水道民営化、コンセッション方式は? | 夢老い人の呟き

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再公営化が世界のトレンドといわれる水道事業。

水道料金が高騰した、水質が悪化したという事がいわれていますが、厚労省が調査したのはたったの3件だけ、これで民営化の問題点が把握できたのかという疑問が呈されています。

 

水道「民営化」の海外失敗例、調べたのは3例のみ

以下引用

 政府が成立を目指す、水道事業を「民営化」しやすくする水道法改正案に関連し、海外で民営化の失敗例が相次いでいる問題で、公営に戻した海外の事例を、厚生労働省3例しか調べていないことがわかった。調査は2013年に実施し、07~10年の事例だった。再公営化事例は00~14年に35カ国で180件あったとの報告もあり、野党側は再調査を求めている。

 

以下省略、全文は“水道「民営化」の海外失敗例、調べたのは3例のみ”をお読みください

 

テレビのワイドショーに出てくるゲストのコメンテーターは海外の失敗事例に対し、「そういう例もあります」とごく一部の例で大勢は上手くいっているかのような言いぶりをしますが、これはひどい実績といって良いでしょう。

 

これから日本はコンセッション方式で水道事業の民営化をしようとしていますが、コンセッションとはどのようなスキームでしょうか?

私には資金難にあえぐ自治体が資金繰りから逃れられ、水道事業に関わる人員を削減できるメリットはありますが、その負担は住民が負い、後々大きなツケが回ってくるように思えます。

 

 

コンセッション方式とは

 

コンセッションは事業主体である出資者(水メジャーなど?)が特別目的会社(SPC)を作り自治体と契約を交わし、運営権を取得し、実際の運営管理、維持管理等は外注先に委託してサービスを提供し、料金は特別目的会社(SPC)が利用者から徴収する方式です。

 

従って運営権の対価金融機関への返済出資者への配当運営管理・維持管理等の外注費用SPCの利益等は独立採算制で利用者から得る事になります。

 

改正水道法案では、地方公共団体がコンセッション事業を行う場合、事前に国に公共施設等運営権事業に係る許可を申請し、国の許可を得た上で実施することになります。

 


出典:コンセッション/公共施設等運営権制度とは(定義・運営スキーム)

 

1.コンセッション方式では施設の所有権を発注者(公的機関)に残したまま運営特別目的会社として設立される民間事業者(以下、SPC)が行います

  • SPCは、事業主体である出資者発注者とコンセッション契約を締結し、事業を運営していくことだけを目的として設立している特別目的会社です。
  • 出資者は、運転資金やコンセッションフィー(運営権対価)の支払いに必要な資金を出資金という形で、SPCに対して資金提供し、事業開始後、毎年得られる料金収入の中から配当を受け取ります
  • SPCは、運転資金やコンセッションフィー(運営権対価)に株主からの出資金を充てますが、必要な初期費用は巨額になることが多いため、全てを出資金で賄うことはできません。そのため、SPCは金融機関と融資契約を結び、融資を受けることになります。
  • コンセッション方式のような独立採算型の事業については、当該事業の料金収入のみを担保に融資を行うプロジェクト・ファイナンスという形式が一般的です。

2.自治体は事業期間を定めコンセッション事業者に運営権を売却し、その間の運営、設備の維持はコンセッション事業者が行い、水道料金はコンセッション事業者に支払われます。

  • コンセッション契約を締結し、事業期間、SPCに委託する事業範囲、SPCが公的機関に対して支払うコンセッションフィー(運営権対価)の金額利用料金の設定に関する制限(上限金額など)などについて取り決めます。しかし、運営権の対価や利用料金の設定などに対する知見が地方自治体にあるだろうか?コンサルタントやSPCの主導にならざる得ないと思います。
  • 事業期間は通常20年から30年程度が多いようです。
  • SPCの選定は入札で行われることになります。従って入札時だけは競争原理が働きますが、以後は独占事業となります。

