最近中国の住宅市場の崩壊に関する記事が結構でている。

春山昇華さんがツイッターで紹介しているJB Pressによるエコノミストの記事の翻訳
http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/3622

その春山さんのブログのエントリ
http://blog.livedoor.jp/okane_koneta/archives/51510205.html

ツイッターで愛読させて頂いている@TrinityNYCさんのブログ
http://wholekernel.blogspot.com/2010/06/6.html

個人的には現在の不動産価格は、特に都市部についてはバブルだと思う。最大の理由は単純で、現在の価格が中国の一般的な国民には買えない水準の価格になっていること、ということは多分賃貸でも回らないレベルにあるはずで、こうした状況は国民の不満をためる。従って政府としてその価格をを支えることは、過去の歴史を見ても困難だと思う。

ただ問題はどこまで落ちるかとその後の回復だろう。日本の90年代との違いは、中国全体としての住宅は不足しているということと、中国の経済成長の進展で今後所得が伸びることが期待できるという点であろう。この点から考えると、低下はある程度抑えられる可能性がるし、その後再び上昇も期待できるのだろう。このエコノミストの記事が引用する日本銀行のリサーチにもあるようには中国は日本の70年代だという書き方をしている。

日本銀行のリサーチ
http://www.boj.or.jp/type/ronbun/rev/data/rev10j03.pdf

懸念材料は、上記の日銀も指摘しているように、中国国内の金融緩和で余ったホットマネー、海外の投資資金がかなり流入していることだろう。このうち海外の資金は中国への影響は少ないはずだが、国内の資金は中国の銀行に不良債権として悪影響を与える可能性はある。

気になるのは、議論の多くが住宅の問題に集中していて、商業用不動産のついてのコメントがあまりないことだ。住宅に関してはエコノミストの記事がLTVの低さを指摘していたり、前述のファンダメンタルズを考えると未だ下げに限界があると思うのだが、商業用不動産についてまとめた記事があまり見当たらない。例外としてはこういう記事もあるのだが…
Bloomberg 上海の銀行、商業用不動産ローンの不良債権化が加速-中国銀監会
http://www.bloomberg.co.jp/apps/news?pid=90920010&sid=akQAEmt4l3yw
上海などで空室率がかなり高いといった情報も聞くのだが、情報があまり見当たらないのだ。ここがとても気になる。

それはそうと先日中国でのREITの研究をしているというエントリを書いたが、これは今後の対策で不動産が極端に下落した時の買い支え役としての期待もあるのだろうか。そうだとすると、最悪(あるいは弊害)を想定しているのはたいしたものと言える。日本の官僚は無謬神話が強いので、やる(やった)ことは正しいという前提なので、こうした弊害が出た時に、顕在化してもしばらくは無視するからなぁ。
ウォール・ストリート・ジャーナルに気になる記事が出ていた。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703341904575266880181159428.html?mod=dist_smartbrief

米国で不良資産となった不動産を購入するためのファンドが物件を買えないために、投資家に資金を返却しつつあるというニュースだ。分かっているだけで19件、600億ドルに達するという。接収した破綻金融機関の資産を売却するFDICの処分にはこうしたファンドが殺到しているようだが、購入の実績は上がっていないらしい。数少ない売却案件は高値で取引されているという。

1990年代初頭に米国不動産不況の際の投資家として、墓場のダンサーと呼ばれたサム・ゼルは最近のインタビューなどで十分なリターンを得られる適当な投資機会がないので、未だ投資はしないと言っていたが、それを裏付けたことになる。

こうした状況になっている理由としとこの記事が指摘しているのは、金融機関がリストラに応じていることにあるとしている。現在の金利が低いために、物件が金利を支払うのに必要な収益を生み出しているため、ローンをリストラ(多分主に延長だろう)することで、将来の回復を期待しているとのこと。

金融機関が売却よりもリストラに走るのは、金融機関も状況が前回の不動産不況の時と異なっていることがあるのだろう。前回最も問題をかかえたのは乱脈な商業用不動産向け融資をかかえた貯蓄貸付組合(S&L9だったが、彼らはもう存在しない。当時のS&L以外の多くの金融機関にとって、問題は商業用不動産が中心で、サブプライムの住宅ローンやその他の証券化商品などは存在していなかった。そのため商業用不動産の問題処理に集中できたという面があるのではなかったか。だから政府も不良債権処理を促した。今回は問題が多岐に渡るため、急激な不良債権処理の強制は金融機関の破たんにつながりかねないので、政府の圧力が比較的弱いため不良債権処理を急いでいないということなのではないだろうか。

