2月の国際収支から日本経済の構造変化を見る | 夢老い人の呟き

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いまだに頭が古く固い人は「日本は貿易立国」と思っているかも知れませんが、これはあまりにも古すぎます。

ちょっと前までは「日本は内需国だ」という人もいましたが、失われた30年の間、賃金は上がらず購買力が失われた今の日本は、内需国というには寂し過ぎます。

 

では日本の経済の構造はどのように変化してきたか?

2月の国際収支を見ると貿易収支は1768億円の赤字で、昨年の8月以降貿易収支はほぼ恒常的な赤字です。

一方経常収支1兆6843億円黒字で、3ヵ月連続の赤字は免れました。

これは2兆2745億円第一次所得収支黒字のおかげです。

 

経常収支が赤字となると、円安が進む可能性が強いので、これは朗報と言って良いと思います。

 

 

上のグラフを見れば分かるように、貿易収支は赤字の月が多く、また黒字の月も黒字額は小さく、もはや貿易立国などと呼べる状態ではありません。

そして第一次所得収支は常に大幅黒字で、これだけが日本の経常収支を支えており、日本は第一次所得収支立国と言って良いでしょう。

 

 

では第一次所得収支とは何か?

 

第一次所得収支は対外金融債権・債務から生じる利子・配当金等の収支状況を示すものですが、主な項目は次のとおりです。

  •   直接投資収益:  親会社と子会社との間の配当金・利子等の受取・支払
  •   証券投資収益:  株式配当金及び債券利子の受取・支払
  •   その他投資収益: 貸付・借入、預金等に係る利子の受取・支払

 

 

ではどのように経済の構造が変化しているか、後述の内閣府の‟「我が国経済の対外経済構造の変化」”を見てみましょう。

これを見ればわが国の対外経済の牽引車が貿易収支から第一次所得収支に変っており、中でも近年、証券投資の黒字は停滞しているのに対し、海外子会社からの配当金等を計上する「直接投資収支」が拡大しており、1991年から19年間で19倍に拡大しています。

 

 

これはどういう事かというと、日本企業は日本で作って輸出するのでなく、海外に外国子会社を作り、外国子会社が作り販売して儲け、その外国子会社の配当金や貸付金の利子などによって利益を得ていることを意味します。

 

例えば日本を牽引する輸出産業と思われている自動車産業ですが、自動車は軽など海外に需要の無い車種を除けば、世界生産の7割、8割が海外生産となっています。

 

これによって国内では雇用が失われ、周辺産業も錆びれ、働く人たちによる消費も税収も失われ、国内の経済は縮小してします。

さらに法人税海外子会社からの配当金の還流に対しては、法人税の「外国子会社配当益金不算入制度」により、95%が益金に不算入、つまり課税されません。

 

 

野党の皆さん馬鹿の一つ覚えで「大企業優先を止めろ」といっても、税制を根本的に改めなければグローバル企業ほど実質税率が低い構造は改まりません。

そして税制を改め法人税収や所得税収を増やさずに消費税を廃止すれば日本は破綻します。

 

 

寂しい事ですが、私ごときが場末のブログで叫んでも屁のツッパリにもなりません。

お願いですから野党の皆さん、野党支持者の皆さん、もっと経済の構造や税制を勉強して、日本の経済を立て直せるような提言をして下さい。

ポピュリズムに流されては、より悪い方向に向かうばかりです。

 

以下引用

前略

1 対外収支の構造変化

(経常収支黒字の主因は、貿易収支から所得収支へ)

一定期間における海外との財・サービスの受払(貿易・サービス収支)や海外への投資に伴う受払(第一次所得収支)などで構成される経常収支は、長らく黒字で推移しているが、その内訳は大きく変化している。これまで経常収支黒字をけん引してきた貿易収支は、2000年代半ば以降、徐々に黒字幅が縮小し、2012年から2015年にかけては赤字に転じるなど、常態的な黒字ではなくなっている一方、第一次所得収支の黒字幅は徐々に拡大し、2000年代半ば以降は経常収支黒字の主因となっている。この間、サービス収支は赤字幅が縮小し、近年では収支がおおむね均衡している(第3-1-1図(1))。以下では、貿易収支、サービス収支、第一次所得収支について簡単に概観する

 

ー--中略ー--

(所得収支の黒字は年々拡大)

最後に、経常収支の黒字をけん引している第一次所得収支の動向を確認する。第一次所得収支の内訳をみると、債券利子・株式配当金を計上する証券投資収支の黒字幅は、2000年以降徐々に拡大している。リーマンショック後、各国中央銀行が金融緩和を進める下で債券利回りが低下していることなどから、証券投資収支の黒字拡大テンポは鈍化しているものの、依然として対名目GDP比でみた第一次所得収支の黒字の半分程度を占めている。また、海外子会社からの配当金等を計上する直接投資収支は、海外子会社の設立やM&Aなど企業の海外進出の進展により、その対名目GDP比への寄与が1991年から19年間で17倍も拡大し、2019年は証券投資収支を若干上回る寄与となった(第3-1-5図)。

 

以下省略