これも面白い記事だと思う。NAREITによるREITと私募ファンドの比較。
http://www.reit.com/Portals/0/PDF/REITsRealEstateWithAReturnPremuim.pdf

REITへの投資を促したいNAREITの記事なので、若干割り引いてみる必要はあると思うるが、内容はかなり興味深い。

最近の金融危機前のピークまでの17年半という不動産サイクルの期間で見て不動産投資のリターンを比較している。その結果、不動産サイクルの期間で見ると、REITのリターンが私募ファンドを大きく上回るという調査結果である。
コア型(優良資産中心):7.7%
バリュー・アド型(付加価値追求型):8.6%
オポチューニティ型:12.1%
REIT:13.4%

これ以外のところで成程と思うのは、REITの方が低下する期間が短いという点だ。想像するにREITは市場で取引されるため、環境が悪くなると空売りなども起こって価格の低下が急激に起きる。その一方で資金を市場から調達するこも可能なので、最近のように増資による新規資金の導入をはやされると反発も比較的早い。一方で私募ファンドは借入金の償還期限が来るまでは行動を起こさないことも多いので反発が遅い。その間は鑑定で評価されるのだろうが、継続鑑定だと価格は徐々に低下するため、評価額の低下が長引くのだろう。さらに私募ファンドは投資家の合意による増資も可否は不透明だし、時間がかかる。従って価格が低下したままの状態が長く続く、これはどちらが良いというよりは、双方の商品性の特徴を反映していると言えよう。

もう一つ私募ファンドはレバレッジが比較的高いため、市況が悪くなった時に困難な状況に陥り易いという点も日本の最近の私募ファンドの苦境を見るとと納得できる。

そして多分このレポートが要点として最も言いたいことは、通常考えられているように流動性のないファンドの方が安定運用できるので、パフォーマンスが良いという考え方に対する疑問の提示なのだろう。本来REITの方が流動性のプレミアムが付くはずと言われているが、実際の市場ではどうちらかと言うと逆のネガティブなプレミアムが付いてしまうことが多い。この点で見直しを促したいとNAREITは考えているのだろう。

このレポートについて注意する必要があるとすると、
① 私募ファンドについては、実際のファンドの平均値と利用しているのに対して、REITはインデックスを使って比較しているが、この手法は適当なのか?特に1990年頃のREITの市場は極端に小さく、既存のREITはほとんどが90年代の中盤以降に上場している。この点から見ると、1990年という前回のピークからの比較にはREITのインデックスを利用せざるを得ないのだろうが、それは適当なのか?
② オポチュニティ型は不況の転落後に登場し、短期で高いリターンを挙げるタイプの投資である。しかし逆にバブルの局面では投資機会が少なくそれほど残高は大きくならなかったのではないかという疑問がある。こうした前提を考えると、オポチュニティ型のリターンをこうした長期で考えることが本当にできるのか?
③ REITのリターンはインデックスを利用して計算されているので、投資家が実際に個別銘柄に投資することを考えると、例えば希薄化の影響などを十分反映していないと想定される。
NAREIT(全米不動産投資信託協会)でなかなか面白い記事が紹介されていた。米国でのブラインド・プール型のREITについての記事である。
http://www.reit-digital.com/reit/20100506#pg25

米国では金融危機の後、REITのバランスシート調整のための増資ラッシュが起きた。同時に新規公開も増えている。その新規公開で注目されているのが、取得する物件を特定せずに資金を集めるいわゆるブラインド・プール型のREITである。

こうしたプラインド・プール型が注目されたのは、不動産価格が下落した状況で新規に物件を取得するために、投資リターンが高いと想定されること、更には過剰な負債など既存REITが直面している過去の負の遺産がないことにあるようだ。運用会社の経営者の実績だけを基準に新規公開で数億ドル単位の資金が集まるというのがすごい。

