香港が英国から中国に返還され、人民解放軍が静かに香港に入城して来た日も香港にいた。その日の夜はお祝いの花火が派手に打ち上がり、祝福ムードに包まれていたが、何とも嘘臭い空気が香港中を包んでいた。
香港政府は、返還前は英国の、返還後は中国の傀儡で、真の民主主義など香港にはなかったし、香港人もそれに甘んじるというか、戦っても意味はないと思っていたと思う。基本的に政治には無関心という印象が強かった。
私の知る香港の人々は皆、極めて温厚で、大人しくて、争いを好まなかった。
そんな香港の人々が、あんな大規模なデモを起こし、警察に警棒で殴られても、催涙弾を打ち込まれても、怯まず前に出て権力と戦った。私は香港の人々を随分と誤解していたようだ。
そして昨日、条例改正案は撤回され、5つの要求のうち、一番大きな要求を勝ち取った。
この勝利に敬意を込めて、香港の人々に心からの祝福を申し上げたい。
ただ、これで黙っている中国ではない。二の矢三の矢が必ず放たれるだろう。
今回、「民主化の女神」と呼ばれている周庭氏のTVインタビューを見た。
若干22歳のうら若き女性だ。日本のアニメを見て独学で学んだという流暢な日本語で質問に答えていた。身の危険を感じていると言いながら、それも覚悟の上と胆が座っている。自分が22歳だった頃とは雲泥の差である。
独特な価値観と文化があって、いい意味でも悪い意味でも、なんでもありだったあの自由な香港での生活は実に楽しかった。
出来ることなら、真の民主主義の元で、その香港らしさを継続して欲しいものである。