雑談 【Fly Me to the Moon】

 

 

 

 「Fly Me to the Moon」の原曲は「In Other Words」というジャズ曲である。

 原曲は3/4拍子で現在知られているものとは雰囲気がだいぶ違う。

 

 よく知られている4/4拍子の曲は1964年にフランク・シナトラが歌ったものである。

 当時米国では「アポロ計画」で月への関心が集まっていたので、文字通り「私を月に連れて行って」だったのである。

 

 日本でこの曲が有名になったのは『新世紀エヴァンゲリオン』のエンディングテーマ(唄Claire Littley)に採用されてからであろう。

 

 本来、ロマンチックな楽曲なのに、月影のなか綾波レイが海底に沈んでいく沈鬱な映像は、見る者の魂を揺さぶった。

 このアニメの初期の世界観そのままで、なんとも救いようのないエンディングであった。

 思えば、この頃に比べると庵野秀明監督も随分穏やかになったものだ。

 私は彼を素晴らしい芸術家であると敬愛している。

 芸術家の精神は常に「生死と隣り合わせ」なのである。

 

 さて、この曲の冒頭は「Am → Dm7 → G7 → Cmaj7(Ⅵm → Ⅱm7 → Ⅴ7 → Ⅰmaj7)」というコード進行である。

 つまり「マイナー」で始まり「メジャー」で終わる、少し複雑な心境を表しているのである。

 

 例えばこの進行の曲としては「私はピアノ」(サザンオールスターズ)がある。

 

 Am        Dm7

 人もうらやむよな仲が 

 G7           Cmaj7

 いつも自慢の二人だった

 

 この曲は原由子氏の朴訥でストレートな歌い方が実に良い。

 なまじ歌唱テクニックがあると余計なビブラートを付けてしまうものだ。

 

 それにしても、この詩は複雑である。

 「涙が出ないのは何故、教えてほしいだけさ。」

 「つらいけど涙みせない。」

 「ひとしきり泣いたら 馬鹿げたことねと思う。」

 

 最初は「あまりのショックに涙も出ない。」次に「どんなに辛くても泣くもんかと思い。」誰もいなくなってから「ひとしきり泣く。」のである。そしてすべてを「馬鹿げたことね。」と思うのである。

 

 「つらい思い」から乗り越えようとする、なんともリアルな女性像が思い浮かぶ。

 ただ悲しいだけの曲ではない、いわば再生の歌でもあるのだ。

 

 たとえば、これが竹内まりやの「駅」になると…

 

 Am        Dm7

 見覚えのある 

 Dm7/G   Cmaj7

 レインコート

 

 「Gコード」が「Dm7/G」(Dm7にベース音Gをのせる)に変わるだけで随分印象が変わる。

 全体的に重苦しいトーンになっている。

 

 さらに、これが「セカンドラブ」(来生たかお)では…

 

 Am        D7

 恋も二度目なら 

 Gmaj7   Em

 少しは上手に

 

 「マイナー」で始まり「メジャー」となって「マイナー」で終わる。

 EmはCの代理コードであるが、巡り会えた嬉しさと、将来の不安で揺れ動く少女の気持ちが表現されている。