個別的自衛権と集団的自衛権の狭間 | 夢老い人の呟き

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戦場に行かなくとも良い年齢層が増えると国は好戦的になるという。とはいってもリアルに戦争を体験している70年代以上は違うと思うが・・・などという冗談は別にして、最近盛んにいわれるのは、「憲法学者は日本の安全、防衛を考えていない」というバッシング。
しかしそれは間違いで、日本が立憲国家である以上憲法を遵守するのは当然であり、憲法の枠内で国防がで出来るか否かは真剣に考えている。


私なりにそれを解釈すると、個別的自衛権集団的自衛権は完全に分かれたものではなく、下の二つの図のように、どちらにも含まれる部分がある

その中には下側の図のように、以前は・・・・・物理的に直接日本を砲撃できなかった大砲の時代には集団的自衛権に分類されていたが、直接日本を攻撃できるミサイルの時代になった今は個別的自衛権にも含まれるものもある。例えば日本を攻撃するミサイルを防御するための米国の艦船への攻撃など。


これを個別的自衛権の範囲と考えれば、日本を取り巻く状況の変化に十分対応でき、また他国の戦争に巻き込まれる危険も防ぐことが出来る
一方これを「限定的な集団自衛権」とし、集団的自衛権を容認すると、限定の範囲は曖昧で歯止めが無くなってしまい、他国の紛争に巻き込まれる恐れもあり、国防上マイナスであるという事。











このどちらにも含まれる部分について3つの考え方があるように思う。

集団的的自衛権とラップしない部分しか個別的自衛権と認めないとする考え方。
集団的自衛権とラップする部分も含めて個別的自衛権とする考え方。
 集団的自衛権を行使する例に挙げている事態は個別的自衛権で出来るとする。
個別的自衛権とラップする部分を集団的自衛権とする考え方。

 限定的として集団的自衛権も合憲とする。


今、集団的自衛権が必要として、具体的な例に挙げられるのは、この個別的自衛権と集団的自衛権の狭間

長谷部教授や小林教授は上記のの考え方で、ホルムズ海峡の機雷掃海などは個別的自衛権で行い、集団的自衛権は違憲とする。
安保法制案
で、限定的であれば集団的自衛権が合憲であるとする考え方。
(集団適自衛権が必要であるという前提)



では②と③でホルムズ海峡機雷封鎖について、どのように主張するか見てみます。

WILL7月号に 
朝日、赤旗、民主党、サンデーモーニング、反対派がグウの音も出ない!『安保法制』一問一答35」 という記事が載り(自民党全員に配られたという)、これに小林節教授が日刊ゲンダイで反論しているので、これを紹介します。


<<機雷掃海は個別的自衛権で行うのが正しい >>
引用:

論点17】  
[問]機雷掃海も従来から許されてきた個別的自衛権により可能ではないか。
[答]個別的自衛権の行使は、基本的には、わが国の領域に対する武力攻撃が行われた場合に許容される。外国により他の外国に対する攻撃の一環として敷設された機雷を除去する行為は、個別的自衛権では対処できない。


◇反論
 例えばホルムズ海峡に機雷が敷設され、わが国のタンカーの航行が脅かされた場合、わが国から見れば、全ての国に国際法上認められている無害航行権が侵害されているので、その妨害排除・自由回復のために権利の行使が許されるはずであり、これは、分類上、個別的自衛権である。これならば、これまでの政府見解とその根拠になっている現行憲法に矛盾しない。


これを、ホルムズ海峡でイランと戦っている米軍を支援する集団的自衛権の行使にすると、憲法とそれを根拠に築き 上げられた政府見解に反してしまう。加えて、他国間の戦争に介入(参加)することは、友軍の敵をわが国の敵にしてしまうことで、日本国民を新たな危険にさ らすことになり、得策ではない。

これを単細胞ど素人の私のオツムで解釈すると、停戦後の機雷掃海なら個別的自衛権で、交戦中なら集団的自衛権という事だろうか?


