我々は常に不確実性のなかで最善を尽くそうと努力していますが、判断する根拠は案外希薄なので最善に行動できないことも少なくありません。
そうした例で、社会的にも経済的に問題だと思うのは、いわゆる「日本型経営が誤っている」というものです。
これはバブル崩壊時から現在に至るまで、結構多くの人がなんとなく抱いているのではないでしょうか。
ここでいう日本型経営とは、長期雇用を前提とした共同体経営をいいます。
年功序列や企業内組合も特徴として指摘されることが多いですが、これらは企業によりずいぶん様相が異なり、特に企業内組合については、中小企業にはほとんどみられないものですので、日本的経営の特徴とするのは無理があります。
バブル崩壊以降日本企業が低迷したのは、バブルの影響で経済環境が激変したことが理由で、長期雇用を前提とした共同体経営が理由ではありません。
企業財務のなかで人件費の比率が増加基調にあると予測したことは事実としてありますが、それが常態化し長期的に企業の存続を危ぶむほどに悪化するというストーリーを考えたとしたらかなり悲観的であり、問題があるでしょう。
多くの企業がこの悲観論に乗ってしまい、長期雇用の共同体が企業経営に影を落とすとして、人件費削減に舵を切り、共同体経営もどこかへ行ってしまいました。
「日本型経営の特徴である長期雇用は人件費を増大させ企業経営を蝕む」というストーリーがなぜ広がったのかについては様々な意見があるのでここでは触れませんが、この状態を回避するために、官民挙げて人件費削減のために、長期雇用ではない非正規雇用を導入し拡大していったのです。
人件費の増大は、バブル崩壊に限った話ではなく常に起きるものです。当たり前ですが、無策でいたら経営を蝕みます。
経済が成長すれば給与を上げる必要がありますし、企業の成長が鈍化すれば、相対的に人件費が上がります。
人件費が増大することは企業の宿命ともいえますので、宿命を前提にいかに給与を下げずに企業活動を存続すればよいか、社員の生活の安定を第一に考えるのが経営というものでしょう。
今となっては働く人の40%が非正規雇用であり、しかも低賃金かつ不安定な雇用です。
長期雇用を前提とした共同体経営はほんとうにどこかへ行ってしまった感があります。
また、最近は「ジョブ型雇用」と称して、共同体経営に影を落としかねない雇用形態も出現し始めました。
日本が繁栄してきたのは、生活の安定を官民挙げて追求してきた、いわば共同体をベースとした「人間中心の経営」があったからです。
最近になり、世界的に人的資本重視の経営という観点が出てきており、「人間中心」が見直されるようになってきたようです。
これまでがあまりにも成果・効率重視で、人間性を軽視したことからそうさせていると思いたいですが、しばらくは動向を見守る必要がありそうです。