「アビイ・ロード」ジャケット写真の検証(第5回~日本盤CDジャケット写真の変遷) | ザ・ビートルズ完全日本盤レコード・ガイド

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巷はクリスマス・ムードが続いていますが、関係なく「アビイ・ロード」ジャケット写真の検証を続けます(笑)。

「アビイ・ロード」発売50周年記念として、これまで日本盤を中心に、LPの表裏ジャケット写真の変遷について報告してきました。82年に世界に先駆けて(フライングで())、日本で本タイトルのCDが発売されて37年以上になります。今回は日本盤のCDジャケット写真について報告します。CDの場合はジャケット写真と言うよりブックレット写真と言うほうが良いかもしれません。裏はプラケース裏とブックレット裏の2種類あります。CDは写真が小さいため、確認が少々困難ですが頑張って解析します()

その前に前回の記事の補足です。新国旗帯LP及び新丸帯LPのジャケット写真は、80年代~90年代初頭に発売されていたUKLPのジャケット写真を原版にしていると書きましたが、その証拠にジャケット裏の右上に大胆な修正箇所があることに気づきました。通常は帯で隠れていますので気づきにくい箇所になります。なんと青い服の女性の肘が二つあるではないですか。UKLPのこの箇所にはLP番号やバーコードが印刷されていますので、それを隠すための苦肉の策として、女性の腕の部分を切り貼りしたようですが、もっと良い修正方法はなかったのかと思ってしまいます。ちょっと不気味な写真になっています(笑)。

<新国旗帯LP修正箇所>

 

CP35-301582/5/21発売)

<ブックレット表>

<プラケース裏>

82年の日本独自発売で、UKよりクレームが付き回収となったCDです。このCDのブックレット表の写真には、国旗帯LPまで見られたポールの足元の黒点やリンゴの股の間の黒点、その他の日本盤特有の汚れが確認できます。従って、プロ・ユースLPや「ザ・ビートルズ・コレクション」収納LPに使用された国内修正ジャケット写真は使用されずに、国旗帯LPのジャケット写真が使用されているようです。

<横断歩道の2ヶ所の黒点>

 

プラケース裏及びブックレット裏にはLPジャケット裏の写真が使用されていますが、曲目等の文字は新たに印刷されているため、LPで印刷されていた元の曲目等は黒っぽく消されています。影のように消されていますので、一見しただけでは文字が消されたとは分かりにくくなっています。黒く消された文字の場所を以下に示します。

<ブックレット裏の文字消去箇所(黄丸)>

 

CP32-533287/10/19発売)

<ブックレット表>

<プラケース裏>

 

87年に全世界初のCD「アビイ・ロード」が発売されました。このCDのジャケット写真には国内初回盤で確認できた横断歩道上の黒点等、国内盤LPで見られる汚れはありません。全世界統一CDですので、本国UKで修正された写真もしくは新国旗帯LPと同様に、当時使用されていたUKLPのジャケット写真を使用したのかもしれません。

プラケース裏及びブックレット裏には曲目とジャケット裏写真の一部(文字タイルの部分)が使用されているだけで、ジャケット裏全体の写真は掲載されていません。

なおブックレットの見開き1ページ目と最終ページにジャケット裏のブロックのアップの写真が掲載されていますが、ざっと見た限り、LPジャケット裏のブロック写真と同じ箇所はありませんでした。LPジャケットとは別の写真を持ってきたのかと思いましたが、よく見るとこのブロック写真は上下逆になっていることが分かりました。元の箇所のブロック位置を以下に示します。その後発売された黒帯仕様のCDは、CD番号は同一でブックレット写真も87CDと同じです。

<上下逆のブックレット表紙裏ブロック写真(左:表表紙裏、右:裏表紙裏)>

 

<ブックレット表紙裏ブロック写真の元の写真位置>

 

TOCP-5112298/3/11発売)

<ブックレット表>

<プラケース裏>

 

98年発売の再発盤では87年発売後、初めてCD番号が変更され、白帯が付けられています。ブックレット表はCD番号の記載がなく、初めてUKオリジナルLPジャケットと同じ、文字が一切入らないジャケットとなりました。なお、使用されている写真は87CDと同一で、プラケース裏及びブックレット裏のレイアウトも87CDと同一です。

