日本企業の強みとはいったいどんな点でしょうか。
団結力、内部昇格の経営者がほとんど、年功を大切にする、品質重視等々、挙げれば様々あるでしょう。
もちろん、これらの特徴は見方を変えれば課題にもなり、状況によっては改善が必要なケースもあります。ただし、こうした特徴を安易に批判的にとらえて否定することには慎重になるべきです。
物事には多面性があり、多面的な検討をせずに一面的な判断では思わぬ落とし穴にはまる危険性があるからです。
失われた30年といわれて久しいですが、こうした日本企業の強みが原因なのでしょうか。
私はそう思いません。
失われた30年は、金融政策と経済政策に難があって生じているのであり、けして企業経営がうまくないから30年の低迷があるわけではありません。
うまくいっていない経営から内部留保を500兆円も積み上げることができるのでしょうか。
うまくいっていない経営の役員報酬が億単位になるのでしょうか。
企業経営は、グローバル化や地政学的な変化への対応を考慮すると、順風満帆ではなく、曲がり角にあることは間違いありませんが、その対応に迷いがあるように感じます。
迷いで代表的なのは、日本の経営はダメだから根本的に変革すべきだ、というものです。
今までの経営がダメだから変えるべきだ、もっといえば日本はダメだから根本的に変えるべきだといった漠然とした批判意識が蔓延しているように感じます。
もちろん、改善は大切で、それがなければ茹でカエルになってしまう危険があります。だからといって、それまでの方向を全否定するのも考えものです。
30年前の成果主義の導入もそうでしたし、最近のジョブ型雇用が日本を良くするといった考え方にもそうした匂いを感じます。
制度や考え方は社会の在り様を規定します。また逆に、社会の在り様が制度や考え方を生み出します。
これらは鶏と卵のような関係で、密接に結びついています。
企業経営がダメだから、制度やルールを変えればうまくいくという発想がありますが、そんなに単純な話しではないし、そもそも日本企業の経営はけしてダメではありません。
世界から日本は、歴史的伝統と技術革新等の現代性が同居する高度な社会であると、ある種の羨望をもって見られています。
また、社会の安定、平和主義、そしてとりわけ安全は驚異的なこととして認識されています。
それらがどうして実現できているのか、よく考える必要があるでしょう。
企業経営も然りです。
先人の知恵と努力により培ってきた制度や考え方がどういうものなのか、失われた30年の理由がそこにあるなどと短絡的に考えてはいけません。
最近の欧米企業は、「パーパス経営」と称して、志(こころざし)を大切にするべきといった論調が出てきていますが、日本では江戸時代から「三方よし」として関係者を大切にする経営が行われてきました。これはまさに「志」経営です。
日本企業は捨てたものではないのです。