3.コンセッション事業者(SPC)は外注先と契約を交わし実際の運営管理、維持管理等は外注先が行います。

 

4.SPC利用料金を直接受け取り、運営に係る費用を回収する、いわゆる「独立採算型」で事業を行う事になります。「独立採算型」事業であるため、SPCが収入と費用に対して責任を持ち、ある程度自由に経営を行うことができます

 

以上、コンセッション/公共施設等運営権制度とは(定義・運営スキーム) を参考/引用させていただきました。

 

 

 

災害時や大規模修繕時は

 

国交省の“「Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism PPP/PFI手法の整理と コンセッション方式の積極的導入のための展開について」”を見ると、建設や施設の全面除去を伴う大規模な修繕や改築は自治体となっていますが、全面除去には至らない大規模修繕や改築については自治体と民間事業者の双方にに掛かっており、負担割合などは分りません。

いずれにしても利益目的の会社ですから、全面除去には至らない大規模修繕や改築などは先送りし、極力SPCの負担を減らそうとする可能性があると思います。

 

また災害にには水道法の改正案には次のように書かれていますが、これも負担割合は分らず、とはいっても一日も早い復旧のためには自治体が負担せざるとえないと思います。

 

 

第三十九条の二 国、都道府県、市町村及び水道事業者等並びにその他の関係者は、災害その他非常の場合における応急の給水及び速やかな水道施設の復旧を図るため、相互に連携を図りながら協力するよう努めなければならない。

 

出典:Ministry of Land, Infrastructure, Transport and Tourism PPP/PFI手法の整理と コンセッション方式の積極的導入のための展開について

 

 

 

水道以外のコンセッション

 

コンセッション方式は何も水道だけではありません。

 

北海道の7空港”をはじめとする“地方空港管理空港”、“愛知県有料道路(8路線)”をはじめとする道路など、これから日本のインフラは民営化、特にコンセッション方式の導入が進むのではないかと思います。

 

小泉郵政民営化選挙(話のタネに“スリード社の郵政民営化・合意形成コミュニケーション戦略”ご参照、但し真偽のほどは保証いたしません)以来、民営にすれば安くなると擦り込まれた日本人。

しかし、本来民間企業は利益が目的。

競争相手など無い独占事業、しかも料金は事業者設定となれば料金高騰や品質の低下を招きそうな気がします。

 

 

あれからすでに75日を過ぎていますので世間からは忘れ去られていると思いますが、世界中を震撼させたイタリア北部ジェノバの高速道路の高架橋崩落

隣国フランスとジェノバを結ぶ高速道路が通るこの高架橋は、高さ約50メートル、長さ1.2キロのつり橋で、数十年にわたり海風にさらされ、徐々に腐食が進んでおり、高架橋の下で暮らす住人は、長年この橋がぼろぼろの状態だと知っていました。この橋から、これまで破片が住宅や車に落下し続けており、事故発生の1カ月前には、住民が高速道路の保守を担当するジェノバの責任者と会合を持ち、対応を質問していました。


 

この橋もコンセッション事業者アウトストラーデ・イタリア が運営する民営でした。

そしてイタリアは今有料道路の国営化を検討しているが、これに踏み切った場合、政府債務が最大94億ユーロ(約1兆2000億円)増えます。

 

結局最後のツケは巨額なものとなります。

 

この橋が大規模修繕が必要だったのは明らかですが、建て替えが修繕か、その判断や責任は国にあるのか、コンセッション事業者にあるのか・・・・・。

国は建て替えを避けてコンセッション事業者に修繕させようとし、ゴンセッション事業者は修繕費をなるべく抑えて国に建て替えさせようとするような、両者がなすり合うような事は無かったでしょうか?

 
日本でも老朽化し大規模修繕が必要になると、運営権者であるコンセッション事業者と所有者である国や自治体の、責任の押し付け合いが起りそうな気がします。