なお、ブックレット表紙裏及び裏表紙裏にブロックの拡大写真も印刷されていますが、今回は写真の上下逆が修正されています。どこかから苦情が出たのでしょうか()

<上下が修正されたブックレット表紙裏ブロック写真(左:表表紙裏、右:裏表紙裏)>

 

TOCP-7101309/9/9発売)

<デジパック表>

<デジパック裏>

 

09年発売のリマスターCDは、前回のLP編でも報告しましたように、表ジャケットの写真が全面的にリニューアルされ、横断歩道の汚れ、リンゴ前方の道路上の白線、ポールの持つたばこの影が消去されています。

これまでのCDはプラケース入りでしたが、本リマスターCDはデジパック仕様で制作され、裏ジャケットにはトリミングのされていないLP裏ジャケット写真が使用されています。

デジパックはLPジャケットとは異なり、縦に比べて横が長くなっています。表は左側に12㎜程度の「THE BEATLES」ロゴとアップル・ロゴを印刷した空白部を設けていますので表写真はほぼ正方形と、LPと同じ縦横割合になっています。

一方、裏ジャケットには横の空白部を設けていないので、通常のLPジャケット裏写真よりも横の比率が長くなっています。横幅を合わせようとすると、上下をカットしなければなりません。しかしリマスターCDでは縦の長さをLPと合わせ、横を通常LPよりもトリミングを広くとった写真を使用しているのです。裏ジャケット写真の右側はLPと同様の位置から始まっていますので、左側のブロック塀が通常のLPでは見ることのできない部分まで見ることができます。当初はトリミングの広い写真が存在し、その写真が使用されていると思っていました。しかし、じっくり観察するとどうも違うようです。裏ジャケットの左部分が最も広く写っている写真を使用している当方所有のLPは、04年発売の新丸帯LPです。このLPに使用されているジャケット裏写真が存在する写真の左端の限界だと思われ、その限界より左のデジパック裏写真の部分は、別の場所から持ってきた写真であることが分かりました。特にブロックとブロックのつなぎ目の形状が分かり易く、別の箇所のつなぎ目が再使用されていることが確認できます。ブロックがない壁の部分も別の箇所が再利用されています。また、上部の木の葉も一部消され、壁の光の当たり具合も修正により異なっており、書き込みによる修正箇所もあるようです。以下に、確認できた再利用箇所を示します。白色の点線より左が写真は残っていない部分で、黄色の点線より左部分を修整しているようです。

<存在する写真の限界位置(白線)及び修正開始位置(黄線)(右:新丸帯LP)>

 

<確認できた修正箇所及びその写真の元の場所>

 

<消された木の葉(赤丸)と書き加えられた影(黄丸)(左:デジパック裏写真、右:LP裏写真)>

リマスターCDのデジパック写真を作成する際に、裏側をLPと同様のレイアウトにしようとしたものの、縦横比がLPとは異なることに気づき、裏ジャケットの最も左部分が最も多く写っている写真を持ってきて、それでも足りない部分は苦肉の策として別の箇所から持ってきた写真の使用や書き込みによって壁やブロック塀を作成したもの思われます。

CDに使用されたデジパック表裏の写真が標準の写真となったようで、その後11年、13年、14年、15年にCD番号を変更して発売されたデジパック仕様の写真は、すべてリマスター盤CDと同じ写真が使用されています。

 

UICY-7697814/12/17発売)

<紙ジャケット表>

<紙ジャケット裏>

 

1412月、初の紙ジャケット仕様CDが発売になりました。紙ジャケット仕様のジャケットはUKオリジナル盤を再現したようで、ジャケット表はリマスター盤で削除された横断歩道の汚れ、リンゴ前方の道路上の白線、ポールの持つたばこの影が復活しています。ジャケット裏もアップル・ロゴが左に寄っているレフト・アップルの写真を採用しています。なお、挿入されているブックレットの表写真には、リマスターCDに使用された修正写真を使用しています。

その後の169月発売のデジパック仕様CDはデジパック写真、1712月発売の紙ジャケ仕様CDは紙ジャケ写真を使用しており、今後発売されるCDは、デジパック、紙ジャケで使い分けて使用されるものと思われます。