になるものを残してきていない社会人としてのキャリアを思うと、絶望的になってくる。この年になると、新しいことをしてみたい、という挑戦心さえも若者だけの特権なんだなぁという現実を残酷に突きつけられる。特に職業に関しては。客観的に考えりゃそりゃ当たり前なんだけどね。そう思うと、今まで人生において大小さまざまなことを好き放題挑戦してきたつもりである自分としては、なんだかこれからの自分の人生に絶望感すら感じてしまう。
昨日、へこんでたのは初めて会ったそのおやっさんだけじゃない。私も死ぬほど落ち込んでいたのだ。だから、ありがとうと言われたけど、私も救われていたし、こちらこそありがとうございました、と言った言葉は紛れもない本音だったのだ。
同世代の中年連中は、みんな普段は本音では語らないけど、程度や状況の違いさえあれ、それぞれに苦しんでいるんだろうな。時として、社内では敵の様に見えてしまうけど、みんな同じく苦しんでるのかも知れない。自分だけじゃねーんだな。さて、また地道に頑張りましょうか。
…実はオナ禁15日目!自分磨きの第一歩はオナ禁だ!…中年の決意としてはあまりにも低レベルだなww