真っ白な病室をオレンジの光が染めている。
白い肌も同じように染まって睫毛が影を作った。
その影がピクリと動いて、ゆっくりと目が開く。
ほぅ、と息を吐くのを見てこちらも肺の中の空気を入れ替えた。
「よかった…。気分が悪いとかない?」
「あ…。ここって…」
「病院」
身体を起こそうとしたキュヒョンの肩を押してそのままでいるようにと注意するとキュヒョンはシウォンの顔をじっと見つめる。
なんだかそれが落ち着かない。
「何?俺の顔、何かついてる?」
「いや…。意識はぼんやりしてたんだけど、なんとなく聞こえて来た。チェさんって医者なんだね。…残念」
「なんで残念になるんだよ」
「専属契約し損ねた」
「何の契約?」
「うちのモデル」
「は?モデル?」
「そう。だってあのスーツあんなに着こなされちゃったらさぁ…。残念」
ふふっと笑うキュヒョンにつられて笑って、シウォンは素直に礼を言う。
「でもさ。あの凝った明るい色の服たちまでは着こなせる自信はないから、医者で居させて」
キュヒョンは口元を手で隠してククッと笑いを深くする。
「うん。残念。ところで今何時?」
「もうすぐ17時」
壁にかけられている時計を指し示すとキュヒョンはまた溜息をつく。
「やばい。明日までに上げなきゃならない仕事があるのに」
「…無理はさせたくないんだけど。ゆっくり起きてみて」
上体を起こしたキュヒョンはぐるりと首を回すと、腕を前にぐっと伸ばした。
「大丈夫、みたい」
そのまま足を下ろして地面に立つとふらりと体が傾いだ。
すかさずシウォンが掬い上げるとキュヒョンが顔をこちらに向ける。
その近さに思わず息を飲んだ。
近くで見ても綺麗な顔をしている。
そのまま軽くシウォンの胸を押して体を離すのが名残惜しいような気分になって、そう感じる自分に驚いた。
「まだ、無理なんじゃ…」
呟くように口をついた言葉にキュヒョンは口角を少し上げる。
「大丈夫。ちょっとふらついただけだよ」
「本当は今日一日ここにいて様子をみた方がいいくらいなんだけど」
「でも帰らなきゃ」
どうしたってひく気は無さそうだ。
確かに他の患者も解毒剤の投与を受けた後は症状が改善されれば帰宅させている。
「わかったよ。でもこれだけは約束して」
「何?」
「体調が悪くなったらすぐに病院に来ること」
「約束するよ。俺だってあれはキツイ」
顔をしかめるキュヒョンに苦笑いする。
「そんなに?」
「予想以上だった」
悪戯っぽく笑った表情が、なんだか子供みたいで可愛い。
思わず笑ったら「笑い事じゃないんだけど」と拗ねられた。
ああ。なんだろう。
やっぱり可愛い。