喪服がさ、
あれ俺最後に喪服着たのいつ?
お袋死んだ時か。
去年の春、旧友の葬儀は絶賛「会社行きたくねい」「辞めちゃおっかな」時期でそれどころじゃなくて欠席した。
から、
夏用の喪服カビだらけ。
・・・これさ、確かさ、
最初の結婚の時、奥さんの会社のなんとか販売でスーツ3着誂えた(あつらえた)内の1着だ。
何年前だよ?
いや何十年か。
娘「喪服取りに母親の家に行きたくない」(なんかわかるわかるぞー)
で、
一緒に朝イチで『喪服無人レンタル』に。
ヘぇ〜
こんなとこあるんだ〜
鍵の暗証番号をメールで貰ってワンルームの無人の部屋に入ってなんか悪いことしてるみたい。
いやこれいいわ気兼ねしなくていいや試着し放題だし。
男女別部屋なので娘とLINEしながら「こんなんかな?」「こっちかな?」
ありゃ電話だ会社だ。
総務のお姉さんから一通りお悔やみを言われた後に、
「kenさん慶弔(けいちょう)休暇が10日付くので13日まで休んでください14日から出勤になります」
ええええ。何ですかそれ? 二日くらいじゃないんですか?
休みません。は、ないんだろな決まりだから。ほんでさ、確かさ、
慶弔休暇て無給じゃなかったっけ?
10日も無給って。
仕方ないか。
ほんでね、
今さ、
霊柩車乗って火葬場向け。
二列目の親父の棺の隣に座ってるんだけど、前列一列目との間に分厚いビニールが下がってて隔壁になってんのね。
思い出すぜ陰圧車。
乗ったことはないけど。
多分同じ理由だよね。
遺体て病気で死んだりしてんだろし。
赤坂から青山〜霞町の交差点抜けて広尾〜白金。
俺が働きまくって飲んで歩いて遊びまくった懐かしのルートだ。
俺の出棺か?
どーもね、
俺、喪主なんだけどね、
住職の話も右から左だし、とりあえず「ありがとうございます」て頭下げときゃいいか。
読経もさ、
鐘の音が『HELL'S BELL / ACDC』のイントロに聞こえて、あとずっと考えごと。
誰にも迷惑を掛けずに骨になりたいが、
泣いてくれる女の人が一人も居ない終末てのもなぁ。
あれだけ迷惑掛けまくった親父が眠るように穏やかに死んだしなぁ。
俺の最後ってそんなもんかも知れないよなぁ。