それは本当にいきなりの出来事だった。
「と、いうことで。店6月に閉めるから」
「はぁ !? 」
「はぁ !? 」
僕の勤めているホストクラブのオーナーはにこりと笑ってそう言ったのだ。
それは4月も真ん中を過ぎた頃の話。
それは4月も真ん中を過ぎた頃の話。
「ほんとビックリさせますよねぇ」
「…悪い」
「…悪い」
いや。別にチャンミニヒョンが謝ることじゃないんだけど。
とはいっても店の時期オーナーで、現在のオーナーがチャンミニヒョンの叔父だから、店のホストを驚かせたことは甥として責任を感じているらしい。
僕たちの勤めているホストクラブは今や有名スポットとして観光客でさえやってくる程の盛況ぶりだ。
それなのにいきなり店を閉めるとか言われてびっくりしない人間はいないと思う。
まさに寝耳に水。
よくよく聞くと改装のために3週間程店を閉めるというだけの話だったのだけど。
うちの店のホストはやたら人気のある奴が多いからただでさえ引き抜きが多いので、心配なのはその辺りなのだと思う。
まぁ。ナンバーワンだしね、僕は。
あの店が好きだから働いてるので他の店に行こうとは思わないし。
とはいっても店の時期オーナーで、現在のオーナーがチャンミニヒョンの叔父だから、店のホストを驚かせたことは甥として責任を感じているらしい。
僕たちの勤めているホストクラブは今や有名スポットとして観光客でさえやってくる程の盛況ぶりだ。
それなのにいきなり店を閉めるとか言われてびっくりしない人間はいないと思う。
まさに寝耳に水。
よくよく聞くと改装のために3週間程店を閉めるというだけの話だったのだけど。
うちの店のホストはやたら人気のある奴が多いからただでさえ引き抜きが多いので、心配なのはその辺りなのだと思う。
まぁ。ナンバーワンだしね、僕は。
あの店が好きだから働いてるので他の店に行こうとは思わないし。
「僕的にはちょうどよかったし。6月はちょっと長めに休みもらおうと思ってたから」
「そうなのか?」
「うん。多分、ユノヒョンが実家帰るから…着いていこうと思ってたからさ」
「そうなのか?」
「うん。多分、ユノヒョンが実家帰るから…着いていこうと思ってたからさ」
ぴくっとチャンミニヒョンの眉が上がった。
面白い。
面白すぎる。
面白い。
面白すぎる。
僕の可愛い従兄弟のユノヒョンは、極度の対人恐怖症だったせいでどうにも人と深く関わるのが苦手だった。
それでも何故かこの目の前にいる男。
シム・チャンミンには何かしら感じるものがあったのか最初から壁を作ることをしなくて、気が付いたら今では立派な恋人同士だ。
まぁ、僕が一役も二役もかった部分はあるけどさ。
そうでなきゃ、温厚に物事が進むはずがなかったと思う。
本当ならこんな協力なんてしたくはないけどさ。
あのユノヒョンが。
あれだけ人間恐怖症で対人恐怖症だったあの人が。
人を好きになってくれた。
それだけで僕には充分な出来事だったから。
それにまたチャンミニヒョンもいい人だし。
仕方ない。
「ユノの実家って確か…」
落ち込むまないでよ。
「一緒に行けばいいじゃん」
「簡単に言うな。誘われたなら行けるけど、俺から行くって言えないだろ」
「簡単に言うな。誘われたなら行けるけど、俺から行くって言えないだろ」
むすっとむくれたチャンミニヒョンが机を指ではじいた。
いつもは推しの強いこの人がユノヒョンの事となると途端に駄目になる。
それが面白くて仕方がない。
いつもは推しの強いこの人がユノヒョンの事となると途端に駄目になる。
それが面白くて仕方がない。
「まぁ、頑張ってください。今からデートでしょ?」
頑張れって言われても。
本気でヤバイと思う。
そこそこ恋愛もしてきたと思うし、その時その時真剣に相手の事を想っていた…はずだ。
なのに今回に限っては今までの経験なんて何の役にも立ちゃしない。
