キュヒョンの機嫌のよい時には必ずと言っていいほど披露される曲のタイトルは何だったか。
「~♪」
キュヒョンが手元のモバイルを覗き込みながら披露する鼻歌。
「何かいい事でもあった?」
そう尋ねると
「別に…」
と気のない返事が返ってきた。
だったら、その鼻歌は自分と一緒にいるせいだと前向きにとらえることにしたシウォンはそれ以上は聞かないことにした。
「その歌」
「ん?」
「なんてタイトル?」
「コトノハ」
日本の古い言い方で「言葉」を意味する言葉らしい。
自分たちのなじみのない言語は言葉を追うよりメロディーを追うだけになってしまうけれど、それはなぜか特別に感じられた。
時折異国の言葉が入っているのはキュヒョンが耳で覚えた歌詞だろうか。
こんな時間がずっと続けばいいのに。
近くでこうして彼の声を毎日聴いていていられればいいのに。
その願いがかなえられるには、暫く時間がかかるけれど。
「~♪」
「…シウォナ、その曲何?」
イェソンが不思議そうに聞いてくるのにシウォンは首を傾げる。
「曲?」
「今、鼻歌で歌ってたやつ」
ああ、とシウォンは納得して笑う。
「えぇと、なんだったっけ。キュヒョンがよく歌ってて…覚えちゃったみたいだ。日本の曲だって言ってたよ?昔の言い方で『言葉』って意味のタイトルだって言ってたのは覚えてるんだけど」
「なんだよ。キュヒョナのお手付きかー」
メロディーライン好きだなーと思ったのに、とか言いながらイェソンはその場にいた日本のスタッフに声をかけると、さっきのメロディーラインを辿って見せた。
一回でここまで覚えられるのは流石というべきか。
聴いたことないですねー。
そう言いつつもタイトルの意味から一生懸命に検索して探してくれている。
「コトノハ」
その言葉が出てきた時に思わず「それだ」と呟くと、いろんな方が歌ってらっしゃいますよ。
と有名な女性アーティストの名前を上げられる。
動画で確認してみたけれどそれでもなかった。
暫くすると、聴きなれたメロディーライン。
「これだ」
「ねぇ、歌詞とか大まかでいいから教えてくれない?」
無茶な願いにも気を悪くした様子もなくそのスタッフは歌詞を訳してくれた。
「…確か、言葉には魂が宿るから口に出した方がいいとかいう話があったよね」
「コトノハ、か」
キュヒョンも、あの時間を大切に思ってくれていたのかと今になって気づく。
もしかしたらあの歌が彼のシウォンに対する「言葉」だったのかもしれない。
明日もあなたが笑えますように
つぶやいた「コトノハ」
過去と未来を繋いでゆくよ
いつまでも ずっと.......
逢いたい 逢えない
時さえ超えて
届けたい「コトノハ」
過去と未来を繋いでゆくよ
これからも ずっと.....