今後の課題はこうして資金を集めたブラインド・プール型のREITが実際にどこまで適正な価格で物件を取得できるかだろう。これらのREITはCMBS市場の崩壊で満期に借り換えができない不動産が続出することから、そうした不動産を不良資産としての価格で安く手に入れることを想定している。

しかし本当にこうした有利な価格で不動産を取得できるのか疑問の声もあるようだ。記事によると金融機関は政府から多様な援助を受けているために、こうした不良資産を抱え込んでしまい、不動産が市場に放出されないのではないかという懸念も挙げられている。もしそうなると、出てくる物件が取りあいになって価格がつりあがってしまうことになり、想定したようなリターンは実現できなくなる。過去に前回の不動産不況の際に大規模な投資をして有名になった墓場のダンサーことサム・ゼル(エクイティ・オフィスなどの創業者)は最近、未だ「不良資産の大量放出が起きていないので投資の機会がない。」というコメントを出している。
http://www.anthonyhomer.com/sam-zell-pulls-no-punches-with-uli-crowd/

また個人的な印象として不良債権としてのリターンは長期では維持できない。賃貸市場が下落している状況では、いずれ賃料の更改で収益性は下がるはずだからである。その点も懸念材料だろう。

しかし、逆に考えると、こうしたブラインド・プール型のREITが多数上場してきたことで、価格の暴落は避けられるという安心感が広がり、それで不動産市場のセンチメントが良くなり、暴落が避けられているとも考えられる。その意味では今後の動向に注目してみたい。


日本生命が旧AIGビルを建て替えるとの記事を見た。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/news/20100514-OYT1T00209.htm

最初の印象はこの時期に?という感じである。先日の三鬼商事のデータでは東京のオフィス市場の状況は改善していない。空室率は8.82%に達し、特に新築は40.18%とかなり悲惨である。しかも年内にさらに22棟も竣工するらしい。
http://www.e-miki.com/data/download/sokuho/C1005_TO.pdf

米国だったらこの環境で新しいビルを建てようというデベロッパーはいないのではないかと思う。というよりはファイナンスが付かないので進まないだろう。米国のデベロッパーは著名なところでも組織は小さく、開発の種銭自体をファンドの形で富裕層や機関投資家から集める位だ。残りは金融機関からのノンリコース融資という形が圧倒的だ。

この金融機関の開発事業向けのファイナンスが実行される条件としては、総事業費に対して一定の比率での種銭存在と、総賃貸可能面積に対して一定の比率でテナントが確定している事が必要となる。マーケットの状況が悪いとテナントもコミットしたがらないが、一方で金融機関の求めるテナント確保の比率は高くなる。だから結局はファイナンスが付かず開発が進まないことになる。そこで一斉に新規供給が止まるのでマーケットの回復の契機になり易いということになっている。もっともブレーキに効きが良すぎるので、開発事業への投資額の振れ幅が大きくなり、建設関係の労働者の雇用などへのインパクトが大きくなるというデメリットもある。

いずれにしても今回の日本生命のように自己資金で開発するという投資家はまずあまりいない。開発中は資金がリターンを生まないし、ファイナンスをつけないと投資効率が悪いから、こうした投資手法は米国ではあまり許容されない可能性が高い。ところが日本では金融機関は借り手だけを見て、そこが優良な借り手と判断すると市況とはあまり関係なく貸す傾向が強い。だから結構今でも新たなビルの建設が進み供給過剰が進んでいる訳だ。

今回の件についていうと、もちろん旧AIGビルの立地は良いし、テナント確保の目安の有無なども良くは分からない。また竣工が4年後なのでその段階の市場の環境がどうなっているかは予想しにくい。逆にこういう逆張りの方が竣工時に供給が少なくて成功する可能性も十分ある。その辺りのリスクを取れるのはさすが日本生命ということでお手並み拝見である。

しかし新規供給に関しては、日米の良いところを取って、もう少し市況へのインパクトのない形はできないものだろうか。