しかしこうした金融機関の対応については、損失の先送りをしているのではないか、またこうした不良資産に資金がはりつくことで新たな資金需要に対応できないことを記事は問題視している。CMBSについては今後満期を迎えるにつれて売却が起こることも想定できるが、最近の記事などを見ると、CMBSですらも保有する金融機関がローンのリストラに応じているケースが散見されている。市場で処理されているのは、金融機関が十分に回収できる場合か、開発事業のような追加出資を必要とするものが多いように感じられる。

不動産市場にとっての問題は、こうした金融機関による抱え込まれ、元本の償還に全てのキャッシュフローが使われてしまう状態が、不動産市場の活性化になかなか結びつかないということだろう。不動産はその権利が移転すると、新たなファンドなどで雇用や新規での業務が発生し、そのことが不動産市場全体の活性化には役に立つ。問題の先送りは90年代の日本での状況の再現になりかねないという懸念がある。日本の金融機関は最終的に90年代末に公的資金の導入を受け、それに併せて不良債権処理を強制された。しかしそのことに加え、証券化やJ-REITなどの体制整備、外資の参入によって不動産市場は大いに活性化した。

もっとも今回の米国の市場の状況は、が90年代前半のマーケットと大きく異なる点に留意する必要があるだろう。それは需給面でみて、需要が十分にあるということである。前回はRTCがとにかく投げ売るというスタンスを明確にするまでは投資家の需要は非常に少なかった。RTCの競売にも最初は恐る恐る参加していた印象だった。ところが今回は前回のサム・ゼルなどの成功を見てきたが投資家が多かった故に、チャンスと見て大量の不良資産投資のファンドが一挙に設定された。

また前回の時はREITは市場規模も小さくインパクトがなかったが、今回は違う。大規模増資や、ブラインド・プール型のIPOで大量の資金を持っている。こうしたREITの要求リターンは不良資産ファンドに比べて低いので、良い物件はこうしたREITとバッティングしてさらわれてしまっている可能性がある。また前回はバブル期に高値で購入した日本の投資家が、国内でのバブル崩壊を受けで、先ず海外の処理から始めたため、比較的早い時期に大量に売却したが、今回はそのような投資家が未だ比較的少ないことも拍車をかけているのだろう。REITへの資産の移転が、不良資産としてではなく、合理的なリターンで進むなら、不動産市場は大きな底入れによる急回復ではなく、長い横ばいから徐々に回復に向かうという可能性があるのかもしれない。

それでも市場がある程度回復すれば、米国では処理が一気に進む可能性がありそうだが、日本はどうなのだろう。
マーケット的には好調な米国のREITに関して気になる記事があった。ウォール・ストリート・ジャーナルによる転換社債の償還に関する記事だ。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052748703341904575266772339288244.html?mod=dist_smartbrief

記事によると2005年から2007年にかけて米国のREITは270億ドルの転換社債を発行している。REIT側はこれらが転換されることを想定していたようだが、価格の低迷で転換が進んでおらず、今後2年間で150億ドルの償還が必要になる可能性があるということだ。記事によるとこうした転換社債の多くは期間が30年と長いが、5年毎に投資家が償還請求ができる仕組みだと言う。

問題はその原資をどうやって調達するかだ。米国REITの資金調達環境は改善しているようだが、こうした転換社債の償還には、結局なんらかのリファイナンス対策が必要になる。記事では優先株の発行などが考えられるとしており、また最近の増資ラッシュを見ると、銘柄次第ではあるが、一般論としては何とか資金調達が出来る可能性は高くなっているように見える。

もっとも記事では明確に言及していないが、ここで重要な視点はコストの上昇だろう。転換社債と比較すると、一般の負債や優先株では、金利(配当)負担が上昇し、その分配当は圧縮される可能性が高いと考えられる。これがどこまで織り込まれているかだ。それでなくとも記事では米国のREITは2011年に132.4億ドル、2012年182.9億ドルの無担保債権(主に社債か?)の償還を控えているとのことで、この借り換えには注意が必要だろう。

一方でやや明るいニュースとしては、米国のショッピング・センターに投資するREITにおいて大手テナントを対象とする部分の空室が減少しつつあるという。ちなみに米国のショッピング・センターは日本でイメージするような大型の商業施設というようりは、やや小型の店舗の集合体で構成される比較的小さめの商業施設を意味することに留意が必要だ。
http://retailtrafficmag.com/news/leasing_propels_shopping_center_reits-05252010/

まあそれでも1年前との比較でのFFOを見ると、その下落は目を覆う状況であることには変わりはない。低下に歯止めがかかった状況ということだろう。最近の米国の個人消費に持ち直しの動きがあることで、それが今後の賃料にどう反映されて行くかが重要になるのだろう。賃料が上昇するなら、価格にも好影響があるはずなのだが。