相手が男だからとかそんな単純明快な理由のせいじゃないから性質が悪い。
今までのものが何の役にも立たないくらいに惚れている。
初めて恋をしたときでもこんなじゃなかったと思うのに、どうしていいか分からない。
好きだといえば頷いてもくれるし。
キスも普通に受け入れてくれるけど。
ユノは本当に僕のこと好きでいてくれるのかと不安でしかたがなくなるのだ。
本気でヤバイと思う。
そこそこ恋愛もしてきたと思うし、その時その時真剣に相手の事を想っていた…はずだ。
なのに今回に限っては今までの経験なんて何の役にも立ちゃしない。
相手が男だからとかそんな単純明快な理由のせいじゃないから性質が悪い。
今までのものが何の役にも立たないくらいに惚れている。
初めて恋をしたときでもこんなじゃなかったと思うのに、どうしていいか分からない。
好きだといえば頷いてもくれるし。
キスも普通に受け入れてくれるけど。
ユノは本当に僕のこと好きでいてくれるのかと不安でしかたがなくなるのだ。
触れていた唇が離れると、ユノはとろりと瞳を開けた。
本当に可愛いなぁ、と思う。
でもその後は抱きしめるだけで精一杯という有様だ。
自分で自分にありえないよなぁと突っ込みたくなるくらいのへタレぶり。
最初に告った時に勢いで身体に触れたけど、あの後一週間はまともに顔すら見てくれなかったのだ。
…まぁ、半分は恥ずかしいとかいう乙女みたいな理由だとは思うけど。
今でも思いっきり欲情してる自分がいるけど、何よりユノに嫌われたり、怖がられたりするのは嫌だし怖いのだ。
くてっと身体の力を抜いて全身を俺に預けているユノはやっぱり可愛くて仕方がない。
本当に可愛いなぁ、と思う。
でもその後は抱きしめるだけで精一杯という有様だ。
自分で自分にありえないよなぁと突っ込みたくなるくらいのへタレぶり。
最初に告った時に勢いで身体に触れたけど、あの後一週間はまともに顔すら見てくれなかったのだ。
…まぁ、半分は恥ずかしいとかいう乙女みたいな理由だとは思うけど。
今でも思いっきり欲情してる自分がいるけど、何よりユノに嫌われたり、怖がられたりするのは嫌だし怖いのだ。
くてっと身体の力を抜いて全身を俺に預けているユノはやっぱり可愛くて仕方がない。
「仕事順調?」
「うん。まぁまぁかなぁ」
「うん。まぁまぁかなぁ」
芸人を目指しているユノは最近ちょこちょこと営業の仕事も入るようになったらしい。
だからといってそれで食べていけるわけでもないからバイトもしっかりしているのだ。
ボアというユノの漫才の相方をしていたこともある可愛い人が切り盛りしている(本当はボアさんの母親の店らしいが仕事は完全放棄しているらしい)クレープ屋。
有名な美食家の先生が雑誌かなんかで紹介してか、とても忙しいらしくて、ユノはそこでバイトするようになった。
だからといってそれで食べていけるわけでもないからバイトもしっかりしているのだ。
ボアというユノの漫才の相方をしていたこともある可愛い人が切り盛りしている(本当はボアさんの母親の店らしいが仕事は完全放棄しているらしい)クレープ屋。
有名な美食家の先生が雑誌かなんかで紹介してか、とても忙しいらしくて、ユノはそこでバイトするようになった。
「あ。そういえば…」
身体を離してユノが顔を上げる。
「6月、店、お休みするんだって?」
「え?…あ、テミンか」
「え?…あ、テミンか」
こくりと頷いて、ユノは自分の携帯を指し示した。
「あー…。ユノは実家帰るんですって?」
「あ。テミナか…」
「あ。テミナか…」
ちょっと悲しそうな顔をしたユノが首を縦に振った。
それから何かを決心したように俺の目をまっすぐに見詰める。
それから何かを決心したように俺の目をまっすぐに見詰める。
「あの…よかったらチャンミンも一緒に行かない?」
「いいの?僕が行っても」
