大僧正天海 (216)
「評定の輩卯牌の半に出座し、申牌にまかんづべし。其席へ有司のほか一切会すべからず。音物うくる事かたく停禁す。訴人は老幼病者のほか、介添のものとどむべし。訴人たとへ御家人たりといふ共、刀、脇指帯すべからず。訴人の親戚知音たりとも、偏頗の沙汰あるべからず。遠地よりの訴人在府の長短をはかり、其次第に聞べし。されどすてをきがたき事あるか、または急遽の事はこの限りにあらず。」(「大猷院殿御實紀」)
「評定の席には、朝の卯刻(6時頃)中頃に出席し、夕方の申刻(4時頃)に退出しなさい。その席には、担当の役人以外は一切立ち会わせてはならない。贈り物や賄賂を受け取ることは、固く禁止する。
訴人が、老人、若輩、病人の場合を除いて、付き添いの者を付けてはならない。訴人がたとえ幕臣であっても、刀や脇差を帯びてはならない。
訴人が自分の親戚や知人であったとしても、不公平な裁決をしてはならない。遠方から来た訴人については、江戸に滞在している期間の長さを考慮して順番に審理すること、ただし、放っておけない重大な事柄や、緊急の事態についてはこの限りではない。」
評定所の運営には、きめ細かな規定があり、賄賂や不正を固く禁じている。多くは過去の判例に基づく判例主義で、役人が実質審理を担当していたのである。
「府内訴人は当日簿面の順たるべし。されどすてをきがたき事あるか、または急遽の事はこの限にあらず。詰問はその筋の有司つとむべし。会議の輩もはばかりなく所思を申のぶべし。裁断の後あづかりの有司、その事を注記すべし。」(「同上」)
「江戸府内の訴人については、当日の名簿の順番通りに審理すること。ただし、そのままにしておけない重大な事柄や、緊急を要する事態については、この順番に限らない。詰問は、担当部署の役人が務めること。会議に加わる者たちも、遠慮することなく自分の考えを述べること。判決が下った後は、担当の役人がその内容をしっかりと記録すること。」
「松平伊豆守信綱、阿部豊後守忠秋、堀田加賀守正盛その日の公事をしるさしむべし。訴訟当日に決せざるは、翌日裁断すべし。猶決せざるは老臣にはかり合、其上聞えあぐべし。有司の宅にて裁断せしも、評定所へ出すべき訴訟は、證人、證據をそろへ出し、滞らざるやうにすべし。過怠、繋獄の者、有司商議して日数を定め、定期はてなば出獄すべし。」(「同上」)
「松平信綱、阿部忠秋、堀田正盛は、その日の裁判の内容を詳しく記録させ、訴訟が当日に解決しない場合は、翌日に裁断すること。それでもなお決着がつかない時は、宿老たちに相談し、その上で将軍に上奏すること。
役人の私宅で裁断した事案であっても、評定所へ出すべき訴訟については、証人や証拠を揃えて提出し、滞りがないようにすること。過料や繋獄の刑に処された者については、担当役人が協議して日数を定め、その期限が来れば直ちに出獄させること。」
「預けもの長くすてをかず、速に査検し事を決すべし。裏判幷に召状を受けながら遅参せし者は、其地の遠近を考定し、其日数により罪の軽重にしたがひ、あるいは繋獄あるは過料たるべし。」(「同上」)
「預かっている案件を長く放置してはならない。速やかに調査・検証を行い、結審させること。裏判や召状を受け取りながら、指定日に遅れた者については、その居住地の遠近を考慮した上で、遅れた日数に応じて罪を決めること。状況により、投獄または罰金に処すべきである。」
松平信綱
『国民の歴史 : カラー版』第14,文英堂,1969.
国立国会図書館デジタルコレクション
https://dl.ndl.go.jp/pid/3005645 (参照 2026-03-12)
