【ウォンキュ】失われた風景 30 | 徒然日記 ~ 愛wonkyu ~ ウォンキュ小説

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SJウォンキュ妄想垂れ流し小説ブログです。 
とはいいつつも83(レラトゥギ)・ヘウン、TVXQミンホも時々やらかしますが、どうぞご贔屓に!

聞き間違いかと思わず相手の顔を見詰めると、何もかもに絶望したような顔でキュヒョンが俯いた。
幼い子供が兄を慕っているような気持ではないのだとその態度が物語っている。
自分だって彼の事を好きなのだ。
ただ、今、この場で伝えるべきではないとも思う。
まだ彼の話は終わっていないのだから。

大学生になって好きなことを学んで、人並みに彼女も出来て普通の学生と何も変わらない生活をしていました。
そして偶然あなたを見かけた。
子供の頃に会ったきりでしたけど、すぐにあなただと分かりました。
それに周りの人たちがあなたの名前を呼んでいたことで確信もしました。
普通に大学に通っていれば、学生の生活リズムなんてほぼ決まっているようなものですから、何曜日の何時頃にあの場所。
決まった場所であなたを見つけることが出来ました。
少しストーカーっぽいですけど…。
ただ幸せそうなあなたを確認できるのが嬉しかっただけなんです。

だけど女性ってそういうところカンが鋭いですよね。
バイトで忙しいうえに、会える時もほとんど無意識にシウォンさんを見かける場所の近くに足が向いてた。
ある日彼女が苛立ったように言ったんです。

「あなたが付き合っているのは私だけよね?私の事好きなのよね?」

僕は僕なりに彼女の事を大切にしていたつもりだったけど、そう思われてはいなかったんだと気づきました。
それはそうですよね。
僕は自分の事で手一杯で彼女の事を一番に考えることは無理だったし、それを理解してくれているのだと勝手に思い込んでいたんですから。
だから彼女の事をもっと大切にしよう。
そう思った矢先。
彼女が旧友と話しているところにたまたま出くわしたんです。
向こうは僕に気づく様子もなかったし、同じ店の中でも死角になるような席でしたからこちらから声を掛けようかとも思ったんですけど。
聞こえてきたのは彼女たちが今付き合っている男性の話でした。

「成績だっていいし容姿も悪くはない、将来は有望だけどつまらない男」

それが彼女の僕に対する総評です。
もっとも実際は本当に僕が今まで見てきた彼女なのかと思うくらいに辛辣な言葉でしたけど。
でも思った以上にショックではなくて…。
それならこのまま付き合っていく必要はないんだろうなと思って彼女に伝えたんです。

僕はどうしても君を一番は考えられない。

向こうにしてみれば自分から別れるならともかく僕から別れ話を切り出されるなんて思ってもいなかったんだと思います。
実際、その時には前に僕の事を話していた友達がこっそり僕の事を見に来ていたみたいで…。
友達に見られていた手前、自分から別れたとも言えなくなった。

「やっぱり他に好きな人が居るんでしょ」

それは違う。
そう言えなかったんです。
その時も。
よく考えてみればそれ以前も。
好きだという気持ちが彼女に対するそれとは違っていても、僕にとってあなたの存在の方が大切だったことは違いなかった。

「大切な人は居るよ。ずっと」

そう口にして、ずっと大切だったけれどその気持ちが昔と変わっている事にも気づきました。
あなたに会えてから彼女よりも、あなたのことが好きだってことに。
気づいたところで何が変わるというわけでもないけれど、自分の中では腑に落ちたんです。

それからは聞いているかも知れませんが、彼女が僕のことをあることないこと吹聴していたみたいで僕は大学では浮いた存在になってました。
その時には探偵事務所のバイトもしていたので、そんな噂もかえって都合がよかったんで放っておいたんですけど。
ちゃんとわかってくれている友人もいましたし。

