ビートルズ東芝シングル(第40回「カム・トゥゲザー/サムシング」) | ザ・ビートルズ完全日本盤レコード・ガイド

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昨年の6月の「ジョンとヨーコのバラード/オールド・ブラウン・シュー」の紹介で止まっていましたが、7カ月ぶりにビートルズの東芝シングルガイドです。国内40枚目は「カム・トゥゲザー/サムシング」の強力両A面シングルです。国内発売は69年11月21日で、こちらも偶然にも前作から7カ月後の発売になります。

両A面と書きましたが、扱いは各国で異なっていたようです。UKでは両A面扱いでチャートを上がっていきましたが、アップル・レーベルの通常A面(全形アップル)が「サムシング」になっています。USでも「サムシング」が通常のA面レーベル側でした。すなわち、UK・USとも「サムシング」がA面扱いとなっていました。

USビルボード誌では、発売当時は両面の曲が別々にチャート・インしていました。初登場は「カム・トゥゲザー」のほうが高い順位でしたが3週目に「サムシング」に抜かれ、5週目には「サムシング」2位、「カム・トゥゲザー」3位と、ベスト3に2曲チャート・インしました。ちなみにこの週の1位はフィフス・ディメンションの「ウェディング・ベル・ブルース」です。6週目で「サムシング」が7位に後退したものの、7週目に2曲合わせて1位になりました。これはこの週からビルボードの集計方法が変更となり、1枚のシングルは1つのチャート・インへと変わったためのようです。CD「ビートルズ1」にも2曲とも収録されているように、一般的には2曲とも1位獲得曲として認められていますが、「カム・トゥゲザー」最高1位、「サムシング」最高3位と書かれているビルボードのチャート本もあります。「サムシング」はチャートを落ちかけていたので1位とは認めないという考えもあるのでしょうか。なお、国内の初回盤ではUK・USとは逆に、「カム・トゥゲザー」がA面で発売されました。オリコン・チャートでは最高6位と、これまで最高の「ヘイ・ジュード」の5位に続く高順位にランクされています。

前置きが長くなりましたが、「カム・トゥゲザー/サムシング」の国内盤バリエーションを紹介します。

 

■アップルAR-2400

<東芝音工¥400記号「H」>

<東芝音工¥500記号「H」>

<東芝EMI¥500(記号「H」・「I」)>

<AR盤東芝音工アップル・レーベル>

<AR盤東芝EMIアップル・レーベル>

ジャケット写真は69年4月9日にロンドン西部のイースト・トゥイッケナムで行われたフォト・セッションの1枚が使用されています。この時期はあまり人前には出ていませんので、このセッションの写真は数多く使用されています。後で紹介する77年発売の統一ジャケットの写真も、このセッションで撮影されたものです。

本シングルはカラー・ジャケットで製作されましたので、前作とガラッと変わって、ジャケットのバリエーションが少なくなっています。アップル・ジャケットの基本形の4枚しか存在しません。

1枚もののシート状ジャケットで、裏には英文歌詞が印刷されています。解説もなく、表にもキャッチ・コピーが書かれていなく、何となくさびしいジャケットです(笑)。

定価と会社名の改定に伴うジャケットの変更は、改定箇所を白い四角枠で塗りつぶし、その上から黒文字で新定価、新会社名を印刷しています。

ジャケットは最少の4種類しかありませんが、レーベルには他のビートルズのAR盤では見られないバリエーションが存在します。かなり以前に、拙ブログのコメントで教えていただいた情報ですが、会社名が東芝EMIのレーベルに文字のフォントが異なるレーベルが存在します。「STEREO」とレコード番号は、通常、太く幅の広い文字が使用されていますが、細い文字が印刷されているレーベルがあります。タイトルやアーティスト名も文字が細くなっています。この細文字のフォントは、以下の統一ジャケット・シングルのレーベル等で使用されている文字フォントと同一です。文字の細いレーベルのPMを調べると「6-YZ」(76年12月プレス)であり、統一ジャケット・シングル発売開始が77年5月ですので、このレーベルがAR盤の最終プレスになるのではないかと思われます。

