奈良の仏像の楽しみ方 | ぶつぞうとわたし 2

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仏像Tシャツショップ "Bo tree tee" のブログ。

ステキな仏像サマとの出会い、そして仏像Tシャツのことなど・・・
仏像好きの私の日常を、気の向くまま ゆる~く 自由に綴っていきます。

2013年9月28日
兵庫県立美術館にて開催された、
奈良トライアングルミュージアムズ 神戸シンポジウム
「奈良の仏像の楽しみ方」という講演会に参加してきました。

「奈良の仏像の楽しみ方」チラシ


1か月ほど前にポスターを見かけ、
「わー♪はなちゃんが神戸に来るんや~、スゴーイ!
はっ、しかも、大好きな西山さんの講演もあるぅ!!
その上、入場無料って(感激)!!
これはもう、参加しない理由が見当たりませぬ!」と即申込み(笑)
この日が来るのを、ものすごぉく楽しみにしていました。

奈良トライアングルミュージアムズというのは、
・奈良国立博物館
・奈良県立美術館
・入江泰吉記念奈良市写真美術館
この3館のことで、
1300年の歴史を誇る奈良の文化財と歴史景観の魅力を発信し、
新しい奈良文化を創造していく基点となるために発足したそうです。

・・・残念ながら、この中では奈良国立博物館しか行ったことがありません。
(というか、奈良博大好きすぎて、他の美術館には目もくれていなかったふしが・・・)
でも、講演会を聞いて、行ってみたくなりました!
主催者の思うツボですね(笑)

さて、会場には20分ほど前に到着しましたが、
たくさんの人で熱気ムンムン!
狙っていた前列の席もすでに埋まっていました。あちゃー。
早くも脳内反省会を開きながら、目ざとく前方隅っこの席を確保。

講演会は2部構成になっていました。
まず第1部は、奈良国立博物館学芸部長 西山厚さんの基調講演「仏像に会う」。

西山さんは、以前奈良博で仏像ガールの講演会があった時にお見かけしたことがあります。
やさしい語り口調で、わかりやすく仏像の楽しいお話をしてくださいますが、
時々ずばっと鋭いことを言って会場をわかせてくれるところがツボにはまり、大好きになったのです。

今回も楽しくお話をしてくださいました。

まず、奈良博の仏像館について。
展示室にはたくさんの仏像がいらっしゃいますが、その前で
お坊さんがお経をあげているスライドが映し出されました。
東大寺や興福寺のお坊さんたちに定期的に来てもらってるのだそうです。

読経を聞いてうっとりしている(ように見える)十一面観音さまのスライドが映り、会場に笑いが。

「仏像は、信仰の対象として造られ、信仰の対象として守られてきたもので、
今も信仰の対象である。そしてすぐれた美術作品である。」
という言葉に、奈良博が仏像を大切にしている精神が伝わってきて、うれしくなりました。

また、なるほどなーと思ったお話が、
「仏像はどの場所で見るかで違って見える」ということ。当たり前のことに思えますが、
「正面」、「下から見上げる」、「上から見下ろす」
それぞれの位置から撮影したスライドが映されると、
同じ仏像には見えないぐらい、まったく違って見えることに改めて気づかされます。
友人や家族と一緒に仏像を見ても、身長が違うと、それぞれが見ている仏像は違っているのですね。
これからはかがんだり、背伸びしたりしながら見てみよう!と思いました。

興味深かったのが、日本の仏教の特徴として、
「日本の仏教は悟りを開くことを目指していない。
やすらぎ、安心を求めている」ということです。

インドには四大仏跡として、
ルンビニー:誕生
ブッダガヤ:成道(悟り)
サールナート:初転法輪(最初に説法をしたところ)
クシナガラ:涅槃
それぞれの場所や、日にちまで明確に残されています。

日本ではお釈迦様の誕生日の4月8日はよく知られていますが、
悟りを開いた日や、説法を始めた日はそうではありません。
言われてみると、確かにそうですよね。

そして日本では知らない人はいない!とも言える人気仏・阿修羅像のお話もありました。

―もともと阿修羅が安置されていた興福寺の西金堂は、
聖武天皇のお后、光明皇后が母親の冥福を祈って建てたものです。
阿修羅の表情には、母を亡くした光明皇后の悲しみが含まれています。
そして阿修羅とチームを作っている八部衆。
その一員の五部浄は、本来大人なのに子供の姿で表現されています。
これは幼くして病死した息子の姿を現したのではないでしょうか。―

