中国の旅客機8000メートル急降下 馬鹿除けは難しい | 夢老い人の呟き

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航空機に限らず様々な分野で起きる事故や不具合事象の原因の多くは誤操作、ヒューマンエラーによります。

そこで設計者はオペレーターが考えなしにそれを扱っても深刻な状況に陥らないよう、誤操作を防ぐためにフールプルーフという設計思想で設計しますが、日本語でこれを馬鹿除けにひひといいます。

 

航空機のような安全思想の徹底した乗り物では特にフールプルーフの設計が徹底していますが、それでも人間というものは何をしでかすか分からず、馬鹿除けの網を掻い潜っておバカな事をやらかします。

 

まずはこのニュースをご覧下さい。

7月10日、中国国際航空のCA106便(ボーイング737型機)、高度11000mでの出来事です。

このニュースでは3500mまでと言っておりますが、日テレニュースでは3000mまで8000m急降下と言っております。

 

ニュースで言っている、副操縦士が誤って操作したしたスイッチは操縦士の頭上にあるパネルの赤枠で囲ったエアコンパネルの中にあります。

 

副操縦士がタバコの煙が客室内に流れないように止めようとしたのは、赤い矢印のリサーキュレーションファンのスイッチだと思います。

ところが実際にオフにしたのは赤枠で囲ったPACK スイッチかBLEEDスイッチのどちらかです。

 

PACKスイッチは機内に温度調節と客室内を与圧する空気を送り込むエアコンパックのスイッチです。

※エアコンパックはエンジンのコンプレッサーからの.圧縮空気で作動し、高圧で熱い圧縮空気をさらに圧縮し、より高温となった圧縮空気を熱交換機で冷却した後に断熱膨張させて、低温にして機内に送り機内の与圧と温度調節を行うものです。

 

またBLEEDスイッチはPACKの作動元であるエンジンからの圧縮空気のスイッチです。

これらのどちらかをオフにすれば、機内を与圧するために送られるエアコンの送気が絶たれますので、機内は急減圧します。

操縦室内では機内高度の警報が鳴り警告灯が点き、客室内では酸素マスクが出ると共に緊急降下中のオートアナウンスが始り、ちょっとしたパニックになります。

 

フールプルーフのはずではありますが、同じ系統のパネル内に似たような形状のスイッチを配置し、しかも操作方向が同じというのは馬鹿除けの観点では少々足りなかったかな?とも思います。

ちなみにB767以上の機種ではPACKスイッチはロータリースイッチとなっています。

このへんは設計時期の違いがあるのかもしれません。

 

 

しかし、たかがエアコンされどエアコンで、以前にも他のエアラインで誤操作により緊急降下をした事があります。

 

Report: Boeing 737-800 mis-configured pressurization system and emergency descenのライアンエアー( Ryanair )機の例では、このスイッチはエンジンスタート後オートにセットし、機長と副操縦士でチェックリストで確認する事になっています。

ところがPACKスイッチをオフのまま飛行したしたため上昇中に機内が与圧されず、シリアスなインシデントとなりました。

 

 

さらに深刻な結果となったのがヘリオス航空522便墜落事故です。

 

これはCABIN PRESSURIZATION(客室内与圧)のコントロールスイッチ(これは飛行前に必ずオートにセットし、チェックリストで確認します)をマニュアルにセットしたまま飛行したために上昇中に機内の気圧が下りました。

上昇中に客室内高度の警報が作動し、酸素マスクもドロップしたはずですが、それでも上昇を続けパイロットは低酸素症で気を失い墜落し、乗客と乗員あわせて121名が全員死亡しました。

 

 

かくもヒューマンエラーを完全に無くすことは難しいことですが、ヒューマンエラーの背景には航空会社の安全管理、乗員訓練や運航管理などが大きく関わってきます。

航空会社の安全性はどの航空会社も同じと思っていると大きな間違いです。

事故が起きるまでは問題が表面化しませんが。