国の借金1255兆円。
こういうと、ちょっと前までは「借金をしているのは政府で貸し手は国民だ」という話がよくされました。
確かに国民が借りているわけではありませんが、しかし政府の借金は誰が返すのか?
最近こういう話はあまり聞きませんが、代りに出てきたのは「国債は返さなくも良い」という話。
「日本では一般会計の歳出に国債費が計上されていますが、諸外国では会計予算に計上されていない。つまり返済していない。だから国債は返済(償還)しなくも良いのだ」という人が出てきました。
‟諸外国の債務管理政策等について”ご参照
しかし国は違えど償還されない国債などあるわけが無く、もし有ったとしたら無償で金を政府に寄付するようなものです。そんな国債を買う投資機関などあるわけがなく、会計処理が違うだけで当然ながら償還されます。
次に出てきたのが「国債の償還は借換債によって行うので、税金で返しているわけではない」という説。
しかも借換債は債務とみなさないので、そのまま解釈するとただで食べられるフリーランチか打ち出の小槌のような話です。
しかしそんな旨い話があるのか?
国債は「国債整理基金特別会計」で処理され、60年ルールによって償還されます。
例えば600億円を償還するする場合100億円を一般会計からの組み入れ金で償還し、残りの500億円は借換債を市場で投資家に売った資金で償還します。
そしてこの500億円は60年かけて償還し、60年後には全額返済されるので債務と見なさない美味しそうな話です。
借換債(前倒し債)の償還費の原資が何かを考えなければ、日本の借金など気にする必要は無さそうな、未来はバラ色のような話ですが、はたしてそんな旨い話があるのか?
そこで「国債整理基金特別会計」を歳入と歳出(歳入歳出は同額)を見ると、主な歳入は一般会計からの受け入れ、他の特別会計からの受け入れ、そして公債金収入です。
つまり早い話が税金と公債金でまかなっており、フリーランチのような美味しい話ではなく、日本の借金は積み上がってゆくことになります。
この話は経済の専門家のような人でも「諸外国では政府予算で返しているのは利払い費だけで債務返済費は計上しておらず、日本も債務返済費の計上を止めれば歳出が大幅に減り財政赤字が小さくなる」という人がいますが、そんなのはまやかしと言って良いでしょう。
そして現在の借金は1255兆円。
この記事から世界の主要国の政府債務を観ると次のようになります。
【世界主要国「政府総債務残高」】
1位「米国」280,313
2位「日本」131,697
3位「イギリス」46,503
4位「フランス」46,144
5位「イタリア」45,820
6位「ドイツ」35,978
7位「ブラジル」33,350*
8位「スペイン」26,378
9位「カナダ」22,481
10位「メキシコ」15,921
出所:OECD(2020年) ※単位は億米ドル、*は2019年数値
さらにIMF、国際通貨基金の2021年資料によるGDP当たりの政府債務残高は次のとおり。
【世界主要国「政府総債務残高」】
1位「ベネズエラ」307.0%
2位「日本」263.1%*
3位「ギリシャ」198.9%
4位「スーダン」184.3%*
5位「エリトリア」170.8%*
6位「カーボヴェルデ」154.1%*
7位「イタリア」150.9%*
8位「バルバドス」135.8%*
9位「ブータン」134.9%
10位「シンガポール」132.8%
出所:IMF(2021年)
どこまで債務を増やしても大丈夫かという目安は無く、また経済の状況によっても異なりますが、主要国の中で突出したGDP当たりの債務残高は悲しくなります。
これは日本のGDPが増えていないのと円安も原因のひとつで悲しくなりますが、もっと悲しいのは1人当たりGDPで、今年は台湾にも抜かれます。(日本、ついにアジアで最も「豊かな国」の座を台湾に譲り渡す)