NAREIT(全米不動産投資信託協会)でなかなか面白い記事が紹介されていた。米国でのブラインド・プール型のREITについての記事である。
http://www.reit-digital.com/reit/20100506#pg25

米国では金融危機の後、REITのバランスシート調整のための増資ラッシュが起きた。同時に新規公開も増えている。その新規公開で注目されているのが、取得する物件を特定せずに資金を集めるいわゆるブラインド・プール型のREITである。

こうしたプラインド・プール型が注目されたのは、不動産価格が下落した状況で新規に物件を取得するために、投資リターンが高いと想定されること、更には過剰な負債など既存REITが直面している過去の負の遺産がないことにあるようだ。運用会社の経営者の実績だけを基準に新規公開で数億ドル単位の資金が集まるというのがすごい。

今後の課題はこうして資金を集めたブラインド・プール型のREITが実際にどこまで適正な価格で物件を取得できるかだろう。これらのREITはCMBS市場の崩壊で満期に借り換えができない不動産が続出することから、そうした不動産を不良資産としての価格で安く手に入れることを想定している。

しかし本当にこうした有利な価格で不動産を取得できるのか疑問の声もあるようだ。記事によると金融機関は政府から多様な援助を受けているために、こうした不良資産を抱え込んでしまい、不動産が市場に放出されないのではないかという懸念も挙げられている。もしそうなると、出てくる物件が取りあいになって価格がつりあがってしまうことになり、想定したようなリターンは実現できなくなる。過去に前回の不動産不況の際に大規模な投資をして有名になった墓場のダンサーことサム・ゼル(エクイティ・オフィスなどの創業者)は最近、未だ「不良資産の大量放出が起きていないので投資の機会がない。」というコメントを出している。
http://www.anthonyhomer.com/sam-zell-pulls-no-punches-with-uli-crowd/

また個人的な印象として不良債権としてのリターンは長期では維持できない。賃貸市場が下落している状況では、いずれ賃料の更改で収益性は下がるはずだからである。その点も懸念材料だろう。

しかし、逆に考えると、こうしたブラインド・プール型のREITが多数上場してきたことで、価格の暴落は避けられるという安心感が広がり、それで不動産市場のセンチメントが良くなり、暴落が避けられているとも考えられる。その意味では今後の動向に注目してみたい。