相変わらず静かにパニックに陥ったままのキュヒョンの横では椅子から降りて恭しく頭を下げるチャンミン。
シウォンは手でそれを制すると、チャンミンはその横に立っている男性に会釈する。
綺麗に微笑んだその人はチャンミンに軽く会釈を返した。
シウォンは手でそれを制すると、チャンミンはその横に立っている男性に会釈する。
綺麗に微笑んだその人はチャンミンに軽く会釈を返した。
「いいよ。座って?」
そうは言われても王子の言葉に従っていいものか思案する様子を見せたチャンミンに、シウォンに同行していた男が頷いて自分が先に席に着く。
その様子にチャンミンもキュヒョンも目を丸くした。
その様子にチャンミンもキュヒョンも目を丸くした。
「おぉ、ユノ。今日も訓練は厳しかったか?」
「…そうでも。メニュー増やそうとしたら部下に泣きつかれた…」
「お前…相変わらずだね」
「…そうでも。メニュー増やそうとしたら部下に泣きつかれた…」
「お前…相変わらずだね」
ドンヘが呆れたように笑って前にコースターを置いた。
「ここ、いい?」
キュヒョンの横の椅子を指して笑うシウォンはどこをどうとっても王子様。
「ど…どうぞ…」
椅子に腰を掛けるとカウンターに頬杖をついてこちらをじっと見ていたシウォンが顔を寄せてきた。
「もしかして…」
「は、い?」
「キュヒョン王子?」
「はいぃぃぃ」
「はは。本当にそっくりだ」
「は、い?」
「キュヒョン王子?」
「はいぃぃぃ」
「はは。本当にそっくりだ」
ああ、そうか。
あくまで城内にいるのは「レイナ」なのだ。
「レイナ」が「キュヒョン」であることがバレたわけではなく「キュヒョン」が「キュヒョン」であることがバレただけなのか。
あくまで城内にいるのは「レイナ」なのだ。
「レイナ」が「キュヒョン」であることがバレたわけではなく「キュヒョン」が「キュヒョン」であることがバレただけなのか。
「なに?姫が心配でお忍びで来たの?」
「えっと…心配というか。どんなところなんだろうと」
「そう。…あのさ」
「な、なんでしょう」
「俺がすぐに王家の人間だってわかったよね?」
「えっと…心配というか。どんなところなんだろうと」
「そう。…あのさ」
「な、なんでしょう」
「俺がすぐに王家の人間だってわかったよね?」
あぁぁぁぁぁ。
いましがたの態度を見れば少なくとも何者か知らないとしらを切れる状態ではない事は確実だ。
いましがたの態度を見れば少なくとも何者か知らないとしらを切れる状態ではない事は確実だ。
「えっと。色々調べて…」
「リサーチ済ってこと?悪い話は耳にしてないよね?」
「リサーチ済ってこと?悪い話は耳にしてないよね?」
楽しそうに笑ってヒョクチェにオーダーを通す。
「…あの」
「何?」
「一国の王子が普通にこういう場所に出入りして、しかも国民が普通にそれを受け入れてるこの状況って…」
「あぁ、やっぱり珍しいよね」
「何?」
「一国の王子が普通にこういう場所に出入りして、しかも国民が普通にそれを受け入れてるこの状況って…」
「あぁ、やっぱり珍しいよね」
前国王が若かりし時代。
戦争があった。
それは多くの国を巻き込んだものだったので誰もが知っている史実だ。
キュヒョンの国ももちろんその一つだ。
二つの国の争いは結局お互いに破滅する。
陥落せずに残った国は自国を立て直すのに精いっぱいで戦どころではなくなった。
それでも小さな諍いは未だに起きる。
自衛の衛兵部隊をどこの国も置いているのはそのためだ。
自国を立て直す。
その意志を誰よりも強く見せたのは現国王のヒチョルだという。
王家、庶民関係なく教育や社会制度を変えた。
王家としての立場が弱くなると反対する者ももちろんいたわけだが。
戦争があった。
