先日Real Estate Finance & Investmentに「Are REITs In A Bubble」(REITはバブルか?)という記事があったのでTwitterで紹介した。
http://www.iirealestate.com/ReitCafe/2480895/Are_REITs_In_A_Bubble_.html?LS=EMS392216
そしらた昨日になって広瀬隆雄さんがブログで「グローバル・リートの投資信託は試練を迎える」というエントリを挙げていた。
http://markethack.net/archives/51556516.html

このあたりを見ていると、個人的に昨年末位から感じていた違和感と一致する。実は昨年何故あれだけ米国REITが上昇したのかが良く分からなかったのだ。まあそれで外している訳であまり大きなことは言えないのだが。

その違和感の原因は、米国の不動産市場、特に賃貸市場が悪化する中で、不動産の収益を裏付けとするREITの収益が増えるようには見えなかったからだ。金融危機によるファイナンスへの不安が払拭されることで、その懸念を織り込んだ価格からリバウンドするというのは理解できる。しかし喧伝されるような高い利回りは、将来の収益と価格の低下を織り込んでいるから成り立つように見えたのだ。その意味で上がりすぎに見えたのだ。

率直に言って米国REITの環境はそれほど良くは見えない。理由は以下のとおりだ。
①金融危機による一時のようなリファイナンスの懸念は解消しているが、不動産の担保価値自体は大きく下落しており、リファイナンス時のLTVを考えると、同じ金額のリファイナンスが出来るかは大きな疑問であり、今後も何らかのリストラクチャリングが必要と想定されるし、抵当権を実行されて物件を失う事例は出ると想定されること。
②米国の商業用不動産向けの融資市場はここ数年CMBSへの依存度が極端に高いが、CMBS市場の機能不全により、ファイナンスを提供する金融機関が減少し、既存の金融機関の多くも自己資本の棄損で回収を優先しているため、不動産を買おうにも資金調達に制約があること。
③金融危機時のリファイナンス懸念に対応するために、増資や、株式配当を行ったため希薄化が起きており、この影響の解消は極めて困難であること。
③裏付けとなる不動産の賃貸市場は大きく悪化しており、空室率は悪化し、賃料も下落している。米国に賃貸契約は長期なので、今後高値で契約している賃料の更改を控えて、収益悪化の懸念があること。
参考Cushman & Wakefieldのオフィスレポート(登録が必要)
http://www.cushwake.com/cwglobal/jsp/kcReportDetail.jsp?Country=3400213&Language=EN&catId=100004&pId=c27700005p
参考:Wall Street Journal 「Shopping-Center Malaise」(これは全文は有料)
http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304172404575168252332715066.html

これに対して想定される反論はこんあところだろうか?
①金融機関の融資姿勢は改善しており、金利も低いのでリストラが十分可能。
②新規のCMBSの発行が再開しており、大手金融機関の融資の事例も増えている。問題をかかえるのは主に地方金融機関でREITの借入先と必ずしも一致しない。
③新規公開が増加しており、こうした銘柄は過去のファイナンスというしがらみがないので底値で高いリターンの物件を買える。既存のREITも現在はエクイティ・ファイナンスによる潤沢な資金がある。既存のREITもこうした資金を利用して底値で高いリターンの物件を買うのでリターンの改善が可能。
④空室率や賃料の低下には底打ちの傾向があり、今後の景気回復で一層改善する可能性がある。全ての賃貸契約が高値の時に締結された訳ではなく、長期故に当面更改を迎える契約はピークよりは低い賃料での更改の影響は軽微で済む。

個人的には今のリターンが比較的高いのは、前述したように将来の賃料の低下が見込まれていると考えており、ここの見通しが改善しない限りアップサイドを期待するのは難しいのではないか。少なくとももう少し時間がかかる気がするのだが。さて…

しかし広瀬さんのコメントで少し調べてみると(きちんと網羅した訳ではないが)グローバル・リート投信はいつの間にか、野村(3本合計)の純資産残高が5000億円を超え、フィディリティ、日興も3000億円を超える。大和、国際も3000億円目前でDIAMまで入れるともう合計で2兆円近い。このうち約半分は米国のREITに投資されているはずなので時価総額の3%程度持っていることになる。しかもこの1年位でやたら大きく増えているようだ。まあ売れ筋とは聞いていたのだが、この残高はなかなかすごい。結構今回の米国REITの上昇にもインパクトがあったのではないだろうか?