「元気いっぱい、幸せいっぱいの人が仏像を造らせたりはしない。
仏像には大きな悲しみ、深い祈りが込められている。」

確かにそうだな、とその言葉が心にしみました。
そしてこれから仏像に会いに行くときには、
仏像の注文主、仏師、仏自身の心にも思いをはせるようにしよう!と熱く決意。

ほかにもたくさんの話題にあふれ充実しまくりの第1部は、時間をややオーバーして終了。
すでに満足感いっぱいです。

休憩をはさんでからの第2部は、パネルディスカッション。

パネリストは先ほどの西山厚さん、
奈良県立美術館学芸課長の南城守さん、
元・奈良市写真美術館学芸員の説田晃大さん。
ゲストはモデルのはなさん(スラリとして顔が小さくてキレイ!!)。
司会はNHKキャスターの上田千華さん。

まず、明治の頃の仏像の写真がスライドに映されます。
工藤利三郎さんが撮影した、当時の阿修羅像は腕が取れたまま。
東大寺の屋根には鴟尾(しび)がなく、たわんだ屋根を下からつっかえ棒で支えているように見えます。
荒廃した当時の奈良の様子がわかります。

続いて大正時代の写真。
スライドには小川晴暘さん(小川光三さんの父)が撮影した中宮寺の弥勒菩薩の写真が映し出されます。
よくあるのは向かって右側から撮った写真ですが、
これは左側、弥勒さまが頬に手を当てている腕の方から撮影している、珍しいアングルです。
仏像を美しく見せ、表情を引き出すために、鏡で光を反射させて撮影していたのだそう。
弥勒さまがとても幸せそうに微笑んでいるように見えます。

明治から大正にかけて、
「記録」から「表情を引き出す」という方向へ
少しずつ写真の撮り方が変化していったことがわかります。

次に、土門拳さんと入江泰吉さんの写真。
同じ仏像でも、この二人の写真を見比べてみると
おもしろいほど表情がまったく違います。

土門さんの方は、仏師たちの「のみ」の跡にまで迫るような、「見る写真」。
入江さんの方は、一巡礼者として一歩引いて撮影している、「ながめる写真」。
「どちらがお好みですか?」との質問に、とっても正直な回答をされた西山さんに会場もニヤニヤ(私だけ?)。

「仏頭展」チラシ


東京藝術大学美術館で開催されている「仏頭展」にも話が進みます。
はなちゃん曰く、
「興福寺の国宝館にいらっしゃる時は、
何度会いに行っても笑ってくれなかったけれど、
今回の仏頭展で初めて笑ってた!」

確かに、私も二度ほど仏頭さんにお会いしてますが、
しーんと瞳の奥まで沈黙されている印象しかありませんでした。
そんなあの方が笑っていた?!

西山さん曰く「実はね・・・」と、急に過去の仏頭展にまつわるコワイお話が!!
会場騒然(笑)ほんまやったらこわすぎる~!
「でも、今回は大丈夫。十二神将が守っているから仏頭も喜んでいます。」
ホッ。そりゃよかった!

はなちゃんは何度も仏頭展に足を運んでいるそうですが、
「最初の頃は十二神将と再会できて、うれしくてしかたがないって感じだったけど、
昨日行ったらだいぶ落ち着いていらして、場慣れしたんだなって。」
仏頭さんの気持ちを代弁するような、自由なトークに、会場が笑いに包まれます。

司会の上田さんに向かって、西山さんが
「そういえば初めてお会いしたとき、仏頭に似てるな~って思ったんですよ。」
「え~っ?!」会場大ウケ。パネリストと会場が一体になって盛り上がりました。

数奇な運命をたどり、謎も多い仏頭。
十二神将に囲まれて笑っている姿を東京へ見に行きたくなりました。

また仏像に会いに行こう!奈良へ行こう!と思えた内容で、
参加できてホントによかったです♪