それは多くの国を巻き込んだものだったので誰もが知っている史実だ。
キュヒョンの国ももちろんその一つだ。
二つの国の争いは結局お互いに破滅する。
陥落せずに残った国は自国を立て直すのに精いっぱいで戦どころではなくなった。
それでも小さな諍いは未だに起きる。
自衛の衛兵部隊をどこの国も置いているのはそのためだ。
自国を立て直す。
その意志を誰よりも強く見せたのは現国王のヒチョルだという。
王家、庶民関係なく教育や社会制度を変えた。
王家としての立場が弱くなると反対する者ももちろんいたわけだが。
「その程度の引率者ならそれまでだ。私たちが今まで贅沢な暮らしが出来てきたのも全て民から信頼され愛されてきた結果だろう?それを返せずして何が王か」
その一言で黙らせた。
その結果は民衆が王家を落ちぶらせるどころか更に愛国精神を持ち、今まで以上の信頼関係で成り立っている。
意外だ。
公務室でプラモデルを作っていた王と同一人物とは思えない。
その結果は民衆が王家を落ちぶらせるどころか更に愛国精神を持ち、今まで以上の信頼関係で成り立っている。
意外だ。
公務室でプラモデルを作っていた王と同一人物とは思えない。
「まぁ、父は自由な人だけど信念はしっかりと持っている人だから…。そう言う理由でね、俺はここの二人と護衛についているユノと学校に一緒に通ってた同級生ってことになるね」
「へぇ…羨ましいです」
「でも君にもいるじゃないか」
「へぇ…羨ましいです」
「でも君にもいるじゃないか」
ねぇ、とチャンミンに向かって呼びかけると恐縮したように頭を下げる。
「そうですね」
ふっとキュヒョンが笑った。
「でも彼、姫の護衛についてなかった?」
「…えーと、元々は僕の護衛なんです」
「そうなの?」
「まぁ、色々ありまして…」
「ふぅん」
「…えーと、元々は僕の護衛なんです」
「そうなの?」
「まぁ、色々ありまして…」
「ふぅん」
その色々とやらに突っ込まれると困るが、シウォンは面白そうに相槌を打っただけで聞いては来なかった。
「で、彼がここにいるってことは姫は君がお忍びで来てるのを知ってるってこと?護衛もつけずに?」
色々を突っ込まれなかった分、違う方向で矛盾がでてくる。
だから嘘なんてついちゃいけないんだよ。
キュヒョンが唸っているとその横から溜息が聞こえた。
だから嘘なんてついちゃいけないんだよ。
キュヒョンが唸っているとその横から溜息が聞こえた。
「シウォナ…自分だって人の事言えないだろ」
「ん?」
「護衛着けずにフラフラ出歩くから、こっちはどれだけ肝を冷やさなきゃならないか…」
「ん?」
「護衛着けずにフラフラ出歩くから、こっちはどれだけ肝を冷やさなきゃならないか…」
国内に簡単に敵がいるわけではないにしろ、どんな事に巻き込まれるかわかったもんじゃないんだから気をつけろと何やら文句を並べ始めたユノに謝りながらシウォンはヒョクチェを捕まえた。
「おい。ユノにアルコール飲ませたのか?」
「ん?軽くね。大丈夫もう少しだけ愚痴聞いたらあとはただ笑ってるだけだから」
「ん?軽くね。大丈夫もう少しだけ愚痴聞いたらあとはただ笑ってるだけだから」
ヒラヒラと手を振ってヒョクチェが笑った。
そして、その言葉に嘘もなかった。
結局そのままシウォンとキュヒョンは同じ王家の一員としての気苦労や持論で盛り上がり。
ユノとチャンミンはお互いの武術論で熱くなっていた。
楽しい。
キュヒョンは単純にそう思う。
どうせならシウォンともっと違う形で会っていたら良い友になれただろうに。
そして、その言葉に嘘もなかった。
結局そのままシウォンとキュヒョンは同じ王家の一員としての気苦労や持論で盛り上がり。
ユノとチャンミンはお互いの武術論で熱くなっていた。
