LAST HEAVEN #4 | すかいうぉーかー

すかいうぉーかー

CRAZY=SPELL−BOUND








「こんな、道だったっけか・・・」




思ってたよりも道幅が広い

脇にはそれなりの濡れ落ち葉も溜まっているが、それでも充分に走れるぐらいに




「椿ライン」

俺は、数える程しか走った事は無いのだが

元々「箱根に走りに」と言えば、まずはココだ




傾斜とコーナーのバランスが良く
中低速メインではあるが、250から大型までが「コーナーリング」を楽しめる懐の深さは素晴らしい



朝イチのウォームアップにも、ちょうど良いが

俺は、ニューマシンの挙動と操作感に 殆どの神経を割いてた









( ・・・なんだ? )





こんな 感じだったか? 椿って


同じ事をまた













「アレ?」





ふと、ミラーを見ると
誰も居なかった





おかしいな
後ろはウッちゃんだった筈だ



まだ、全然ペースは上げてない

誰かコケたのだろうか





10人を越える集団だ

何かあれば、連絡なりなんなりあるだろうと
構わず下まで降りる









5分程して、ようやく皆が来た

このまま湯河原パークウェイを上がるので
手でヒラヒラとやりながら、バイクに跨り直すと
ウッちゃんとYが、元気よく飛び出して行った



(もうちょっと、ペース上げてみっか)







湯河原は、更に路面が悪い

下手したら、おれが最初に来た時から 一度も補修とかしてない

でも、260円も取るので 普段は殆ど使う事も無い


レイアウト自体は悪くないのだが、そういった理由でペースは上げ難いし
下りなんて、半分近くがまともには飛ばせない


コレは登りなので、まぁやろうと思えば攻める事も出来るが
今日という日が始まったばかりなのを考えると、そこまでやる気にもならない









( あれ?)




適当にGを張らせて走って行くと、すぐにYが道を譲る


なんだよ






1つ先のコーナーをウッちゃんが消える

( 慣らしがちょうど終わるって言ってたな
全開状態、見せてもらお )




ギアを1つ蹴り落とし、軽く手首を捻る



優しく大きな手に押されたような加速

マイナスイオンたっぷりの 朝露に濡れた山路を、気持ちの良い勢いで登って行く




左コーナー




ツツツツ・・・と、進入を探り
アクセルを戻すと






(アレ?)





俺はブレーキをかけずに、アクセルを戻すだけでシフトダウンもせず
そのまま腰をズラして、コーナーに入った










(・・・良いんだよな? コレで)




別に何の不満も無かった

開ければ立ち上がりでエンジンはしっかりとトラクションを生み

綺麗に余裕しゃくしゃくで、結構な登りを上がって行く



そんなに飛ばしてはいないのだが

別にGが抜ける感じも無く






その感じのまま

綺麗に落ち着いて、コーナーの入り口に「ヒュンッ」と入っては

生クリームを指でなぞるように、綺麗にコーナーを抜ける


立ち上がりでアクセルを開ければ、嘘のように視界は斜線で埋め尽くされ
あっという間に、次のコーナーにステップを刻む












コレ







何か、すげー楽しくないか?











俺の頭の中を
今までに走った様々な記憶が明滅する



頼もしさは、リッタークラスのソレ

だが、ステアリングヘッド周りや足首一帯の軽さと自由度は どちらかと言えばNSRに近い



ウエストの細さ タンクの形状 ステップの位置



倒し込みは鋭いと言うよりも軽く

綺麗に収まった両足は、ありとあらゆるコーナーのタイプに応じて
無数の手摺でもあるかのように、自由な形で車体をホールドさせてくれる



いつもの朝イチのウォームアップは
少なからず、恐怖と慎重さに身体が強張っていたのに

別にそういう感じは無くて、何もかもが楽しい







勿論スピードは遅いだろう

つまり、遅くても楽しめるバイクだから こんな感じに













「アレ?」















気が付くと



俺はウッちゃんを抜き去り

一人で料金所に停まっていた






(続