【ウォンキュ】単純明快で摩訶不思議 2 | 徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説

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とはいいつつも83(レラトゥギ)・ヘウン、TVXQミンホも時々やらかしますが、どうぞご贔屓に!

帰宅してすぐに冷凍庫を開けると取り出した缶ビールのプルトップを引き上げて中身を煽った。

社内には全く同情してくれるような同僚はおらず、同じシナリオライターのキム・ジョンウンに至っては人の顔を見るなり指差して爆笑する始末だ。

勿論傍らに置かれていたコーヒーカップに大量の砂糖を入れるくらいの報復はしておいたが。

新しく追加された連絡先を睨みつけたところで誰もダメージを受けないだろうが、ついつい眉間に皺が寄っても仕方ないと思うのだ。

 

新しい缶を手にベランダの掃き出し窓を開けて外に出ると、夕陽で紅く染まった街を見下ろしてビールを口にする。

少し高台にあるアパートをキュヒョンは気に入っている。

仕事(とゲーム)の聖域を作りたかったため部屋は2つと拘って探した2DK。

駅から徒歩18分の高台。

その立地のせいか駅近ワンルームとほぼ賃料は変わらない。

多少距離はあるが商店街を通れば暗い道を歩くことはほぼ無いし、なによりその商店街はキュヒョンにとっての台所だった。

自炊もしなくはないが安くて美味しい惣菜が売っているのだからありがたい事このうえない。

今日も帰りに肉屋で買ったメンチカツはお気に入りの一つだった。

好きな景色とビールとメンチカツ。

いつもならこのために仕事してるなぁ、なんて幸せを味わえる状況なのに…。

ジョンウンの爆笑する声を思い出して、眉間に皺が寄る。

いや、自分だって立場が逆なら彼と同じように笑うだろうけど。

残念ながらここは当人なのだ。

 

「チャンミンは忙しそうだしなぁ」

 

帰ったら愚痴ってやろうと思っていた親友はどうやら今日も多忙のようで、同じようにゲーム好きな彼は時間があればログインするゲームにもここのところ少しだけしか入っていない。

それならメールででも連絡をすればいいのだろうがこちらの愚痴のためだけに連絡をするのも気がひけるくらいに忙がしいのだ。

まぁ仕方がないか。

我が親友殿は超が付く程売れっ子のアイドルなのだから。

藍色が侵食していく空を眺めて溜め息をつくと、ポケットに入っているスマートフォンが震える。

ディスプレイには今日新しく増えた「くまたろう」が表示された。

アイコンをタップすると【メールだとやり取りが長くなりそうなので、会社で時間を作って打ち合わせしましょう】という内容が書かれている。

真面目なのか不真面目なのか。

キュヒョンはクスリと笑う。

いい人なんだろう。

面白がっている節はあれどこんな無茶振りにも付き合ってくれるのだし。

とはいえキュヒョンも面白いことは嫌いではない。

これもゲームだと割りきればそれなりに楽しめる気はしている。

その前に当事者になってしまった嘆きを吐き出したいだけなのだ。

 

「とりあえず吐き出してからじゃないと無理ー」

 

明日は自宅で別のシナリオを書くという口実で出社しないと決めた。

勿論くまたろうにもその旨を伝える。

【そちらの都合に合わせる】

と返ってきて、やっぱりいい人だと確信した。

よし、ビール飲んで美味しいもの食べてさっさと寝よう。

チャンミンが明日には時間がありますように。

そう願いながらキュヒョンは残ったビールを飲み干した。

 

 

翌日、シナリオを進めて気分転換にとゲームに勤しんでいるとチャンミンの使っている名前が表示された。

チャット機能はあるが、チャンミンもキュヒョンもほぼ使用していない。

まあ、彼は自分の立場があるから身バレは避けたいというのが理由で、キュヒョンはチャンミンと話していれば素が出てしまう可能性も加味してだ。

時間はまだ夕刻。

スマホを手に取る。

4回目のコール音が途中で切れた。

 

「おかえりー」

『ゲームのログインで状況確認するなよ』
「だって俺、今日は1日ここの住人だし」
『暇だな』
「暇じゃねぇわ。これもお仕事です。それに現実逃避したい気分なんだよ」

『…えーと、それは話を聞けと?』

 

それだけで何かを察してくれたらしいこの親友の聡さにこちらも遠慮する気持ちは薄くなる。

チャンミンのこういうところは本当に好ましい。


「じゃなきゃわざわざ電話しない」

『来るか?』

 

明日は仕事がゆっくりなのだろう。

そう提案してくれた。


「行く。酒とチキンは持っていく」
 

やっぱり電話より直接会って話をする方が微妙なニュアンスも伝わりやすい。

通話を切ると、キュヒョンはカーディガンを羽織った。

今からなら商店街の店もまだ開いているだろう。

あの店のチキンならきっとチャンミンも気に入るはずだ。

普段履いているサンダルの隣のスニーカーに足を突っ込む。

彼のマンションに行くのになんとなくサンダルは気が引けた。

そういう事を気にしないタイプに見えると言われるけれどそこは一応庶民感覚は健在なのだ。

施錠して鍵をポケットに突っ込むとキュヒョンはアパートの階段をリズミカルに駆け降りた。