接続水域 | 夢老い人の呟き

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尖閣諸島周辺の接続水域を中国の軍艦と潜水艦が航行しましたが、どのニュースを見ても「接続水域とは何か?」や領海の通航権を全く説明していないように見えます。

このため「中国の潜水艦が日本の領海を侵犯しているのに、なぜ日本は対処しない?、国際法違反ではないか!、なんて日本は弱腰なのだ!」と怒る人もいらっしゃると思います。

 

私のように記憶力が衰えた人はともかくとして、一昨年の6月、ロシア海軍の軍艦3隻と中国海軍の軍艦1隻が相次いで尖閣の接続水域を通過したことを覚えている人も多いと思います。

下図出典:中国軍艦、接続水域に ロシア艦に続き 日本政府が抗議

 

 

それでは接続水域とは何か、まずは下の図をご覧下さい。

図出典:ニュースでよく見る「領海」や「接続水域」何が違うの?

 

 

領海、接続水域、排他的経済水域(EEZ)については、「海洋法に関する国際連合条約」に定められておりますが、領海(同条約第2部第2節・3節)は上の図のように低潮線から12海里(約22.2km )、接続水域(同条約第2部第4節)は低潮線から24海里(約44.4km)、つまり領海の外側12海里です。

 

 

領海の外国船の通過については「同条約第2部第3節 領海における無害通航」に定められていますが、簡単に要約すると次のようになります。

 

領海

瀬戸内海のように陸の内側にある海(内水と言います)でない限り、外国の船は、安全を害さない範囲で通航する権利があります。しかし、外国の船が勝手に漁業をしたり、密輸を企んでいるようなら、日本の法律に基づいて船長らを逮捕する権利が国にあります。

※詳しくは後述の17条~25条をご参照ください。

 

接続水域

密輸など怪しい船を見つけた場合は、予防的に取り締まることができます。

接続水域は、基本的に公海と同じで、どこの船でも自由に航行してよい場所なのですが、「軍艦」「海警」や「漁政」といった日本の安全保障に問題が生じる可能性のある船に対しては、「領海に近づくな」と警告したり、監視したりできます。

 

 

領海の無害通航(あくまでも無害な「通航」)については後述の17条~25条のように制約がありますが、接続水域については基本的に公海と同じということで、「領海に近づくな」と警告したり外交ルートで抗議する以上の事はしにくいと思います。

しかし公船、ましてや軍艦が侵入すれば沿岸国を刺激する事になり通常は避けるのが普通で、挑発あるいは何らかの意図があったと思いますが・・・・・手強いとは思いますが河野外務大臣の手腕に期待したいところです。

 

蛇足ですが中国共産党員というと「コネ」ばかりと、いい加減な憶測や伝聞ばかりで見くびっていましたが、「NHK NEWS WEB 共産党員とは」によると学業その他優秀な、中国社会のエリート的性格が強まっているとのこと。

それが2016年時点で人口の6%強、 8944万7000人おり、その中で勝ち抜いてきた最高指導部ですから、優秀というか強かで手強いのは当然かも知れません。

 

図出典:https://www.jiji.com/jc/graphics?p=ve_int_china20171024j-02-w430

 

◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇

【海洋法に関する国際条約】
 
第17条 無害通航権
すべての国の船舶は、沿岸国であるか内陸国であるかを問わず、この条約に従うことを条件として、領海において無害通航権を有する
 
第18条 通航の意味
 通航とは、次のことのために領海を航行することをいう。
a.内水に入ることなく又は内水の外にある停泊地若しくは港湾施設に立ち寄ることなく領海を通過すること。
b.内水に向かって若しくは内水から航行すること又は(a)の停泊地若しくは港湾施設に立ち寄ること。
 通航は、継続的かつ迅速に行わなければならない。ただし、停船及び投びょうは、航行に通常付随するものである場合、不可抗力若しくは遭難により必要とされる場合又は危険若しくは遭難に陥った人、船舶若しくは航空機に援助を与えるために必要とされる場合に限り、通航に含まれる。
 
第19条 無害通航の意味
 通航は、沿岸国の平和、秩序又は安全を害しない限り、無害とされる。無害通航は、この条約及び国際法の他の規則に従って行わなければならない。
 外国船舶の通航は、当該外国船舶が領海において次の活動のいずれかに従事する場合には、沿岸国の平和、秩序又は安全を害するものとされる。
a.武力による威嚇又は武力の行使であって、沿岸国の主権、領土保全若しくは政治的独立に対するもの又はその他の国際連合憲章に規定する国際法の諸原則に違反する方法によるもの
b.兵器(種類のいかんを問わない。)を用いる訓練又は演習
c.沿岸国の防衛又は安全を害することとなるような情報の収集を目的とする行為
d.沿岸国の防衛又は安全に影響を与えることを目的とする宣伝行為
e.航空機の発着又は積込み
f.軍事機器の発着又は積込み
g.沿岸国の通関上、財政上、出入国管理上又は衛生上の法令に違反する物品、通常又は人の積込み又は積卸し
h.この条約に違反する故意のかつ重大な汚染行為
i.漁獲活動
j.調査活動又は測量活動の実施
k.沿岸国の通信系又は他の施設への妨害を目的とする行為
l.通航に直接の関係を有しないその他の活動
 
第20条 潜水船その他の水中航行機器
潜入船その他の水中航行機器は、領海においては、海面上を航行し、かつ、その旗を掲げなければならない。

 

21~24条省略

 

第25条 沿岸国の保護権
 沿岸国は、無害でない通航を防止するため、自国の領海内において必要な措置をとることができる。
 沿岸国は、また、船舶が内水に向かって航行している場合又は内水の外にある港湾施設に立ち寄る場合には、その船舶が内水に入るため又は内水の外にある港湾施設に立ち寄るために従うべき条件に違反することを防止するため、必要な措置をとる権利を有する。
 沿岸国は、自国の安全の保護(兵器を用いる訓練を含む。)のため不可欠である場合には、その領海内の特定の水域において、外国船舶の間に法律上又は事実上の差別を設けることなく、外国船舶の無害通航を一時的に停止することができる。このような停止は、適当な方法で公表された後においてのみ、効力を有する。