非正規雇用の増加が格差拡大を助長していると言うと言い過ぎかもしれませんが、全く無関係とはいいきれないでしょう。給与が正規雇用と比べて相対的に低い非正規雇用が日本全体の就業者の4割になるのですから、それが格差拡大に影響していることは容易に想像できます。

2005年の「週刊エコノミスト」に当時伊藤忠商事の会長だった丹羽宇一郎さんの発言が載っています。
富(所得)の2極分化で中間層が崩壊する。中間層が強いことで成り立ってきた日本の技術力の良さを失わせ、日本経済に非常に大きな影響を与えることになる。中間層の没落により、モノ作りの力がなくなる。同じ労働者のなかで「私は正社員、あなたはフリーター」という序列ができ、貧富の差が拡大しては、社会的な亀裂が生まれてしまう。
戦後の日本は差別をなくし、平等な社会を築き、強い経済を作り上げたのに、今はその強さを失っている。雇用や所得の2極分化が教育の崩壊をもたらし、若い人が将来の希望を失う。そして少子化も加速する。10〜15年たつと崩壊し始めた社会構造が明確に姿を現す。その時になって気づいても「too late」だ。
企業はコスト競争力を高め、人件費や社会保障負担を削減するためにフリーターや派遣社員を増やしているが、長い目でみると日本の企業社会を歪なものにしてしまう。非正社員の増加は、消費を弱め、産業を弱めていく。
若者が明日どうやってご飯を食べるかという状況にあっては、天下国家は語れない。人のため、社会のため、国のために仕事をしようという人が減っていく。

いかがでしょうか。
丹羽さんの言う通りになってきていると思うのは私だけでしょうか。
あるエコノミストが、非正規雇用の増加は雇用の調整弁として一定の経済合理性がある、などと書いていましたが、この考え方には人材をコストと捉えていることが根底にあります。そしてそれが社会の安定を危うくすることに気づいていません。

また、雇用を最優先すると不況時には全員の賃金が下がってしまうので、非正規という調整弁により中核社員(正規雇用)を救っているのだと主張する人もいます。
これはかなり階級差別的で安直な考え方だと思います。つまり、この前にやるべきことはたくさんあるのではないでしょうか。
こんな経営なら誰でもできます。
経営とは、丹羽さんが言われるように、強い経済を作り上げるために、差別をなくし、平等な社会を築き、雇用や所得の2極分化など起こさぬように、知恵を絞って行わなければなりません。
90年代以降、社会的経済的格差を是認するような風潮が見られます。自己責任などというもっともらしい表現でそれは語られ、特に若い世代では当たり前のようになっているのかもしれません。
しかし、社会的経済的格差は何もよいことを生みません。一部の得をする階級を生むだけです。

今後の雇用は正規非正規という考え方ではなく、個々の事情やニーズに応じた一律的ではない柔軟な雇用形態にしていくべきだと思います。時間や場所を固定するのではなく、状況に合わせて(状況とは会社と個人の双方の状況です。)働くのです。
賃金は成果とプロセス、時間を勘案して決定しますが、個々の働きよりもチームや組織の成果を重視したほうがいいでしょう。社会の多様化に伴い、全体の協力がより重視されていくと解すべきでしょう。様々な働き方、生き方を企業は認め支援していくことで社会が活性化し安定していくのです。