【論点18】  
[問]ホルムズ海峡への機雷敷設により石油の供給が停止した事態で、本当にわが国の存立が脅かされるのか? 過去に経験したオイルショックを思い出せば、それでわが国の存立が脅かされたと感じた人はいなかったはず。
[答]かつての石油ショックをも上回るほど世界経済は大混乱に陥り、わが国に深刻なエネルギー危機が発生し得る


◇反論
 これは、政府側に立証責任があるが、「危機」に至る因果関係が全く立証されていない。オイルショック後の備蓄の増加、代替エネルギーの開発、他のルート からの輸入、3・11大震災に学んだ節約と残存電力の一元管理のノウハウ等を考えると、政府による「危機」シミュレーションはいわば被害妄想の類いに見え る。



【論点19】  
[問]米国防総省のホームページには「非常時において米国の優先は米国民を助けることである。米国公船等に外国人を乗せることを期待しないでほしい」と書いてある。首相が好んで用いる、米軍艦で護送されて逃げて帰って来る日本人母子……という事例はあり得ないのではないか。
[答]日米ガイドライン協議では、米艦が日本人を乗せることはあり得るとしている。


◇反論
 仮に例外的にそのような事例があり得て、その軍艦が第三国から攻撃され、それを自衛隊が援護することは当然としても、それを「集団的自衛権」(他国防衛)だと説明することは間違っている。それは、首相が強調したように自国民(その母子)を守ることであるのだから、むしろ個別的自衛権(自国〈民〉防衛) で説明する方が自然であろう。


:引用終了



小林教授の「
自民党よ、私の反論を聞きなさい/小林 は以下のリンクからどうぞ

<第1回>安全保障環境が厳しいなら専守防衛に徹するべきだ                                      (6月11日)

<第2回>自民党は徴兵制はあり得ないというが信じられない                                      (6月13日)                                                                       

<第3回>「総合して判断」は「一任せよ」と言っているに等しい                                      (6月14日)                                                                       

<第4回>前線から離れた後方支援だから安全という大ウソ                                      (6月15日)                                                                       

<第5回>他国の戦闘行為を減殺する行為は参戦に等しい                                      (6月16日)                                                                       

<第6回>機雷掃海は個別的自衛権で行うのが正しい                                      (6月17日)                                                                       

<第7回>スパイ防止法がある以上、政府の判断を検証できない                                      (6月18日)                                                                       

<第8回>朝鮮半島有事であれば国連決議なしの個別的自衛権である                                      (6月19日)                                                                       

<第9回>海外で後方支援するのは明確な憲法違反だ                     





集団的自衛権の容認については本当に慎重になったほうが良いと思う。
最近南シナ海が姦しいが、米国とフィリピンの間には米比相互防衛条約、米比訪問軍隊協定が結ばれており、集団防衛の同盟国であるが、日本と東南アジア諸国の間には同盟関係は無い。
米国はリバランス政策でアジアに、重心を移すとしているが
米国は中東のみならずロシアとの新・冷戦時代ともいわれ、アジアの軍事力を増す余裕は無い。
そこで南シナ海は
米国と日本、オーストラリアが一緒になって、東南アジア諸国を支援し、東シナ海は日本と韓国が米国に協力しパワーバランスを保つ(<<焦点:米リバランスと符合する防衛指針、不可欠だった自衛隊の役割拡大>>)となっている。
もし個別的自衛権の歯止めを失くしたら、南シナ海で紛争が起きた時、日本はどういう立場になるだろうか?


憲法9条は足枷であると共に、他国の紛争に巻き込まれないための盾でもある。
勇ましく国防を叫び海外派兵するのと、どちらが抑止力となるかはよく考える必要がある。



なお、集団的自衛権が合憲であるとして名前が挙げられた3人の憲法学者は、徴兵制も合憲だとしている。