ある経済評論家が「日本の1千兆円の借金など嘘」といっておりました。
これは以前からよく言われていたことですが、しかしこれまでは「日本の借金、つまり国債を買っているのは日本国民だから貸し手は国民、従って日本に借金など無い」という論旨で言われてきました。
例えば第二次、第三次安倍内閣、菅内閣の財務大臣である麻生太郎氏はこのように仰っております。なんか国会答弁とは一致しないように思いますが
しかし今日聞いた経済評論家の話はそれとは違い、「お金を発行すれば通貨発行益が出るから、どんどん通貨を発行すれば良く、日本に借金など無い」という趣旨です。
そしてその通貨発行益は「1万円札を発行するのにかかるコストは10円。だから9990円の通貨発行益が出る。よってどんどんお札を刷れば良く、日本に借金など無い」というものです。
しかし、これは償還不要の政府紙幣でないと当てはまりません。(明治までは政府紙幣がありましたが、現在は政府紙幣ではなく日本銀行券)
ここで問題となるのは「通貨発行益」ですが、封建時代から、貨幣を鋳造していた時代から使われてきた“シニョリッジ”に基づいて考えればそうなりますが、現在の管理通貨制度では紙幣を発行できるのは日本銀行のみで、日銀が国債と引き換えに紙幣を発行し、政府は国債を償還しなければなりません。
従って日銀は国債の利息収入を通貨発行益としています。
出典:https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/outline/a24.htm/
多くの人が日本政府は通貨の発行権があるのだから、どんどん紙幣を刷れば良いと言いますが、現在の法律では紙幣を発行できるのは日銀だけで、政府紙幣は発行できません。
通貨発行の法的根拠
日本銀行法 第四十六条
- 日本銀行は、銀行券を発行する。
- 2 前項の規定により日本銀行が発行する銀行券(以下「日本銀行券」という。)は、法貨として無制限に通用する。
政府紙幣は償還不要で債務になりませんが、日本銀行券は国債が債務となり、国債を償還しなければなりません。
従って1万円札は印刷コストが10円でも発行益は9990円ではなく、国債の利息(表面利率0.1%)となる・・・・と私は考えており、日銀もそのように書いています。
政府紙幣については現在発行の根拠となる法が無く、また国債を日銀が直接引き受けることも財政法第5条で禁じられています。
出典:https://www.boj.or.jp/announcements/education/oshiete/op/f09.htm/
従って現行法下では政府は国債を発行したら金融機関に買ってもらい、日銀は金融機関から市中の国債を買って紙幣を発行します。
償還不要の政府紙幣を発行することも、日銀が直接政府から国債を買って、どんどん紙幣を発行することもできないということになります。
なお、日本の一般会計の歳出の約1/4は借金の返済である国債費です。