【ウォンキュ】 失われた風景 31  | 徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説

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とはいいつつも83(レラトゥギ)・ヘウン、TVXQミンホも時々やらかしますが、どうぞご贔屓に!

 
人差し指でこめかみを押しつつ大きく呼吸すると、キュヒョンはピクリと肩を跳ねる。
さて、どう切り崩していけばいいのか。
目の前にあるのは下手なところから手を付ければ崩れかねない砂の山だ。
 
「俺がキュヒョンを探すことは考えなかった?」
「…僕があの鍵をずっと身に着けていたのはシウォンさんも知っていましたから、理由が知りたいと思うのなら、それは十分にあることだとは思っていました。ただシウォンさん本人が探すとは思わなかったんです」
 
あぁ、確かに。
以前の自分ならそれこそ探偵でも雇って調べたかもしれない。
そうすればキュヒョンの口からではなく「報告書」という紙に書かれた、今聞いた彼の感情などは全く含まない表面上の事実だけを知って納得したはずだ。
だけど、今はそれが真実ではないと知っている。
 
「だからソンミニヒョンからあなたが僕を探していると聞いて驚きました」
「あー。今更だけど迷惑だった?」
 
キョヒョンは微笑んで首を振る。
 
「見つけて欲しいような、欲しくないような…。複雑な心境でした。シウォンさんが僕を見つけるのが早いか、僕がシウォンさんに会いに行けるのが早いか…なんだかゲームみたいですよね」
「じゃあ、俺が勝ったってことでいいのかな?」
「ゲームだったなら、そうなります」
「だったら勝者は何かしら欲しい物を貰わなきゃね」
「…何を?」
「まずは質問に答えてもらおうかな」
 
そう言うとキュヒョンは不思議そうにこちらを見る。
 
「今の話の中で俺がキュヒョンを気持ち悪いと思うような要素はどこにもなかったんだけど」
「…好きだったって、言いましたよね?」
「それ、俺が勝ったってことはまだ過去形じゃないって思っていいってこと?」
 
もしキュヒョンの方から会いに来られたらその時こそ本当に過去形だ。
キュヒョンはこちらを見たまま何も言わない。
どう答えるべきかを考えているのだろう。
すっとそれた視線が指先に移る。
 
「…過去形にしなきゃ、もっと気持ち悪いじゃないですか」
「どうして?今でもキュヒョンが俺を好きでいてくれるのなら、俺たちはめでたく両想いってことになるんだけど」
 
暫く指先を見詰めていたキュヒョンが嗤うように短く息を吐いた。
 
「…何の冗談ですか?」
「冗談を言いに来るほど暇じゃないよ、俺は」
「それこそ、あなたが僕の事を好きになる要素なんてどこにもない」
「じゃあ、キュヒョンが俺を好きだと言ってくれる要素もないじゃないか。あの鍵は支えになったのかもしれないけれど、それだけだ。俺を好きだと言ってくれる要素にはならないよね?」
 
好きだと気づいた時にはキュヒョンは居なくなっていた。
探している間にもいろんな一面を知ってやっぱり好きだなって思えた。
…多分、最初に家に来た時に朝スープを作ってくれた時から少しづつ好きになってたんだと思う。
それまで「好きだ」と思っていた恋人たちは、きらびやかな世界を優雅に泳ぐ色鮮やかな熱帯魚と同じだった。
自分が整えた世界に身を置くことに満足し、狭い世界に飽きたら去っていった。
けれどキュヒョンは違ったのだ。
飾らない、さりげない気づかいや優しさで自分ですら気づかなかった身体の中心にある空洞を少しづつ埋めてくれた。
だから、気づけたのだ。
彼が好きなのだと。
 
「理由なんてない。でもそれが必要ならいくらでも探すし、探せるけど。好きだと思う言葉を並べろって言われたらなによりも先にキュヒョンって名前が出ると思う。自分でも何故だかなんてわからないけど」
 
そういうものじゃないの?
そう言うとおずおずと顔を上げる。
 
「そんな簡単に…」
「そんなに簡単でもないよ。それなりに自分でもちゃんと考えたけど結論は変わらない。それにヒョクが言ったんだ。『その人と一緒にいるだけで楽しくて、何を食べても一緒だってだけで美味しく思えるような人。なくせない人。そんな人が絶対に現れる』って。どう考えても俺にとってはキュヒョンだった」
 
もどかしい。
上手く伝えたいのに、言葉というのはどういえば上手く確実にこの想いが届くのかがわからない。
 
「どうしよ…」
 
キュヒョンがまた深く項垂れた。
 
「その言葉を信じたいのに、信じるのが怖いなんてあなたには分からないでしょ」
「…何が怖いの?嘘に聞こえる?」
「僕が愛した人は僕を置いていってしまう。あなたを信じてもしおいていかれたら、僕はどう生きたらいいのかもうわからないんです。今までの支えだった物ももう何も残っていない」
 
キュヒョンの座っている椅子の横にひざまずくと、ポケットから取り出したそれを掲げて見せる。
不思議そうな表情の彼の首にそれを掛けると、目を瞠った。
 
「なんで…」
「これは…俺の宝物を仕舞っていた箱の鍵だった。大切なものを仕舞っておくためのね。だけどもう今はいらないんだ。大切な物を入れるのにあの箱じゃ大きさが足りないんだ。今、大切なものはキュヒョンだから。守るために鍵をかけたんだよ」
「シウォンさん…」
「あ。それと、これ。やっと返せる」
 
もう一つポケットから取り出したのはガラス玉。
 
「キュヒョンの星、なんだろ?」
 
ポロリとキュヒョンの目から綺麗な滴が落ちる。
ガラス玉なんかより、こっちの方がよほど価値がありそうな美しさだ。
 
「だからね。これからはキュヒョンは自分自身を大切にすることを支えにすればいいんだ。それでいいんだよ。君の両親も、俺もみんなそれを願ってる」
 
キュヒョンが自分のコートを手繰り寄せると、そのポケットに手を突っ込む。
そしてビロードの小さな袋を出してこちらの手の上にそれを乗せた。
袋を開けると中から転がり出てきたガラス玉。
 
「やっと…返せた。シウォナの星」
 
そうして笑ったキュヒョンがまた綺麗で思わず抱きしめると、頼りなく背中に触れた手。
ほぅ、っと息を吐いてキュヒョンがぽそりと呟いた。
 
「あなたが好きです、シウォンさん」
「…うん。よかった」
 
本当に。
出会えてよかった。
俺たちの星を残してくれた両親に心から感謝したいと思った。
ここに導いてくれたたくさんの想いと星に。
 
「…やっぱり、よくない、かも」
「え?」
「両思いだってわかった瞬間に遠距離恋愛決定じゃないか」
 
キュヒョンが腕の中で脱力して、次にくつくつと笑いだす。
 
「距離に負ける程度の気持ちですか?」
「負けないよ」
「じゃあ、そこは諦めてください」
 
楽しそうな声だけで。
それだけでいいと思った。