「中国製造2025」と「ドイツインダストリー4.0」と「デジタル庁」 | 夢老い人の呟き

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願い望むは願望  夢は寝てみるもの 儚く叶わぬもの
  人に夢と書き儚  夢に人と書き夢人 
    夢と人の中に老いが入り夢老い人  儚く老いる独り言

彼を知り己を知れば百戦殆ふからず。

彼を知らずして己を知れば一勝一負す。

彼を知らず己を知らざれば戦ふ毎に殆ふし。

 

経済の戦いも同様、彼を知れば彼の経験も我がものと出来ますし、その対抗策、より優れた戦略も生み出せます。

そこで中国製造2025とドイツのインダストリー4.0を見てみましょう。

 

 

■中国製造2025

 

ドイツのインダストリー4.0の中国版という人もいますが、少々違い、こちらはより壮大な国家的プロジェクトです。

 

<‟中国製造2025”とは>

2015年に中国政府が発表した産業政策で、中国が「中所得国の罠」に陥らないため、 今後10年で10分野において重点的に産業の高度化を図り、世界の製造強国レベルに持っていくというものです。

中所得国の罠とは:低賃金労働などをテコに発展した国家において、その発展とともに労働賃金が上昇した結果、経済成長が停滞すること

 

10の分野は次のとおり。

  1. 次世代情報技術(IT)
  2. ハイエンド制御工作機械とロボット
  3. 航空宇宙設備
  4. 海洋エンジニアリング・ハイテク船舶
  5. 先端鉄道交通設備
  6. 省エネルギー・新エネルギー自動車
  7. 高付加価値電力設備
  8. 農業用機械設備
  9. 新素材
  10. バイオ医薬・高性能医療器械

中国製造2025”に挙げられた10の重点分野は日本の得意としてきた分野も多く、このまま日本が無策でいれば、いずれ日本が太刀打ち出来なくなることは必至です。

しかし、これらはいずれも軍事技術に直結します。

そのためアメリカは、それらの技術水準がアメリカに追いつけば、アメリカの軍事的優位が脅かされると危惧しています。

アメリカがファーウェーを叩くのも、‟米政府がオランダのASMLのEUV半導体露光装置の対中輸出を阻止”しようとするのも‟こういう背景”があり、テクノロジー戦争といっても良いでしょう。

 

 

■インダストリー4.0

 

インダストリー4.0”は第4次産業革命と言われますが、ドイツにおいて政府や産業界が主導して行う、製造業の国家戦略プロジェクトです。

中国製造2025よりもこちらが先で、一部の人が中国製造2025を中国版インダストリー4.0と呼ぶ所以です。

 

以下引用

「インダストリー4.0」とは「第四次産業革命」を指し、ドイツにおいて政府や産業界が主導して推進する製造業の国家戦略プロジェクトです。製造業におけるコンピュータの活用に重点を置いており、AI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)といったIT技術を積極的に取り入れて、製造業を改革することを目指しています。

 

インダストリー4.0には4つの設計原則があります。1つ目は「相互運用性」(Interoperability)で、機械やデバイス、センサーと人間を相互に接続し、通信を行うことです。2つ目の「情報の透明性」(Information Transparency)は、基本データによって実世界の仮想モデルを作成し情報を解釈可能にすることを指します。3つ目の「技術的アシスト」(Technical Assistance)とは、人間にとって危険または困難な課題を支援することです。4つ目の「分散的意志決定」(Decentralized Decision-making)は、観測データをサイバー空間で定量的に分析し、意思決定を自律化させることを意味します。

 

インダストリー4.0とは、このような具体的な原則にもとづいて推進されている製造業の大きな方針なのです

 

以下省略

 

文章で書かれても理解し辛いですが、言い出しっぺのシーメンスのこの方の説明が一番分かりやすいと思います。

長い動画ですが、前半、いえ、始めの数分だけ聞いても参考になると思います。

 

 

ちなみにシーメンスといえば、昔通勤で乗ったこの電車を思い出します。

知らない人も多いと思いますが(普通の人は知らんにひひ)、この電車のファンは多いです。

 

 

 

 

■デジタル庁

 

さてデジタル関連法案が可決し、鳴り物入りでスタートするデジタル庁ですが、順番があべこべの感じがしませんか?

 

まず‟インダストリー4.0”や中国製造2025のようにしっかりしたビジョン、国家戦略プロジェクトを発表し、そのための法案を練り、組織をスタートさせるのが一般的な手順だと思います。

 

しかし、肝心のビジョンも戦略プロジェクトも無く、DXやら何やら分けの分からん言葉が一人歩きし、わけの分からん法案が成立し、デジタル庁なるものが出来るような印象を受けます

経産省の施策を読んでもターゲットは何なのか分からず、具体性に乏しく産業施策というよりもその前段階のようで、またすでに周回遅れの感を受けます。

 

昔、日本がイケイケだった頃の官僚は優秀だったと思います。

しかしB層をターゲットにした小泉選挙で、役人なんか要らん、公務員は少なければ少ないほど良いと刷り込まれ、国家主導の産業プロジェクトなどできない国になってしまったのでしょうか?