「うん…っていうか…来てくれたら、嬉しい」
「いいの?僕が行っても」
「うん…っていうか…来てくれたら、嬉しい」
そんなの二つ返事でオッケーに決まってる。
ぎゅっと抱きしめたら何故か安心したようにユノは笑った。
ぎゅっと抱きしめたら何故か安心したようにユノは笑った。
僕はまだこの時には想像もつかなかったのだ。
ユノの過去に触れることになるなんて。
車の窓を開けて、まだ肌寒く感じるくらいの空気を思いっきりすいこんだ。
なんだか懐かしい気分になる。
いいことばかりではなかったけど、やっぱりこの街を嫌いになる日が来るとは思えなかった。
なんだか懐かしい気分になる。
いいことばかりではなかったけど、やっぱりこの街を嫌いになる日が来るとは思えなかった。
「スピード感覚がおかしくなる」
と空港からレンタカーで家に向かう道で運転をしていたテミナが言うと、助手席のチャンミンが「同じく」と呟いた。
「こんなに真っ直ぐ続く道なんて都心ではありえないし」
「でも市内に入ったら変わらないと思うよ?」
「でも市内に入ったら変わらないと思うよ?」
後ろのシートから二人の間に顔を出すようにすると、二人は俺に視線を向けて微笑んだ。
あれ?俺、何か変なこと言ったかな?
あれ?俺、何か変なこと言ったかな?
「ユノの家は市内?」
「んー市内は市内だけど中心部からは少し離れてるかな」
「…見て驚かないでね、チャンミニヒョン」
「んー市内は市内だけど中心部からは少し離れてるかな」
「…見て驚かないでね、チャンミニヒョン」
ぽつりとテミン。
あー…。だよね。ちょっと驚くかもしれない。
何のことだと聞くようなチャンミンの視線を曖昧に笑ってごまかした。
着いたら分かることだし…。
そしてチャンミンは着いたと分かるとあんぐりと口を開いたまま固まっている。
あー…。だよね。ちょっと驚くかもしれない。
何のことだと聞くようなチャンミンの視線を曖昧に笑ってごまかした。
着いたら分かることだし…。
そしてチャンミンは着いたと分かるとあんぐりと口を開いたまま固まっている。
「まっ、そうなるでしょうね。僕も初めてここに来た時は正直びびったし」
「…どれだけ大きいんだよ」
「…どれだけ大きいんだよ」
自分たちの背丈より高い門扉が自動でゆっくり開くと、そのまま車で中に入る。
車を止めた途端。
玄関のドアが開いて中から白衣を着た人と大型犬が飛び出してきた。
車を止めた途端。
玄関のドアが開いて中から白衣を着た人と大型犬が飛び出してきた。
「ユノヤ、テミナ、お帰りー」
「ただいま。ジョンスヒョン」
「言ってくれれば迎えをやったのに」
「ただいま。ジョンスヒョン」
「言ってくれれば迎えをやったのに」
朗らかな笑顔でジョンスヒョンが迎えてくれる。
「テミナ相変わらず男前、さすが俺の弟だな」
「好きなようにいって」
「好きなようにいって」
苦く笑うテミナはそれでも自分の兄さんが大好きなんだと思う。
「で。そちらの男前さんが二人の言ってたチャンミン?」
いきなり話を振られたチャンミンはぽかんと開けたままだった口をきゅっと結んで、本人が言うところの営業用のスペシャルスマイルを作った。
「初めまして。シム・チャンミンです。お世話になります」
「いらっしゃい。ジョンスです。ユノヤの従兄で、テミナの兄。何もできないけどゆっくりしてって」
「ありがとうございます」
「お茶の用意するから、リビングで待ってて」
「いらっしゃい。ジョンスです。ユノヤの従兄で、テミナの兄。何もできないけどゆっくりしてって」
「ありがとうございます」
「お茶の用意するから、リビングで待ってて」
軽い足取りで玄関までのステップを上がるジョンスヒョンを見送ってチャンミンは車のトランクを上げながら尋ねてくる。
「あの人と一緒に住んでたんですか?」