楽しい。
キュヒョンは単純にそう思う。
どうせならシウォンともっと違う形で会っていたら良い友になれただろうに。
「手合わせするか?」
「お相手願います」
「お相手願います」
そのセリフが隣から聞こえると同時にドンヘが楽しそうに「外でやってくれよ」と一言。
何事かと隣を見遣るとユノとチャンミンが立ち上がって外に出た。
何事かと隣を見遣るとユノとチャンミンが立ち上がって外に出た。
「え…なに?」
「あー…またか」
「あー…またか」
シウォンが片手で顔を覆うようにすると大きく溜息を吐いた。
「あ。大丈夫。武術の話になるとすぐこうなるんだ」
「どうなってるんですか」
「勝負したくなるんだよ。相手が強そうなら猶更ね」
「どうなってるんですか」
「勝負したくなるんだよ。相手が強そうなら猶更ね」
二人を慌てて追って外に出ると同じように見物人と化した店の客や、周りの家や店から人々が顔をのぞかせる。
「何?」
「勝負だって」
「ユノが?」
「そうそう」
「勝負だって」
「ユノが?」
「そうそう」
剣呑な雰囲気は全くなく、二人は今から軽く遊ぶかのような気軽さだし、それを囲っている見物人も楽しそうにその様を見ているだけだ。
固まっている女性陣からは黄色い声援さえ飛んでいる。
キュヒョンの横に立っているドンヘがのんびりと言う。
固まっている女性陣からは黄色い声援さえ飛んでいる。
キュヒョンの横に立っているドンヘがのんびりと言う。
「お客さん初めてだからビックリだよね」
「ええ」
「まぁ、見てて。ここに居るのはほとんどユノのファンみたいなものだから」
「はぁ…」
「ええ」
「まぁ、見てて。ここに居るのはほとんどユノのファンみたいなものだから」
「はぁ…」
10メートル程離れて向かい合った二人がお互いの剣を抜くと顏の前に掲げて、先端を地面に向ける動作を三回繰り返した。
ドンヘがコインを投げる。
それが地面に落ちたと同時にチャンミンが地面を蹴った。
ドンヘがコインを投げる。
それが地面に落ちたと同時にチャンミンが地面を蹴った。
「早い」
ヒョクチェが感心したようにつぶやく。
薄い金属がぶつかる高い音。
チャンミンが振るった剣を止めたユノがニッと笑うと、それを自分の剣で滑り落とすようにして体を捻り後ろに引いた。
スッと掌を上にして腕を伸ばすと指を折る。
今度はチャンミンが不敵に笑ってまた踏み出す。
チャンミンが振るった剣を止めたユノがニッと笑うと、それを自分の剣で滑り落とすようにして体を捻り後ろに引いた。
スッと掌を上にして腕を伸ばすと指を折る。
今度はチャンミンが不敵に笑ってまた踏み出す。
「強いね。彼」
「ええ。うちの国では屈指の戦士ですよ」
「でも、うちのユノも強いよ?」
「みればわかります」
「ええ。うちの国では屈指の戦士ですよ」
「でも、うちのユノも強いよ?」
「みればわかります」
無駄な動きが一切ない。
ただのお遊び程度でこれなら実際戦場に出たらとんでもないなと思った。
全身に緊張という鎧を付けたのならきっと無敵だ。
けれどそれはチャンミンも同じだ。
持て余しそうな長い手足を無駄なく使えるのはあの細い体からは想像しがたい筋力。
時にはバネのように強靭で、時には鞭のようなしなやかさで繰り出される剣は一切の迷いがない。
賑やかだった観客が次第に固唾を飲んでその勝負の行方を見守った。
チャンミンが動くと風が起こる。
ユノがその風に乗って舞うように防御し、攻撃する。
その姿にキュヒョンは前に聞いた噂話を思い出した。
隣国に「戦場の紅い華」と呼ばれる人が居るというのを。
きっと彼の事だ。
この国の衛兵は戦の時には赤い甲冑を身に着ける。
まるで踊る様に戦うその人は誰よりも強く、仲間を守る存在。
