少し前のエントリで米国でブラインド・プール型のREITが増加しているということを書いた。
http://ameblo.jp/boulder-res/entry-10541747125.html

今の日本の不動産市場の低迷状態を見ると、日本でもこうしたブラインド・プール型のJ-REITが出来れば、不動産市場の活性化に役立つと思うのだがどうだろうか。今の日本の不動産マーケットに買手がいないなら、こうしたJ-REITが最後の買い手になれば価格の下支え効果があるはずである。もっとも最大の問題である金融機関の融資がでなければ状況は改善しないのかもしれないが、最悪レバレッジをかけないという方法もあるはずである。

日本ではブラインド・プール型どころかそもそも新たなJ-REITの上場自体が出てこない。J-REITの市場はどちらかというと過去の負の遺産の処理に起因する合併・再編が続いているだけだ。しかしこうした再編でも新たなJ-REITが登場し、それが再編に関与するという形が考えられるはずなのだが、それもない。

まあそもそも東京証券取引所はJ-REITの上場基準において70%以上の資産の特定を必要としているのでそもそもブラインド・プールはできないのだが。日本の投資家サイドの問題もあると思われる。

日本の証券会社は引き受けにあたり機関投資家の反応を重視する。この中で特に重要なのは、生命保険会社や銀行など不動産への投融資実績があり不動産の評価能力があると想定される投資家になる。そして問題となるのは、こうした機関投資家は、個別の不動産を独自で評価してその価格を積み上げてJ-REITの価格を評価しようとすることだろう。これはJ-REITの登場時にこうした機関投資家の株式部門が評価に困って不動産部門に評価を依存してしまったことによる。

この評価手法の問題は、流動性プレミアムといった法人全体と部分の評価がされないこと、また負債構成などの運営方針への評価が十分行われなくなることだろう。つまり不動産のデータだけで投資法人という法人と運用会社の評価が十分にできない可能性があることだ。またこのように不動産のデータを積み上げる方式だと、これから買うという資産が特定できないファンドは評価できないということになる。

これに対して米国では、過去の不動産ファンドの運用実績などを基準に比較的容易に上場REITが立ち上げられるのだ。これは米国の機関投資家の特性にもあるのだろう。米国のファンド(不動産に限らず有価証券などでも同じ)では、運用で一定の実績を上げたファンド・マネージャーは高額の報酬を得て、それを種銭にファンドを立ち上げる。またそうしたファンドに運用を委託していた機関投資家自身がこうしたファンド・マネージャーに自立を促し、種銭を提供したり、ファンドへの投資をコミットしたりしてくれる。日本の不動産私募ファンドが立ち上がったのは、外資系金融機関の不良債権ファンドなどで回収などに一定の実績を上げた企業に外資系の投資家からの資金が集まったからである。

これに対して日本のファンド・マネージャーはサラリーマンなので、他と異なる運用をした場合、成功しても報酬には天井があり、他と異なる運用で失敗すると左遷されたりして二度と運用にかかわれなくなる。こうなるとできるだけ失敗しない、失敗しても上司が納得するような運用を心がけることにならざるを得なくなってしまう。また機関投資家もこうしたファンド・マネージャーに自立を促すような対応をしない。

この環境が続く限りはなかなか新たに有能なファンド・マネージャーが育成されることは少ないだろう。運用会社や機関投資家が少し考えを変えてくれないものだろうか?








Wall Street JournalにGE Capitalが商業用不動産のポートを半減するとの記事が。
http://online.wsj.com/article/SB10001424052748704080104575287032730281078.html

報道によると、現状でGE Capitalは商業用不動産に投資と融資合計で800億ドルの資産があり、これを400億ドルに減らすということらしい。

このGE Capitalの損失が結構すごい。2008年以来、投資で70億ドル、融資で16億ドルの損失を計上したとのこと。投資での損失は何と40%というから多分結構レバレッジをかけていたのだろう。これだけ損をしたとなると今回の縮小も止むを得ないかもしれない。

個人的に驚いたのは結構レバレッジを短期のCPに頼っていたという点である。この記事の借入の話はGEグループ全体なので、GE Capitalがどの程度短期のCPに依存しているのかははっきりしないが、グループ全体では今も450億ドルの残高があり、2008年には1,000億ドルもの残高があったとのこと。短期の資金調達はコストが安くなるので、不動産投資からの収入との間の鞘を極大化できるが、金利が上がると一気に問題が顕在化するし、資金調達環境が悪くなると調達が継続できない。日本の私募ファンドが嵌ったのと同じ陥穽に落ちていたということか。

GE Capitalは90年代初頭の不動産不況の時にも大損をしたが、そこであきらめずに、不良資産投資に一気に舵を切って復活した。そのGE Capitalでもその時の教訓が忘れられていたということなのだろうか。まああの時とは若干状況が違うのだが。

取り敢えず当面は融資にシフトする形で事業を継続するようなので、GE Capitalが再び再生するのか、興味をもって見守ってみたい。少なくとも日本の金融機関のように羹に懲りて一切の活動を止めてしまわないところがさすがという感じもする。

ところで半減となると気になるのは、日本での行動だ。日本でもバブル崩壊前に融資に中心を移すなどユニークな戦略を取っていたがそれでも結構やられたのではないかという噂はある。結果として日本のポートフォリオは既にかなり縮小したとも聞くし、一方で年初あたりから新たに不良債権投資をやるという噂も聞いているのだがどうだろうか。J-REIT向けの投融資(そもそもJ-REIT向けはこの数字に含むのかな?)なども結構残っているので、今後の対応が気になるところだ。