<細文字フォント・レーベル>

他のアップル・レーベルのシングルを調べると、72年4月発売のリンゴの「バック・オフ・ブーガルー」より細文字に変更となっていることが確認できました。72年4月以降発売の新譜では文字フォントが変更となりましたが、ビートルズのアップル・シングルは69年から廃盤にならずに発売され続けられましたので、レーベル文字も変更されなかったのだと思います。しかしビートルズAR盤の中でこのシングルだけ文字フォントが変更とされたのは何故でしょうか?

 

■アップルEAR-20241

<東芝EMI¥600記号「I」>

< EAR盤アップル・レーベル>

本タイトルは77年発売の結成25周年統一ジャケットのNo.21として発売されました。本シリーズ3回目の77年6月5日の発売になりますので、ジャケット裏はLP「ザ・ビートルズ・スーパー・ライヴ!」のジャケット写真が掲載されているタイプ9Bになります。

ジャケット写真は統一ジャケットの4番目の写真が使用されており、上記の通り、この写真は初回盤ジャケットに使用された写真と同じ69年4月9日のフォト・セッションで撮影されました。

EAS盤はAR盤とはAB面が入れ替えられ、A面が「サムシング」に変更となっています。「サムシング」は70年代に入ってからも多くのアーティストによりカバーされ、70年代中期当時の曲の知名度が高かったために変更したのではないでしょうか。

 

■EMIオデオンEAS-17330

<東芝EMI記号「I」>

<EAS盤EMIオデオン・レーベル>

UKオリジナル・シングルであるため、83年3月発売のシングル・コレクションの1枚として、EMIオデオン・レーベルで国内発売されています。ジャケット写真は、69年8月22日にジョンの自宅のティッテンハーストで行われたビートルズ最後のフォト・セッション時に撮影された写真を使用しています。撮影はイーサン・ラッセルです。

今回もUKシングルと同様に、「サムシング」がA面扱いとなっています。

 

最後に、有名な話ですが、このシングルの初回盤のジャケットには、写真が裏焼きされたジャケットの存在が70年代から語り継がれています。もともとは76年に発売された香月利一氏著「ビートルズ事典」に裏焼き写真ジャケットが掲載されたのが発端で、その後も86年発売のピーター・インガム氏著「ザ・ビートルズ日本盤ディスコグラフィー」でも紹介され、日本中のコレクターが血眼で探したとか探さないとか…。20年位前のネットでも、友人がレコード店で見かけ、裏焼きのジャケットもあるんだ、と話していたという話がアップされたこともあります。結局のところ初めての紹介から45年も経過して、誰も存在を確認していないことから、インガム氏も書かれているように発売はされていないと思います。すなわち、発売前の見本刷りが制作された可能性はありますが、店頭に並んだことはないでしょう。香月氏の著書は東芝が全面的に協力していますので、ジャケット写真の提供も東芝が行い、社内にあった見本刷りの裏焼き写真を香月に送ったのではないかと想像しています。見本刷りではないかということは、ジャケットに会社名と価格が印刷されていないことからも想像できます。店頭で見たという証言は、ビートルズ・ファンの間では、ポールの「ハイ・ハイ・ハイ」の裏焼きジャケットを見た記憶が、「カム・トゥゲザー」のジャケットにすり替わっているのではないかという指摘もあります。

いずれにせよ発売されていないジャケットですので、バリエーションには含めません。と書きながらエイプリル・フールはまだ先ですが、まだ1月ですのでお年玉プレゼントです。裏焼きジャケットを発見しましたので紹介します。ちゃんと会社名と価格も印刷されています(笑)。こんなレコードが発見されたら大騒ぎですね。でも安心してください、フェイクですので(笑)。

■シングル「カム・トゥゲザー/サムシング」(AR-2400:69年11月21日発売、EAR-20241:77年6月5日発売)