ちょっと気になる日中通貨スワップ協定 | 夢老い人の呟き

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最近新聞の片隅にちょこっと載った日中通貨スワップ協定。

 

ニュースの扱いが小さい割にとても重要な事らしい・・・・「なぜ中国を助けるのだ!」というような怒りの声もありますが・・・・・

親中派にだまされるな 「日中通貨スワップ協定」は習氏の尻拭い

以下引用              ーーー前略ーーー

窮地に立つ習政権が頼りにするのが世界最大の債権国日本である。グラフは中国の対外債務と邦銀の対外融資の推移である。中国は対米貿易黒字や外国からの対中直接投資を通じて外貨をためてきたが、海外企業買収や資本逃避のために外貨流出も激しい。そこで外債発行や銀行借り入れを通じて対外金融債務を急増させている。

 それに最も貢献しているのが日本の金融機関だ。邦銀は10年間で国際金融市場に1・36兆ドル資金を供給してきたのに対し、中国は海外からの借り入れを1・4兆ドル増やしている。親中派の経団連や財務・経産官僚、日銀は日中通貨スワップ協定締結が日本企業や邦銀のためになると言い立てるが、だまされてはいけない。それは習氏の尻拭いなのだ。

 

 

しかし、この協定は中国の利益の方が大きいかというと、どうもそれは違うように思います。

といってもこれを簡単に説明するような知識はありませんので、これまでのニュースを順を追ってみますが、最後に紹介します邦銀のパンダ債も考えますと、どちらかといえば必要性が強いのは日本の方、中国にとっては渡りに船という感じではなかろうかと思います。

 

まずは財務省のプレスリリースです。

平成30年5月9日

財務省

日中首脳会談における日中金融協力に係る合意

 2018年5月9日に行われた日中首脳会談において、日中金融協力について以下の点が合意されました。

  • 中国は日本に対して2000億元(約3.4兆円)のRQFII(人民元適格外国機関投資家)枠を付与する
  • 日中双方は、人民元クリアリング銀行の設置、円‐元の通貨スワップ協定の締結のための作業を早期に完了させる
  • 中国は日系金融機関への債券業務ライセンスを早期に付与するとともに、日本の証券会社等の中国市場参入に関する認可申請を効率的に審査する

 (注)RQFII(Renminbi Qualified Foreign Institutional Investor)

 

 
 
 

次を読むと金融危機時に、日銀が人民銀に円を差し出す代わりに元を受け取り元の資金繰りに行き詰まった邦銀に資金供給という目的が書かれており、これは日本にとっては重要、特にパンダ債を取り扱う銀行にとっては重要だと思います。

05/02Jiji.com

日中、新通貨協定締結へ=融通額3兆円軸に-日銀・人民銀

以下引用

 日中両国の中央銀行である日銀中国人民銀行が、円と人民元を相互に融通し合う新たな通貨交換(スワップ)協定の締結に向け、本格交渉に入ることが2日、分かった。融通額は3兆円規模を軸に検討する。日中首脳会談が9日に東京で開かれる見通しとなり、金融分野でも協力体制の強化を急ぐ。

 

 同協定は、金融危機時に、日銀が人民銀に円を差し出す代わりに元を受け取り元の資金繰りに行き詰まった邦銀に資金供給することが柱。中国は金融市場の整備が遅れており、金融危機など不測の事態が生じた場合、邦銀の元調達に支障を来す恐れがある。

 

 日銀と人民銀は2002年、人民元相場の暴落など通貨危機に備える目的で通貨交換協定を締結したが、尖閣諸島問題をめぐる両国関係の悪化などを受け、13年に失効した。その後、両中銀が新協定をめぐり水面下で交渉を続けてきた。

 

 

 

次に行く前にご参考までに主要国の対外純資産を見るとご覧のようになっています。

出典:http://www.garbagenews.net/archives/2013421.html

 

 

次のロイターには人民元相場の下落に対し、円・元通貨スワップ協定締結で、金融市場に一定の安心感を与える狙いという事が書かれています。

しかし中国の外貨準備高は公称3兆ドル、対外純資産も日本に次ぐ210兆円ですので、さほど影響は無い、というか、もし通貨危機となったら3兆円位では焼け石に水のような気もしますが・・・・・・それにしても米国は凄い叫び