 

経済産業省 令和3年度デジタル関連施策

経済産業省 商務情報政策局総務課 政策企画委員
守谷 学 氏

 

 新型コロナウイルス感染症が感染拡大する中、この1年間でビジネスパーソンとデジタルの関わりも様相が変わり、いかにデジタルを活用して接触・対面を減らしていくのかが大きなテーマとなっています。
 本日は政府が進めるデジタル庁の取組みから、経済産業省のデジタル関連施策についてご紹介します。

日本のデジタル化の現状と課題

 コロナ禍において、行政における様々な分野でデジタル化への課題が浮き彫りになりました。
 他国が飛躍的に行政手続きのデジタル化やデジタルIDの導入を進める一方、日本においては旧来型のオンライン化に留まっている現状があります。マスクの供給状況や物資の備蓄状況等をもっとシステマティックに管理できたのではないか、また各種給付金の申請手続きにおいても、サイバー空間上での企業・個人双方の実在を証明するためのプラットフォームが整備されていれば混乱を防げたのではないか、など、国と自治体でのシステム統一化、認証基盤の整備が喫緊の課題となっています。
 また、テレワークの持続的な取組みや押印のデジタル化、ペーパーレス化の普及なども課題として挙げられます(図1)。

図1.新型コロナウイルス感染症拡大により浮き彫りになったデジタル化への課題

 

図1.新型コロナウイルス感染症拡大により浮き彫りになったデジタル化への課題

 

行政のデジタルトランスフォーメーション(DX)

アフターコロナのデジタルガバメント

 行政サービスにおけるアフターコロナの社会様式には、デジタル技術の活用が不可欠です。これまでのようなPDF化や個別業務ごとに実施されていたオンライン化に留まらず、手続き効率化による利便性の向上や、データの利活用で支援・規制の高度化を図ること、EBPM(Evidence-based Policy Making、エビデンスに基づく政策立案)による付加価値向上が必須です。
 今後はより一層、官民のデータ連携によってシステムの自動化を図り、ワンスオンリー、ノンストップなガバメントを目指す必要があると考えています。

デジタル庁創設に向けて

目指す姿と課題

 昨年12月25日、政府のデジタル推進の実行部隊として、本年9月にデジタル庁を発足するにあたっての基本方針がとりまとめられました。これにより、これまで内閣官房にあった機能をデジタル庁に移管させ、各省庁が分散して行っていたデジタル投資の総合調整(勧告権を含む)等を行っていきます。
 デジタル庁では、企画立案から、国、地方公共団体、医療や教育などの準公共部門等の情報システムを統括・監理します。重要なシステムについては集約的に自ら整備することで、ノウハウを蓄積し行政サービスの質を抜本的に向上させます。また、国、地方、民間との間でのプラットフォームの共通化やシステム連携の強化など、各々で行ってきたデジタル関連施策の総合運用も標準化し、実施します。

目指すビジョンとデジタル社会形成のための基本原則

 デジタル庁創設に伴い、目指すビジョンとして以下を策定しました。

「デジタルの活用により、一人一人のニーズに合ったサービスを選ぶことができ、多様な幸せが実現できる社会~誰一人取り残さない、人に優しいデジタル化~」

 管理のためのデジタルではなく、国民一人一人をエンパワーメントしていくデジタル社会の実現を目指します。
 なお、日本のデジタル社会を形成するための大方針として、10の原則(図2)を定めました。

図2.デジタル社会を形成するための基本原則(案)

 

図2.デジタル社会を形成するための基本原則(案)

 

デジタル庁の業務

1.国の情報システム
2.地方共通のデジタル基盤
3.マイナンバー
4.民間のデジタル化支援・準公共部門のデジタル化支援
5.データ利活用
6.サイバーセキュリティ
7.デジタル人材の確保

 デジタル庁が上記業務を担う中、各省庁の役割も変化します(図3)。一部各省庁の立場からコミットする業務をのぞき、国の情報システム関連予算に関しても一括してデジタル庁に計上していく形になります。

図3.デジタル庁の業務/予算のイメージ

 

図3.デジタル庁の業務/予算のイメージ

 

経済産業省におけるデジタル関連施策

法人デジタルプラットフォームの構築

 これまで経済産業省が提供してきた、各種手続きなどのプラットフォーム構築もデジタル庁に移ります。法人の行政手続きに必要な共通機能を特定・開発し、民間サービスとも連携することでエコシステムの構築も進めており、すでに発足を見据えたシステム全体の見直しと標準化整備、段階的なデジタル化に向けて開発が進んでいます。

クラウドサービスの利用推進とセキュリティ評価制度(ISMAP)

