シニア社員とは、一般的には50代半ばくらいからの層を指すことが多いのですが、この稿においては60歳以上のいわゆる定年後再雇用の人たちとして考えてみたいと思います。

ご存じの通り、法改正によって企業は65歳までの雇用を義務づけられました。さらに、努力義務として70歳までの雇用が推奨されています。
今後はますます少子高齢化が進み、その結果労働力不足がより顕著となり、シニア社員雇用の必要性は減じることはなく、ますますシニア社員をどう戦力化するかが問われています。
シニア社員雇用の対応として、従来は定年後に再雇用し、処遇も定年前に比べて抑えて、年金支給年齢までのつなぎといった形での所謂福祉型の雇用を行ってきました。
昨今はそうした福祉型雇用から戦力型雇用への転換がいわれ始めており、企業は対応をとり始めたというところでしょう。

シニア社員の就労意識については、まだあまり明らかになっていませんが、ある研究でシニア社員と一般社員(正規、非正規)の「就労環境に関する意識」の差を明らかにしています(天池 2020)。
調査は3つの区分を対象に行われました。シニア社員として60歳以上の非正規社員、一般社員として60歳未満の正規社員と非正規社員です。
「ワーク・エンゲイジメント(仕事に誇りとやりがいを感じ、熱心に取り組み、活き活きとしている状態)」と「職務継続意思」については、シニア社員と一般社員では差がありませんでした。つまり、やる気については3者に差がありません。
しかし、他の項目は、シニア社員の方が一般社員より統計的に有意に悪い結果となっています。
他の項目とは、「多様な労働者への対応」、「上司の公正な態度」、「成長機会」、「心身の健康に悪影響を及ぼす仕事の負担」です。これは周りの人たち、特に上司がシニア社員に対して、一般社員とは異なる対応、あるいは気を遣い過ぎて距離をとっている、最悪のケースでは無視しているなどにより、シニア社員の意識を下げている可能性を示唆しています。

シニア社員の「ワーク・エンゲイジメント」と「職務継続意思」は一般社員と差がありませんから、彼らと同等に処することで、戦力化への途が開けてくると考えるのが妥当でしょう。
さらにいえば、シニア社員は豊富な経験を有しており、内容や状況によっては、一般社員よりも優れた対応がとれることも十分考えられます。
新しいことへの対応は難しい面があることは否定し難いですが、若い世代より経験が豊富なため、深慮が求められる状況などでは重要な戦力と言えるでしょう。

65歳までの雇用はまだ始まったばかりでもあります。
戦力化の観点に立てば、個々の能力、適性に応じた配置や処遇はもちろんのこと、一般社員と同じように普通に戦力と考えて処遇することが大切です。

もはや、「定年後の人」といった特殊な人などいない時代になってきているのです。