08/22ロイター

日中両政府が通貨スワップの再開検討、3兆円規模=関係筋

以下引用

複数の関係筋によると、日中両政府は有事に中央銀行同士で通貨を融通し合う通貨交換(スワップ)協定を再開する方向で検討に入った。規模は3兆円規模になる見通し。

 

8月末に北京で予定されている日中財務対話などで大枠合意を目指す。融通し合う規模は従来30億ドル相当(約3300億円)の約9倍に拡大する。

 

日中間の通貨スワップは、2002年にスタートしたが、尖閣諸島をめぐる日中関係の悪化によって2013年に打ち切られた。

 

しかし、安倍晋三政権は、今年5月の日中首脳会談で円・元通貨スワップ協定を早期に締結することで合意。今月末の日中財務対話で調整したうえで、10月にも予定されている日中首脳会談で最終的に合意したい意向だ。

 

中国としては、米利上げで資本流出懸念がくすぶり続けるなか、米国との貿易摩擦を受けた景気減速懸念も重なって人民元相場の下落が続き、上海総合指数.SSECは約2年7カ月ぶりの安値圏にある。円・元通貨スワップ協定締結で、金融市場に一定の安心感を与える狙いがありそうだ。複数の関係筋によると、中国側もスワップ協定の締結に強い意欲を見せていたという。

 

中国発の金融ショックは世界経済に大きな影響を与えかねないため、「中国金融市場の安定に資する通貨スワップは、米国も評価するはず」(政府与党関係者)とみられている。

日本政府・財務省は、通貨危機の際にドルに加えて円の引き出しも可能にする通貨スワップの拡充に注力しており、中期的にアジアのドル依存の低減を促す形で域内の金融安定に貢献したい考えだ。

 

 

 

中国にとっても日本との関係を改善したい思いは重々ありそうです。

しかし中国の経済の各分野は政治と結びついているので、注意が必要だと思います。

09/03 THE EPOCH TIMES

日中通貨スワップ協議再開へ 中国、対米貿易戦で日本に接近か

以下引用

中国北京で8月31日、第7回日中財務対話が開催され、中国は日本に対して通貨交換など金融協力に前向きな姿勢を示した。日本接近の背景には、米中貿易戦で米に対抗する力を得るためだとの見方がある。

 

対話には麻生太郎・副総理兼財務大臣、中国の劉昆・財政部長(財務相)、両国の中央銀行や金融監督当局幹部などが出席した。

 

財務省の発表によると、最大の焦点となる日中通貨スワップ協定の再開について、両国の財務相は今年5月の日中首脳会談で「合意事項にかかわる作業を速やかに進める」ことで一致した。両国が今後、協議を一段と進めることを示唆した。

 

米ボイス・オブ・アメリカ(VOA)2日によると、麻生氏は日中財務対話について「今までで一番雰囲気が良かった。それが最大の成果だ」と記者団に述べたという。中国当局が通貨スワップの協議再開や他の金融協力に前向きなのは、米中貿易戦の激化で、米に対抗する力を得るために日本への接近を図っているとVOAは報じている。

 

通貨危機や有事に備える日本円と人民元を交換する通貨スワップ協定は2002年に締結された。しかしその後、尖閣諸島問題で両国関係が冷え込み、通貨スワップは13年9月に期限を迎えた後更新されなかった。

 

ロイターの報道によると、今回の日中財務対話で、双方は従来30億ドル(約3300億円)程度だったスワップの交換上限を10倍の3兆円に拡大することで大枠合意した。

 

また麻生副総理は、中国共産党中央政治局常務委員兼副首相の韓正氏、米中通商協議を担当する劉鶴・副首相とそれぞれ会談した。

 

麻生副総理は中国高官らとの会談で、日中関係改善の動きを評価した。両国高官は今後、安倍晋三首相の訪中および習近平国家主席の訪日で意見を交わすとみられる。

 

いっぽう、自民党の二階俊博・幹事長は31日に北京で、王岐山・国家副主席と会談した。

VOAの報道によると、王副主席は「日中友好は両国国民の根本利益と時代の流れに合致している」「日中平和条約締結40周年を迎え、両国の首脳は4つの政治文献で合意した重要共通認識に基づき、相互訪問を増やし、互いの政治的信用を促進し、双方のウィンウィンの関係を拡大するなど、両国関係を正常な軌道に戻して、新たに発展させていく必要がある」とした。

 