しかしこれで何故日本のJ-REITは上がらないんだ。(苦笑)




前回のブログでは格付機関の見直しの前にBIS規制を見直す必要があると書いた。しかし残念ながら、その見直しが行われる気配はどうやらないようである。とすると格付機関をどう見直すかということになる。そこで格付機関の見直しについて考えてみることにする。

先日紹介したクルーグマン教授のコラムで紹介されているニューヨーク大学のリチャードソン氏とホワイト氏の意見の概要である。
http://whitepapers.stern.nyu.edu/summaries/ch03.html
この意見では格付が必要な場合、SEC(金融監督当局)が格付機関を選択するようにすべきであるという意見である。今回の一連の公聴会などで問題とされたのは、格付機関がその受託を失うことを恐れて、実質的に格付機関の選定をする立場になる投資銀行におもねって、格付基準の見直しなどを行わなかったような実態にある。この解決策は、そのように営業に傾斜する格付機関が、投資銀行からの受託を競う状態をなくすことに意義を見出している。

これはこれで一つの解決策だと思うのだが、問題もある。格付機関が民営である限り何らか外部からの影響を受けるリスクを排除できない可能性である。特にそれが投資銀行でない場合にどう対応するかという問題がある。例えば最近のゴールドマン・サックスの問題で登場するポールソンに相当するような企業が親会社やその関係者になって影響力の行使を考えたらどうなるのかということである。

個人的にはこの提案のレベルまでするなら、いっそ公営化してしまった方が良いのではないかとも考えている。既にBIS規制という形で一定のお墨付きを格付に対して公的に与えている以上、今さら公営化しても問題はないのではないかとも考えるのだ。金融機関のためにBISの下に新たな格付機関を設立して、そこが評価を行い、アップデートを含めて徹底的に調査委を行い、監査的な役割をになうなら良いのではないかと考える。

もっともこの方法も万能ではないだろう。問題になりそうなのは、この新たな格付機関と投資銀行などとの間の人材交流である。現在でも格付機関から投資銀行に転職する人材は多く、そこでいわゆる天下りシステムに似た何らかの癒着が発生するリスクはある。日本の公務員のような一定期間の関係者への再就職禁止みたいな組み合わせがあれば良いが、米国などではそうした規制が可能かは自信がない。

もうひとつの手法は、こうした商品への投資が可能な投資家としての機関投資家そのものをある程度絞ることだろうか。つまりBIS規制上内部格付ができない、自らの手法でこうした商品を評価できないような機関投資家を市場から排除することである。もっともこれはこれで投資家を減らし、市場の厚みが失われてしまうという弊害がある。さらに今回の金融危機での損失の計上の実態を見ると、こうした基準に該当する機関投資家であってもきちんと評価できていなかったらしいことを見ればが問題であるし、その一方できちんとした評価能力のある者がステータスの問題だけで投資できないという状況も変である。

最後の手法としては、格付機関の利用するモデルやそのモデルで使われた前提条件をきちんと開示して公に議論を進めるという手法である。様々な市場関係者からの意見を受け入れ、それをも公開することで、暴走を防ぐ役割が期待できる。また投資家もそうした少数意見なども参照してリスクの認識をすることができる。もっとも正しい意見が格付にきちんと反映されるかどうかという問題や、個別性の強い商業用不動産などでは借り手やテナントに関連する情報をどこまで開示できるのかという問題は残るのだろう。

落とし所を考えると最後のものが適当になりそうなのだが、BIS規制を考えると公営化でも良い気がするところが頭が痛い。




ネット上のJ-REITの配当データで自分の使い易いものがないので、自分の確認用に。

2010年5月11日現在

Boulder Researchのブログ

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*2 投資口分割前
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