「俺が上京してからはドギー…って、あの犬の名前。とジョンスヒョンだけで住んでる。お手伝いさんは来てくれてるけど」
「…ふーん」
「俺が上京してからはドギー…って、あの犬の名前。とジョンスヒョンだけで住んでる。お手伝いさんは来てくれてるけど」
「…ふーん」
今回帰省した理由が俺の両親の墓参りだと説明はしてあるから深く聞いてこないのだろう。
チャンミンの優しさだ。
それでも実家と言ってしまえるのはこの家の名義は俺になっているから。
荷物を運び、チャンミンに使ってもらう客室に案内する。
チャンミンの優しさだ。
それでも実家と言ってしまえるのはこの家の名義は俺になっているから。
荷物を運び、チャンミンに使ってもらう客室に案内する。
「あ。ここ使って」
ドアを開けると、またチャンミンがぽかんと口を開ける。
「なんなんですか…ここはホテルか?」
そこそこの広さのある部屋はまさにホテルの一室のようにみえなくもない。
小さなテーブルとソファーにセミダブルのベッドがあって、簡単なシャワールームとトイレもある。
小さなテーブルとソファーにセミダブルのベッドがあって、簡単なシャワールームとトイレもある。
「今、ユノが住んでるアパートより広いじゃないですか」
あまりに的を射ている言葉に思わず笑ってしまう。
「ほんとだよね」
「あなた、金持ちのわりに金銭感覚ズレてないですよね」
「あなた、金持ちのわりに金銭感覚ズレてないですよね」
なんて今度は変なとこに関心されてしまった。
「俺だってべつに生まれた時からお金持ちだった訳じゃなかったよ」
小学校の低学年まではごくごく普通で平凡な生活をしていたし。
家だって普通の家だった。
父親が研究して開発したものの特許申請が通って。
しかもそれがなんだか凄いことだったらしくてその税金で生活できるくらいになった。
いや、生活出来るなんてものじゃないくらい。
けれど父さんはそんなことに全く無頓着な人で。
母さんは母さんで誰よりも父さんを理解して愛しているような人だったから、自分の研究を思う存分出来るようにラボを備えた自宅を作ってしまったのだ。
一人だけでは出来ない研究はもちろんスタッフがいた。
そしてその人達が遅くなって帰れなくなった時の為にこの客室が存在する。
自分の親に対して変な言い方かもしれないけれどとても優しい人たちだった。
そして俺を愛してくれた。
家だって普通の家だった。
父親が研究して開発したものの特許申請が通って。
しかもそれがなんだか凄いことだったらしくてその税金で生活できるくらいになった。
いや、生活出来るなんてものじゃないくらい。
けれど父さんはそんなことに全く無頓着な人で。
母さんは母さんで誰よりも父さんを理解して愛しているような人だったから、自分の研究を思う存分出来るようにラボを備えた自宅を作ってしまったのだ。
一人だけでは出来ない研究はもちろんスタッフがいた。
そしてその人達が遅くなって帰れなくなった時の為にこの客室が存在する。
自分の親に対して変な言い方かもしれないけれどとても優しい人たちだった。
そして俺を愛してくれた。
「ユノ?」
少し考え事をしていたせいで返事が遅れた。
「どうかしました?大丈夫?」
「うん…ごめん考え事」
「なら、いいですけど」
「うん…ごめん考え事」
「なら、いいですけど」
チャンミンの表情が曇る。
ごめん。
ごめんね。
全部話していいのか、俺には分からない。
君は俺に隠すこと無く全てを見せてくれるから、君を全部受け入れたいと思うのに、俺の全部を知られるのはまだ少し怖いんだ。
俺を。
俺を取り巻いていた人達を。
ごめん。
ごめんね。
全部話していいのか、俺には分からない。
君は俺に隠すこと無く全てを見せてくれるから、君を全部受け入れたいと思うのに、俺の全部を知られるのはまだ少し怖いんだ。
俺を。
俺を取り巻いていた人達を。