話の続きを書けよ、なんですが。
通販で頼んでたおまんが来たわけですよ。
そしたらもう、我慢できなくてつい…。
すんません…。
レラトゥギで…。
問題ない方のみ読んでやってくださいませ。
=========== 優しさよりも =============
広い、と思う。
フローリングの床に腰を落ち着けて、ゲームのコントローラーを握って画面を見ているだけの俺にこの広さは要らない。
ヒボムだけはふわふわとした足取りで部屋中を歩き回って、気に入った場所を陣取るとふわぁと欠伸をして転がった。
足元に転がっているモバイルが震えて着信を知らせる。
表示された名前に通話をタップする。
「ヒチョラ、今家に居る?行ってもいい?」
「家には居るけど暇じゃねぇから相手してやんねぇぞ」
「あ、もしかして誰か来てる、とか…?」
誰が来るんだ。
お前みたいな物好き以外。
「狩りの最中なんだよ」
「…もしかして、ゲームの話?」
「御名答」
小さく呼吸で笑う音が聴こえる。
「じゃあ、今から行くから」
相手してやらねぇって言ってるのにそういうところは強気だな、こいつ。
心の声が伝わったみたいにジョンスは「いいよ。俺の事は放っておいて」そう言った。
なんだか、これじゃあ長年連れ添った夫婦みたいじゃないか。
まぁ、似たようなものだけど。
それから小一時間経った頃、開錠される金属音。
ジョンス意外にこの技を使えるやつは居ないから放っておく。
それからひたひたと足音が近づいて、柔らかい声が聞こえた。
「あ。ヒボム元気?」
おい、こら。
そこは主である俺が先だろ。
ヒボムが可愛いのは認めるけども。
ちょっとばかり、ムッとしながらも画面から視線は外さない。
すると呆れたようにジョンスが言った。
「相変わらずこじんまりと暮らしてるね」
なんだ、そりゃ。
また足音がキッチンに向かう。
暫くすると、コトリと横に暖かいカフェオレが入ったマグカップが置かれた。
画面の中もちょうどキリがいいところ。
セーブして電源を落として振り返るとジョンスがいつもと同じ笑顔でコーヒーを飲んでいる。
「…で?何かあったか?」
「お土産、持ってきたんだよ」
持ってきたらしい大きい鞄から次々とお菓子やらインスタント食品やら缶入り飲料が出てきて床に広げられる。
ほら、みろ。
お前がくると丁度良くなるんだ、この広さが。
どうしてくれる。
腹立たしい。
「あー…。お前日本行ってたんだっけ」
並べられたものは全て日本語がプリントされている。
こいつ、ほんと好きだな。
いや、美味いけど。
確かに美味いけど。
ポテトチップスの袋開けて、それを食べ始めるジョンスはコクリと頷く。
「お前…帰る時には掃除して帰れよ!」
「えー…ヒチョルんちなんだから自分でしなよ」
「ふざけんな。だったら絶対零すなよ!?」
「努力はするよー」
全然その気もなさそうな笑顔で。
今度は缶のプルトップを開けた。
それはこいつがこよなく愛するアルコール飲料だった。
別に悪いとは言わないけど。
なぜ、お前はそのジュースみたいな酒で泥酔できるんだ。
呆れた。
本気で。
それでも楽しそうにフワフワと喋り続けてる、床に転んだジョンスを見下ろして、こっちも付き合いで飲んではいるのだけど。
酔っ払いは何やら包装された箱を拾い上げると俺に手渡す。
「あ!これ!凄くない?今回のイベントのグッズで作ってもらったんだよー」
「なんだよ、これ」
「饅頭」
「は?」
「だから、中に甘い餡が入ってる饅頭」
何ゆえに饅頭。
バリバリと包装を破ると「もっと丁寧に開けてよ」なんて文句を言うけれど、そんなこと知ったことじゃない。
箱を開けると中には二色の饅頭が並んでいた。
白い方には奴の名前。
緑の方には天使の羽のイラストが焼印で押されている。
…天使なのかよ。
これが、いまだに天使なのか。
袋を破って饅頭を口に入れる。
確かに甘いけど、不味くはない。
甘さを焼酎で流し込むと口許にジョンスがスナック菓子をつまんだ手を伸ばしてくる。
「今度はなんだよ」
「甘いものの後にはからいものだろ?」
本気で呆れる。
こいつは、本当にどこまでも素直になれないんだ自分の事に。
こんなめんどくさい奴のどこが天使だ。
ジョンスの手首をつかむとそのままそのスナック菓子を口に入れて咀嚼する。
その間も手を拘束したまま。
口の中の残骸をアルコールで流し込んで、少し訝しげに見上げるそのまま手にもう一度唇を寄せると指を舐める。
驚いたように手を引こうとするのを許す事もしないで、そのまま舌を這わせた。
「ちょっと…ヒチョラ、何…?」
「意地っ張り」
「ヒチョラに言われたくない」
「寂しいなら、寂しいって言え」
「ヒチョ…」
弟たちがグループから離れていく。
それは本当に離れる訳じゃない。
頭では分かっていても気持ちは別だ。
寂しくない訳がない。
自分が行くときにはそんなにも思わなかったのに、弟たちが行くのはこんなにも寂しい。
「それとも、まだ自分が寂しいってわかってないのかよ?」
「…俺」
「素直に言えばいいんだ。誰もそんなことでお前を責めやしない」
ひゅっと空気を飲む音がした。
くしゃりと歪んだ顔が可愛いと思う。
泣き顔が可愛いとか、綺麗だとか言ったら笑うだろうか。
ああ。でもこの顔は天使だなと思えるんだ。
「ヒ、チョラ…寂しい」
伸ばされた腕が俺を引き寄せる。
その涙の零れ落ちる跡に口づけて、柔らかな唇を塞いだ。
最初からそうやって素直に言えば。
優しさよりも嵐みたいにすぐ抱きしめてやれるのに。