二階幹事長は、王副主席に対して訪日を要請した。

 

対米外交を担当する王岐山氏は8月24日、日中友好協会会長で自民党税制調査会最高顧問を務める野田毅氏一行と会見した。会談中、王氏は日中関係改善を前向きに評価した。また、米中貿易戦について、王副主席は野田氏に対して「米中間に貿易摩擦はあるが、貿易戦ではない」と強調した。

 

安倍首相は9月1日産経新聞のインタビューで、日中関係が「完全に正常な軌道に戻った」と述べた。

 

東北大学大学院の阿南友亮・教授はVOAに対して、中国による日本への接近に強い警戒感を示した。阿南氏によると、中国の外交、経済、金融など各分野が政治と結び付いているため、日本企業が中国経済に依存すればするほど、外交上日本の立場がますます弱くなると指摘した。

 

 

 

毎日新聞にはより具体的に両国企業の決済システム安定経済界からの要望という事が書かれています。

10/20毎日新聞

日中通貨交換協定 再開へ 5年ぶり、上限10倍3兆円

 

 日中両政府は安倍晋三首相の中国訪問に合わせ、両国企業の決済システム安定のため円と人民元を融通し合う通貨交換(スワップ)協定を約5年ぶりに再開する方針を固めた26日の首脳会談で合意し、日銀と中国人民銀行が協定を締結する。融通額の上限を日本とアジア各国との協定では最大規模の約3兆円へ拡大する。一方、日本政府が求めていた東シナ海のガス田開発を巡る協議は、再開の合意に至らない見通しだ。

 

ガス田協議は見送り

 日中両政府は2002年にスワップ協定を締結したが、12年9月の沖縄・尖閣諸島の国有化による日中関係の悪化で更新されず、13年9月に失効していた。

 

 安倍首相と李克強首相は5月の東京での首脳会談の際、協定再開の交渉に入ることで合意。日中金融当局が融通額の上限などを詰めていた。失効前の上限は30億ドル規模(今のレートで約3300億円)だったが、日中間の貿易額や投資の伸びを踏まえ、約10倍に拡大させる方針だ。

 

 スワップ協定の目的は、金融市場の安定や金融危機対応など、相手国の事情によって異なる。中国については、現地の日本企業がシステムトラブルなどで人民元の決済ができなくなった場合、中国人民銀行から融通を受けた人民元を邦銀経由で企業に提供するような役割を想定している。日中関係改善により、日本企業が対中投資を増やすことも見込まれるため、経済界から協定再開を望む意見が多かった。日本政府関係者は「経済活動には追い風だ。関係改善を印象づける意味も大きい」と説明した。

 

 今回の首脳会談ではイノベーションや知的財産に関する対話の設置でも合意する見通し。東京電力福島第1原発事故以降、中国が続けている日本産農産物・食品の輸入規制に関しても、日本側が求める規制緩和へ最終調整を続けている。

 

 一方、08年に日中が合意した東シナ海ガス田の共同開発に向けた協議は、再開が難しい状況だ。5月の首脳会談でも協議再開を目指す方針を確認したが、中国国内では08年の合意に対して「日本に譲歩し過ぎた」という不満が根強い。日本側からも「中国政府にとって協議再開はリスクが大きい」との見方が出ている。

 

 尖閣諸島の領有権を巡る両国の対立も抜本的な解決の見通しが立っておらず、首脳会談では「東シナ海を平和、協力、友好の海とする」ことなどの確認にとどまりそうだ。両政府は、当面は経済分野を中心に関係改善を進める方針だ。

 

 

 

パンダ債は中国国内で非居住者が発行する人民元建て債券、オンショア人民元建て債券の通称ですが、すでに三菱東京UFJ銀行とみずほ銀行が発行しており、今後他の邦銀も続くのではないかと思います。

こういう背景を考えると「同協定は、金融危機時に、日銀が人民銀に円を差し出す代わりに元を受け取り元の資金繰りに行き詰まった邦銀に資金供給することが柱。中国は金融市場の整備が遅れており、金融危機など不測の事態が生じた場合、邦銀の元調達に支障を来す恐れがある。」「現地の日本企業がシステムトラブルなどで人民元の決済ができなくなった場合、中国人民銀行から融通を受けた人民元を邦銀経由で企業に提供する」という通貨スワップ協定の必要性が分かるように思います。