MCASと呼ばれる失速防止のための安定化システムの誤作動により2件の墜落事故を起こし、運航停止となっているボーイング737MAX8 。
これに対しボーイングは安定化システムの効力を制限する修正プログラムを開発し、2件の事故のようなイベントを防ぐことができると発表していました。
以下“Boeing presents MCAS fix to pilots, regulators and media”より引用
- 修正プログラムでは、フライトコントロールシステムは両方のAOAセンサー(迎角センサー)からの入力をフライトコントロールコンピュータ(FCC)に送られる前に、ADIRU(Airdata Inertial Reference Unit)で比較し、フラップが上がった状態で5.5度以上ずれると、MCASは無効となります。
- また不作動のMCASについてパイロットに警告するために、Primary Flight DisplayにAOA Disagree Alertを表示します。
- MCASが不作動で、AOAの不一致が飛行中に10秒以上かつ10°以上異なる場合、有効な迎え角が失速に近いしきい値(しきい値は速度および他のデータに依存)を超えるとMCAS機能が作動します。
- しかし、MACSの介入中または介入後に、パイロットがノーズダウンを止めるためにトリムすると(上図①)、それ以後は作動しない。
- MCAS機能のトリムの量はパイロットが昇降舵で機体を制御できる限界を超えないよう制限します。
ところが、6/27日付CNN“New flaw discovered on Boeing 737 Max, sources say”によるとアップデート後のテストで問題が見つかり、さらに就航は伸びそうです。
この記事によるとFAAのパイロットによるシミュレーターテストで、マイクロプロセッサーの故障により機首下げを起こす可能性があることが発見されました。そして、それはほんの数秒ではリカバーする事は出来ず、アンリーズナブルなリスクであるとしています。
そのためFAAの再認証は遅れ、ボーイングのエンジニアはソフトウェアの再プログラミングで解決できるか、マイクロプロセッサー自体の交換が必要となるか決定しようとしています。
いずれにしても同機種の運航再開は、また大幅に遅れるのではないかと思います。
しかもソフトウェアアップデートによる方法は誤作動を防ぐという根本的な対処ではなく、誤作動が起きてもパイロットが対処できるという対症療法です。誤作動の原因となった二つしかないAOAセンサー(対気迎角センサー)に3RDセンサーを設け、誤作動を防ぐよう改修した方が良いような気がします。
以下おまけです。
“I CAN'T CONTROL IT”・・・“I CAN'T CONTROL IT”・・・
PULL UP・・・・・PULL UP!(Ground Proximity Warning System:地上衝突警告システムの「引き起こせ」・・「引き起こせ」との警告音です)
“OH MY GOD”!!! 合掌・・・・・・ (-人-)
B737MAXは従来型のCFM56エンジンよりも大型で燃費性能が良いLEAP-1Bエンジンが採用されました。
このためエンジンのナセルが大きくなり、地面とのクリアランスを確保するためにエンジンが前方かつ少し上方に取り付けられました。(下図参照)
つまり大きくなったエンジンナセルがより前方に付きましたが、この空力的影響がMCASが必要となった理由です。
出典:B737 MAX: Changes To Airframe And Systems
【MCAS(失速防止装置)が必要となった理由】
エンジンのナセル(カウリング)は通常揚力を発生しません。
B737MAXも通常の飛行では、エンジンは揚力を発生しません。
しかし、何らかの理由で操縦士が航空機を激しく操縦し、約14°の失速角に近い迎え角を発生させると、エンジンナセルが揚力を発生させます。
それはピッチアップモーメントとして働き、対気迎角:アタック角(AOA)が高いとB737MAXのピッチの安定性が不安定になります。
最も難しい状況は、操作のピッチ比が高いとき(ピッチアップの速度が速いとき)で、航空機はピッチアップの慣性力によりAOA(迎角)が過度となり、失速する可能性があります。
そのためAOAが高いときのB737AXの、低いピッチ安定性マージンによる失速を防ぐために、ボーイングはMCASを導入しました。
図出典: FAA evaluates a potential design flaw on Boeing’s 737 MAX after Lion Air crash