「あー、コッチコッチ!」
若い店員に案内されて一番奥へ入ると
白塗りの壁にデカい世界地図の飾られた、落ち着いた雰囲気の中で
10年以上ぶりの女の顔が、白ワインのボトルを1人で開けていた
シバは対面に座りながら、おしぼりを受け取り
メニューを渡す店員に「ペリエ」と言いながら、煙草を取り出した
「飲まないの?」
「バイク」
「変わってねーな」
「お前もな」
Koolのメンソールに、エタニティ
飲み出したら止まらない、マシンガントーク
正直、たまたま近くに居なかったら 来ていない
「何の用だよ」
「離婚したって?」
「したよ」
「どう? 独身生活は」
「まあ、気楽だな」
答えながら、ヤバいと思い始める
どういうルートで耳に入れたのか
シバは結婚した事すら連絡していない
面倒くさい事になる前に、切り上げる手だった
「お前、今 何処に住んでんだ?」
「笹塚」
カルパッチョと魚介のサラダだけで
2時間で聞いた事もない名前のボトルが3本開いていた
「なんで、合間にレーベンブロイとか 飲んでんだよ」
「チェイサーよ」
変わってない
シバは、そろそろ 店の前に停めたS1000RRが気になり出していた
「次行こう!」
「済まん、明日早いんだ」
物凄い顔でふくれる顔に気付かぬフリをして、会計に諭吉1枚を置いてさっさと店を出る
「ちょっとぉ」
「日曜日に呼ぶからだ」
「何が駄目なのかなぁ」
「お前じゃない。俺が駄目なだけだよ」
本音が、口をついて出ていた