来日50周年記念「ステージ上の予備ギター」 | ザ・ビートルズ完全日本盤レコード・ガイド

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THE BEATLES PERFECT JAPANESE RECORD GUIDE(BPJRG)を目指して、研究しています。

リンゴの10月の来日が決定しましたので近々リンゴ特集も組みたいと考えていますが、しばらくは来日50周年記念にお付き合いください()。前回、日本テレビが前座の楽器音を収録するためと思われるマイクについて検証しましたが、ステージ上に置かれたマイク以外のもの、すなわち楽器について検証します。
ビートルズが日本公演で演奏した楽器は、ジョンのギターがエピフォン・カジノ、ジョージのギターがエピフォン・カジノとリッケンバッカー360/12(以下、360/12)、ポールの7ベースがヘフナー、リンゴのドラムがラディックです。ジョン、ポール、ジョージの3人は、予備ギター(ベースも含む)も日本に持ち込んでおり、武道館の控室でこれらの予備の楽器を弾いている写真も撮影されています。予備として持参したのは、ジョンがギブソンJ-160E(以下、J-160E)、ジョージがギブソンSGスタンダード(以下、SG)、ポールがリッケンバッカー4001S(以下、4001S)の各メンバー1本ずつ、計3本になります。
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予備ギターというくらいですから、実際にステージ上で演奏されたギターが、何らかの事情で使用できないときは、すぐさま予備ギターに変えて演奏を続けなければなりません。そのために、予備ギターはビートルズ演奏中も、ステージ上に置かれていました。今回は、その予備ギターの設置状況について、公演日別に見ていきます。
 
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上記のように、各メンバーが1本ずつ、計3本の予備ギターが、メイン・ステージ上に置かれているのが写真から確認できます。なお、ジョージは「恋をするなら」で360/12に持ち替えて演奏しますので、ステージ上には演奏中のギター以外に常時4本のギターが置かれていたことになります。初日の公演の写真は多く撮影されているのですが、ステージの上方から撮影された写真は少ないのではっきりとは確認できませんが、予備ギターの3本はステージ上に置かれているようです。
設置位置ですが、J-160Eはステージ向かって右端のスピーカー(ポールのベース用スピーカーと思われる)の裏に立て掛けてあり、ベースの4001Sは逆に左端のポールのベース・アンプ・スピーカーの裏に立て掛けられています。ジョージの予備ギターは、全5公演を通して、リンゴのドラムが設置されているドラム台の手前のジョージのアンプの裏側付近に無造作に横にして置かれています。SGははっきりとは見えませんが、赤いボディのギターが、ネックをアンプの方に向けて置かれているようですので、SG360/12が並べられて置かれていたようです。なお、360/12は「恋をするなら」で使用していますので、その曲の前後で位置が変わりますが、多くの写真で見られる位置で示すこととします。
また、初日と翌71日昼の部の公演は日本テレビが放送のため収録しましたので、楽器音収録のため、左側アンプ・スピーカー(ポール・ベース用とジョージ・ギター用)の間、右側アンプ・スピーカー(ジョン・ギター用とポール・ベース用?)の間の2ヶ所と、リンゴのドラム台の前方右側に3本の集音マイクが設置されています。
 
71日昼の部
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2回目の公演では、J-190E4001Sの設置位置は初日と微妙に変わり、J-190Eがリンゴのドラム台の右前方に横にして置かれ、4001Sはドラム・ステージ左側面に立て掛けるように置かれています。J-190Eがドラム台上に置かれていたのは、この回の公演のみになります。GS360/12は、初日の公演とほぼ同じ位置であるドラム台左前方に置かれていますが向きが異なり、この公演では、これらの2本のギターはTの字状に置かれているように見えます。
この日もテレビ収録用マイクが3本置かれていますが、ギター用のマイクは初日と比べ、アンプのより近くに設置され、マイクの位置も高くセットされています。ドラム台上のマイクの位置も、初日に前方右にあったのが前方左に変わり、マイクの種類も変更され、高さも高い位置にセットされています。初日の音を聴いた日本テレビのスタッフが、より良い音を収録しようと試行錯誤をしていてことがうかがえます。
 
71日夜の部
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J-190Eが、今回以降は初日と同様にメイン・ステージ上に置かれるようになりました。しかし、スピーカーの後ではなく、ドラム・ステージの右側に立て掛けられています。4001Sが写った写真は見当たりませんでしたので詳細な位置は不明です。設置位置が不明な楽器については、図では白黒で表示しています。なお、ジョージの2本のギターは初日と同様に並べられて置かれていましたが、向きが初日とは異なり反対向きに置かれていました。
 
72日昼の部
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72日の公演は写真が比較的少ないので、設置位置の特定が困難な楽器がいくつかあります。この公演では、J-190Eの写真が見当たりませんでしたので不明ですが、4001S71日昼の部と同様に、ドラム・ステージ左側面に立て掛けられていることが分かります。ジョージの2本のギターは、今回は初日と同様に、同じ向きに2本並べられて設置されています。
 
72日夜の部
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最終公演である72日夜の部でもJ-190Eの設置場所は確認できませんでしたが、4001Sとジョージの2本のギターは、同日昼の部とほぼ同じ位置に置かれていたようです。最終日になると写真が少なく、さらに全景写真や2階席からの写真がほとんど見当たらないため、予備ギターの詳細な設置場所を確認するのは困難です。また、ステージ向かって左側から撮影した写真が多く、J-190Eが写った写真は1枚も確認できませんでした。最終公演のジョージの2本のギターの設置場所も明確には分かりませんでしたが、ネックが見える写真があり、同日昼の部の設置場所とほぼ同じ位置であったと推測しています。
 
ここで、先日発売された「ミュージック・ライフ ザ・ビートルズ日本公演1966」に、星加ルミ子氏の非常に興味深いインタビュー記事が掲載されていました。最終公演でジョージのギターの弦が切れて、マル・エヴァンスが階段を上がり予備のギターを手渡したということです。但し、この証言には疑問点があります。まず、弦が切れ、ギターを変更するとしたら、ジョージ自らドラム台上に置いてある予備ギターSGに変えれば良いのではないかと思うからです。最終日のみ、SGはドラム台に置かれていなかったのでしょうか? または、マルがわざわざステージの下から裏の階段を駆け上り、ドラム台にある予備ギターを取ってジョージに手渡すということをしたのでしょうか? 最終公演が終わり、ジョージが楽器を手放して観客に手を振り、まさに退場しようとしている写真が残されています。この写真には、ジョージのアンプに立て掛けたエピフォン・カジノが写っていますので、最後の「アイム・ダウン」ではこのギターを弾いていた可能性が高いと考えられます。途中でギターを交換し、その間マルが弦を張り直して、再度、エピフォンに交換したということは考えられなくはありませんが…。これまで、日本公演でジョージが予備のギターを弾いたとか、ギターを交換したという証言は聞いたことはありません。1万人が見たのですから他に証言があっても良いと思うのですが…、実際はどうだったのでしょうか?
72日夜の部)
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さらに余談ですが、上記の通り、最終日、ジョージはギターをステージにおいて退場しています。通常、メンバーは楽器を持ったまま退場するケースが多いですが、ジョージは最後に観客に向かって最大限に手を振るために置いていったのでしょうか? ちなみに、初日はポールがベースをアンプ・スピーカーに立て掛けて退場しています。71日昼の部ではベースを持ったまま退場しています。初日にベースを置いて退場したのは初日で緊張していたのと、さらにマイクが動くというトラブルもあり、ポールも動揺していて通常とは異なる行動を取ったためでしょうか?
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71日昼の部)
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