 政府の情報システムの改革を図る中で柱となっているのが、オンプレミスで行っていた整備をクラウドサービスに移行する「クラウド・バイ・デフォルト原則」という考え方です。
 他方で政府が調達に際して民間のクラウドサービスを活用するにあたっては、セキュリティやシステム品質などの確認を行う必要があることから、セキュリティ基準の明確化、共通要件を定めるためのセキュリティ評価制度を導入しています。各省庁が各々に評価を行うのではなく、評価基準に則って確認を行うことで、積極的なクラウドサービスの利用につなげていきたいと考えています。
 この仕組みをクラウドサービスのセキュリティ評価制度(ISMAP)とし、昨年の法改正により一元的に管理・運用できるようになりました。

デジタル基盤整備に向けたアーキテクチャの設計

 これまでは、産業・省庁ごとの縦割りかつモノ中心の産業構造となっていました。しかし、社会のサービス化が進む今、横割りの産業構造でサービスを振興し、安全確保のための適切な規律を保っていく必要があり、デジタルのアーキテクチャに裏打ちされた制度への変更も大きな課題のひとつとなっています。
 そこで、技術の発展によって進歩するサービスの総合運用性を担保するために、どのように定義し、制度化するかを検討・推進するための「デジタルアーキテクチャ・デザインセンター」を情報処理推進機構(IPA)に設置しました。
 NIST(米国国立標準技術研究所)をひとつのモデルとして、アーキテクチャ設計や標準技術の研究を行う機関として、「ドローン・自律移動ロボット」「ヒト・モノ・情報の流れの最適化」「システム全体の安全確保」の分野に分け、デジタル市場の基盤整備を進めています。
 同センターは、国際的な連携も進めながら、業種を横断した標準化を行う専門機関として基礎検討等を推進し、新たなデジタル社会の実現を目指しています。

サイバーセキュリティ対策について

 この1年、政府・民間ともにオンラインへの対応が急務となり、一方でサイバー攻撃の隙が多く生まれた年でもありました。特に電子メールを媒介して感染を広げるマルウェア「Emotet」による被害の相談が急増しており、その対策が国際的にも大きな課題となっています。
 また、VPNの脆弱性をついた攻撃による認証情報の大規模流出、ランサムウェア攻撃(二重脅迫)、海外拠点経由の攻撃なども増加しています。海外拠点を持つ企業においては、サイバーセキュリティを踏まえた上でのシステム統合、グローバルガバナンスの確立が不可欠です。リスクを評価し適切な防御策の選択が不可欠なため、コンプライアンスの面からも経営者がリーダーシップをもって推し進めていただきたいと思います。
 そんな中、経済産業省では、大企業と中小企業がともにサイバーセキュリティ対策を推進するためのチーム「サプライチェーン・サイバーセキュリティ・コンソーシアム」を立ち上げました。基本行動指針の実践と対策を業界ごと、企業の規模、地域などに分けそれぞれ検討を進めています。

特定高度情報通信技術活用システムの開発供給及び導入の促進に関する法律(5G投資促進税制)

 サイバー空間における5G、ドローンなどのデジタル社会を支える基盤システムの安定供給に関しても国として担保する必要があります。安全に安定開発供給ができる事業者を国が認定することで、この事業者からシステム・製品を導入した事業者に関しては税制などの支援措置を受けることが出来るよう、昨年、制度整備を行い、新たな税制を導入しました。このスキームを活用して社会基盤となる5G等社会投資の供給をいっきに加速させたいと考えています。

企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)

 2018年に公開した「DXレポート」では、2025年をDXの分水嶺(2025年の崖)とし、ここまでにDX体制、推進が進んでいない企業においては、グローバルにおける競争力に大きな差が出ると警鐘を鳴らしています。2025年の崖は、予期せぬ新型コロナウイルス感染症のまん延により前倒しに進んでいます。企業はDX推進指標の公表、取組みを発信する必要があり、経済産業省はこれを後押しする税制の実現に向けて取組みを続けています(図4)。
 自社がDX推進においてどのポジションに位置するのかを知ることが必要です。クラウドシステムの移行にかかる初期費用、ソフトウェア購入費なども税制の対象要件となっており、ぜひ新たな税制の活用も検討してほしいと思います。
 昨年11月に公表した、企業のデジタル経営のために実践すべき事項をまとめた「デジタルガバナンス・コード」、「DX認定制度」もご活用ください。

図4.経済産業省「DX推進施策の展開」

 

図4.経済産業省「DX推進施策の展開」

 

デジタル人材の育成

 クラウド、IoT、AI、セキュリティなど新しいデジタル社会における高レベルの人材を育成するため、経済産業大臣認定の講座「第四次産業革命スキル習得講座認定制度」を開設しました。受講の際の給付金の支給や受講をさせた企業への助成金の支給もあり、またオンライン講座も多く用意されています。
 また、エンジニア以外の方向けにも、幅広くAIやデータサイエンスを無料で学べる民間講座「巣ごもりDXステップ講座情報ナビ」も開設しています。ぜひ今後の人材育成に活用してください。

以上