ただの噂話、御伽噺的なものだと思っていたけれど実際に目にするとは思わなかった。
ただのお遊び程度でこれなら実際戦場に出たらとんでもないなと思った。
全身に緊張という鎧を付けたのならきっと無敵だ。
けれどそれはチャンミンも同じだ。
持て余しそうな長い手足を無駄なく使えるのはあの細い体からは想像しがたい筋力。
時にはバネのように強靭で、時には鞭のようなしなやかさで繰り出される剣は一切の迷いがない。
賑やかだった観客が次第に固唾を飲んでその勝負の行方を見守った。
チャンミンが動くと風が起こる。
ユノがその風に乗って舞うように防御し、攻撃する。
その姿にキュヒョンは前に聞いた噂話を思い出した。
隣国に「戦場の紅い華」と呼ばれる人が居るというのを。
きっと彼の事だ。
この国の衛兵は戦の時には赤い甲冑を身に着ける。
まるで踊る様に戦うその人は誰よりも強く、仲間を守る存在。
ただの噂話、御伽噺的なものだと思っていたけれど実際に目にするとは思わなかった。
「本人たちが楽しそうなのは何よりだけど、これ終わりそうにないなぁ」
腕を組んでのんびりと見ていたドンヘがそう言って、両手を下げると筋肉をほぐすようにぶらぶらと揺らした。
「ヒョク」
「はいよ、ちょっと待って」
「はいよ、ちょっと待って」
ヒョクチェが店に入って戻ってくると薙刀をドンヘに手渡す。
「それじゃあ、まぁ…」
ドンヘが構えを取ると二人を真剣に見つめる。
すうっと大きく息を吸ったドンヘが微笑むと、ザっと音がして砂埃が舞った。
新しい一陣の風が吹く。
カンッ! と音が止まった。
二人の剣が交わるその間に薙刀の刃が止まっている。
すうっと大きく息を吸ったドンヘが微笑むと、ザっと音がして砂埃が舞った。
新しい一陣の風が吹く。
カンッ! と音が止まった。
二人の剣が交わるその間に薙刀の刃が止まっている。
「凄い…」
思わず零れたキュヒョンの言葉にヒョクチェが満足気に微笑む。
「あいつも腕のある衛兵だったんだよ」
「過去形?」
「ご覧の通り、今はあの店のオーナーだからね」
「過去形?」
「ご覧の通り、今はあの店のオーナーだからね」
ユノとチャンミンがドンヘに視線を向ける。
「そーろそろお開きにしようか」
「えぇぇぇ…」
「ユノ…残念そうに拗ねてもダメ」
「えぇぇぇ…」
「ダメだって。お兄さん。一杯奢るから飲みなおしなよ」
「はぁ…いただきます」
「こっちも心なしか残念感醸し出すのやめてくれる?」
「えぇぇぇ…」
「ユノ…残念そうに拗ねてもダメ」
「えぇぇぇ…」
「ダメだって。お兄さん。一杯奢るから飲みなおしなよ」
「はぁ…いただきます」
「こっちも心なしか残念感醸し出すのやめてくれる?」
周りもざわざわと音を取り戻し始める。
ユノに黄色い声援を送っていた女性達の中には相手の兵士は誰だと大騒ぎする者もいた。
目立つつもりはなかったのに…はぁ、と溜息をつくキュヒョンにシウォンが笑う。
ユノに黄色い声援を送っていた女性達の中には相手の兵士は誰だと大騒ぎする者もいた。
目立つつもりはなかったのに…はぁ、と溜息をつくキュヒョンにシウォンが笑う。
「キュヒョナはまだこっちに居るの?」
「えっと…考え中…です」
「そっか、もしこっちに居るようならまた会えるといいなと思って。楽しかったし」
「僕も、楽しかったです」
「さすがに毎日とはいかないけど、この店に居る事は多いから」
「えっと…考え中…です」
「そっか、もしこっちに居るようならまた会えるといいなと思って。楽しかったし」
「僕も、楽しかったです」
「さすがに毎日とはいかないけど、この店に居る事は多いから」
笑ったシウォンの表情は子供みたいでキュヒョンはやっぱりこの人はいい人だと確信した。