サイモンといってすぐにピンとくる方はあまりいないかもしれません。
最近の経営論で頻繁に参照されることは少ないので致し方ないというところでしょうか。
サイモンとはハーバート・A・サイモンであり、バーナードと並び称される組織論の巨匠といえます。
1978 年に組織における意思決定プロセスの研究でノーベル経済学賞を受賞しています。一般的には著書『経営行動』で有名です。
サイモンによれば、組織とは「意思決定とその実行のプロセスを含めた、人間集団におけるコミュニケーション及び関係のパターン」であるとし、また「相互関係をもつ役割のシステム」であるとも言っています。
組織を科学的にとらえ、人間とその相互のシステムという点に注目していることがサイモンの特徴といえるでしょう。
サイモンは組織をその機能である職能と権限のラインだけでとらえることは不十分であると批判し、経営は行為であり、その行為を行うという選択、すなわち「意思決定」に注目しなければならないと主張します。
そして、経営の本質は選択=意思決定であるというのがサイモンの基本認識です。
意思決定とは、個々人の合理性の制約の下で行われるというのがサイモンの主張です。
サイモンはこのことを以下のように説明します。
❝そもそも人間が一人で受け止められる情報には限界があり、数多くの代替的選択肢のすべてを列挙して評価することは困難である。したがって、結果の完全な予測も困難で、その時々で実行可能な行動は限られているのであり、このような中では客観的に合理的な行動をとることはできない。そこで人間は、所与の心理的環境の範囲内で、また所与の諸前提の範囲内で判断することとなる。つまり、すべての代替的選択肢ではなく、自分自身でとることのできる、妥当性が高いと考える代替的選択肢の中から選択することになり、これが制約がつくということの意味である。❞
すこし回りくどいですが、意思決定は「限定合理性」のなかで行わざるを得ないということでしょう。
これだけですとどうしたらいいのだと気分が重くなりますが、サイモンは「救い」を与えてくれます。
❝このような制約は、組織に属する人間と属さない人間では、その意味合いは異なってくると考えられる。すなわち、個々人の合理性には制約があっても、組織に属することにより、組織はこのような個人に対し選択に必要な環境を与えることができ、合理性を高めることができると考えられるのである。❞
つまり、組織活動は合理性を高めるためにある「コミュニケーション」で「関係のパターン」であり、そのプロセスをどのように充実させるかが重要なポイントになるでしょう。
一方、サイモンは直感を軽視してはならないとも言っています。
❝熟達した経営者の直感は、学習および経験の産物といえるのであり、直感的な判断を分析的な判断と対比させて、前者は非合理で、後者の方が望ましいものであると考えることは間違っている。❞
サイモンは合理性には限界があるので、意思決定をよりよいものにするために直感の価値を積極的に認めています。分析か直感か、合理か限定合理か、いずれもどちらが正しいというのではなく、どちらも重要であることをともすれば科学的思考を優先してしまう現代人は忘れてはならないといえるでしょう。