まあGE Capitalにとっては最大の課題は1,400億ドル(多分不動産以外を含む数字だろう)をかかえる欧州になるのだろうが…
ツイッタ―上で不動産私募ファンドが内部留保をせず、減価償却費相当の現金を分配することを一般的に行っていることに関して、私募ファンドのアセット・マネージャーとして長期修繕や必要なメンテナンスを考えるべきであり、内部留保が必要だという議論があった。また、物件の売却時に瑕疵担保を負わなくて済むようにプロの宅建業者にしか物件を売却しないことについて、将来の瑕疵担保の負担のために資金を留保すべきという議論があった。これらの点については説明が長くなり、ツイッタ―では誤解される可能性もあるので、自分の考え方をまとめてみることにした。

まず最初に言えることは、論点が錯綜しているということだ。以下の3つのポイントに分けて個別に是非を議論するべきだと考えている。
①私募ファンドが内部留保をしないことは正しいか?
②私募ファンドのアセット・マネージャーが長期的観点で長期修繕や必要なメンテナンスを考慮すべきか?
③私募ファンドが物件売却時に瑕疵担保責任を負わないようにすることは適正か?

一番簡単なのは、②の長期的観点で長期修繕を考えてそのための積立を行い、また必要に応じてメンテナンスをする必要があるかという点である。これは考慮する必要があるのは当然だろう。考慮せずメンテナンスが十分に行わなければ、長期的には物件の質が低下し、テナントから高い賃料が取れなくなるだろうし、最終的にはその価値にも悪影響が出ることになる。また、必要な修繕などを行う際のコストもより高くなる可能性がある。

ただ①による資金の確保は②のために必要だが、そのための資金調達手法は多様であり、毎期の減価償却費中などから一定の金額を内部留保して、将来の必要に備えることだけがその手法ではない。例えばファンドのLTVを低く抑えておいて必要になった時に追加で借入するという手法を採用することは当然可能だろう。従って、毎期の減価償却費を留保しないこと自体を理由としてアセット・マネージャーが長期的にメンテナンスを考慮していないと考えるのは必ずしも適当ではないだろう。

また物件を売却する場合、留保した長期修繕積立金があってもそのお金は買主に引き継がれることは少ない。通常その分は売却価格で調整されるだろう。従って、最初から一定期間後に物件の売却を想定するなら、あえて修繕積立金を留保しておく必要はないことになる。また大手の不動産会社などは内部留保していると言っても、その資金を個別の物件単にで分別管理している訳ではなく、他のプロジェクトなどの利用されており、大手の不動産会社が明確に資金を留保しているとは言い切れない。経営危機に陥った不動産会社などでは、こうした資金があれば、それは運転資金や融資の返済に充当されてしまい残っていないだろう。

私募ファンドは運用実績を向上させ、次のファンドでの資金を受託することを目指す。そのためには、分配できる資金は出来るだけ早めに分配する方が運用実績(最終利回り)は高くなる。その観点からは内部留保をせずに減価償却費相当も分配することを選好するのは、ある意味当然ということになる。これが行き着くと長期修繕の積立不足の部分は売却時の価格で調整するということになる。

もちろん私募ファンドに問題がないと言うつもりもない。一部の私募ファンドは、目先の分配金、そして多分それに連動するであろう運用報酬の極大化のために、あるいはファンドの経営危機に伴う資金の充当のために、長期的な価値の維持のために現段階で行うべき必要なメンテナンスをも行わなかったり・先送りしたケースがあったことは事実だろう。

③の瑕疵担保責任については、私募ファンドはその性格上投資家から期限を設けて資金を預かっている。従って、ファンドの運用期限を過ぎてから、瑕疵担保責任に基づき投資家から資金を返してもらうというのは現実的ではない。ファンドの運用終了後しばらくしてから返金を請求されても投資家の方も困るし、そんなリスクがある投資には資金を提供しないだろう。また、物件を全て売却した私募ファンドは、通常資産を保有していた会社自体を精算することが一般的であり、そもそも瑕疵担保責任を負う主体がなくなってしまう。そうなると相手は瑕疵担保責任を負う会社が倒産した場合と同じことになる。

瑕疵担保の負担のために資金を留保するという考えもあるが、そのために必要な資金がいくらなのか判定が難しい。私募ファンドにとっては最終的に負担が不要になるまでにかかる時間が確定出来ないのでは投資家に説明が困難である。また、最終的な資金の分配が遅れれば、投資実績は悪化する。こうした点を考えると、不透明さを払拭するために瑕疵担保責任を負わない方法で物件を売却することは特に問題はないのではないだろうか。通常投資家にはそうしたリスクを明示している。実際大手の不動産会社でもプロ相手の売買では瑕疵担保責任を負っていない。あるいは信託銀行が受託する不動産を売却する場合も瑕疵担保責任を負わない。これは形式的に売主が信託銀行になるため、信託銀行は受託しただけの不動産の瑕疵担保責任を負いたくないからである。このように瑕疵担保責任を負わない形の取引は一般的に行われており、私募ファンドだけに瑕疵担保を負わせるというのは困難だろう。

日本の不動産会社はマンション分譲などを除くと、不動産を開発から手掛け、その後は長期保有で売ることをあまり想定してこなかった。その結果、実際に長期修繕なども実施したことが多いので、その観点から見ると、比較的短期で資金を回転させる私募ファンドの運用に不安を感じるのかもしれない。