なんだそれは。
ジアの言っていたことがなんとなく理解できる。
ましてやキュヒョンの本当の姿を知っていれば猶更だ。

「悪く言われて都合がいいなんてことあるの?」
「ええ。意外に思われるかもしれませんがストーカー被害って本当にしても虚言にしても思い込みだったとしても依頼は割と多いんです。特に新年度になると本当の被害も増えます。ですから当然依頼も何件かはあって…。それが大学生なら外の人間が対象者の傍に張り付くのは難しいですけど学内の人間だと簡単ですし、その噂のせいで対象者が変わったところで僕にしか悪い風評はありません。寧ろストーカーの感情を対象者よりこちらに向けさせることも出来たので」
「損な役割だね」
「…まぁ…でもちゃんと対処法や防衛術は教えられてましたし、成功報酬はもらえたし。それに探偵事務所のバイト自体はおいしいとこもありましたし」
「そうなの?」
「ええ。例えば対象者がバイトするとなれば、そのバイト先で僕も働くことが可能でしたし、その報酬はそのまま受け取りましたから。…そんな時にバイト先で一人の男性から告白されたんです」

正直。
自分でもよくわからなくて…。
シウォンさんの事は好きだと思うけれど、だからと言って今までそういう対象になった男の人なんていませんでした。
だから「付き合ってほしい」と言われて。
嫌悪感とかそういうものはなかったんです。
違和感は多少ありましたけど。
こっちの戸惑いも伝わってたんでしょうね。
「まずは友達からでいいから。その気持ちが少しでも変わってくれたら嬉しい」
好きになれるかどうかは分からないけど、嫌いでもない。
あやふやなままで付き合ってました。
卑怯だな、って自分でも思ってました。
シウォンさんの身代わりみたいなものですから。
でもあの人優しかったし、ちょっとだけですけど笑顔がシウォンさんに似ていました。
まぁ、気が多いのは問題でしたけど。
結局それが理由で別れたんです。
それ以上に僕が彼自身の事を恋愛の対象として好きにはなれなかった。

シウォンさんが大学を卒業してからはあなたの姿を見ることも無くなったし、このままこの気持ちも薄れていくだろうと思っていました。
けれど、暫くしてソンミニヒョンが家に来るようになったんです。

「不思議ですよね。シウォンさんとの間でいつも何かが繋がるんです」
「だったら、それは運命じゃない?」
「運命、ですか?」
「そう。きっとどこかで会わなきゃならなかったんだ。だから俺はあの鍵がどうしても欲しくなったんだよ。今までちっとも思いもしなかったのに。すべてのタイミングが上手く嚙み合ったんだから運命だよ」

そう言うと、キュヒョンも少しだけ安心したように笑う。

「それなら運命って優しいのか残酷なのかわからないですね…」

ソンミニヒョンがくれた二週間の間に気持ちに区切りをつけるつもりでいました。
僕はあなたとただの幼馴染で、昔、あなたから預かった鍵を返せばいい。
でも、今までは知らなかったあなたの一面を見るたびに諦めようとする気持ちがどんどん弱くなるんです。
自分の気持ちに整理がつかなくなってきた。
そんな時にあの放火事件が起きました。
罰が下されたんだと思いました。
身勝手で自分の事しか考えていなかったのだと思い知らされた気がしたのに、それでもまだあなたと繋がっていた鍵を返すのを躊躇しそうになりました。
あなたと話すことも、鍵を返すことも怖かった。
まっすぐ向き合うことが怖かった。
そんな自分が怖くて、鍵だけを置いてここに来ました。
逃げたと言われても仕方がない。
ちゃんと話せるまで時間が欲しかった。
それは言い訳にしかならないですけど。
でも、もう少し自分の中の気持ちが落ち着いてから、あなたに会いに行くつもりでした。

「なのに、シウォンさんが来るなんて…」

キュヒョンはテーブルに置いていた水のボトルを両手で挟んで回す。
冷たい感覚で自分を落ち着かせようとしているのか、その指先は微かに白くなっていた。