熟達化とはどういう概念でしょうか。
一般的には、ある特定の領域における熟練の思考や行為を指し、いわゆるベテラン層がもつ高度な能力レベルを指すでしょう。熟達した領域に達するにはそれなりの経験年数がかかるのは、どんな領域でも同じであり、多少の差はあっても二桁以上の年数がかかると思われます。
一つの領域において熟達者になるには、おおむね1万時間の訓練が必要だとする研究もあり、「10年ルール」という言葉も研究者たちの間では存在しているようです。

事務や営業で働く人たちに身近なものとして、ホワイトカラーの熟達化についての研究があります(楠見 2012)。
それによれば、熟達化には4段階あるとしています。

まず、最初に「手続き的熟達化」があります。
これは、まさに手続き面における熟達ですので、指導を受ければほぼ誰でも習得できるレベルです。おおよそどの組織でも1年目に到達できます。アルバイトやインターンでも到達可能なレベルといえるでしょう。

次に、「一人前における定型的熟達化」があります。
手続き的知識を蓄積し、決まりきった仕事であれば速く正確に自動化されたスキルによってできる段階です。時間をかければほとんどの人が到達できますが、残念ながらここで止まってしまう人もいます。概ね3~4年目に到達できるレベルです。

3つ目に「中堅者における適応的熟達化」があります。
これは、柔軟な「手続き的熟達化」によって、状況に応じて規則が適応できる状態で、文脈を越えた類似性認識ができるようになり、類似的な状況において過去の経験や獲得したスキルを応用できるようになります。
仕事に関する手続き的知識を蓄積し構造化することによって、仕事の全体像を把握でき、スキルの使い方が柔軟になります。一般的には6~10年で到達します。
十分に経験ある領域では仕事を任せておけるレベルでしょうから、組織ではまずはこのレベルに到達してもらうことが必要ということになります。

そして4つ目の最後のレベルです。これは「熟達者における創造的熟達化」になります。
膨大な量の質の高い経験により、きわめてレベルの高いスキルや知識からなる「実践知」を獲得しており、すべての人が到達できるものではありません。
高いレベルのパフォーマンスを効率よく正確に発揮でき、事態の予測、状況の直感的分析と判断は正確で信用できます。ここまで到達できている人が部門長や役員、社長になる資格があるということでしょう。3つ目の「適応的熟達化」のレベルでは、複数部門を束ねるリーダーとしては不十分なのです。
上位レベルのリーダーを任せてみてうまくいかないのは、「適応的熟達化」のレベルでとどまっており、「熟達者における創造的熟達化」のレベルに到達できていない可能性が高いのではないでしょうか。

ではどうしたら4つ目の「熟達者における創造的熟達化」の段階に到達できるのでしょうか。
それについては次回に書きたいと思います。