シニア人材とは一般的には60歳以降、あるいは役職定年を迎える55歳くらい以降の人材を指し、それまでの雇用条件とは異なるものを用意されて仕事をする人達といった感じでしょうか。
実際、少し前までは60歳定年を境に給与が大幅に下がり、行う仕事もそれまでの仕事とは異なり、周辺業務のような責任を軽減される形が多かったようです。
しかし最近は、65歳定年が義務化され、70歳定年も努力義務化されたことと労働力不足からの影響で、シニア人材の戦力化が人事戦略のなかでも重要な位置を占めるようになってきています。
すなわち、従来のいわゆる福祉的雇用から戦略的雇用へ大きく舵を切る企業が多くなってきたのです。

シニア人材の魅力はなんでしょうか。
当たり前ですが経験値が高いといえます。
専門性、職務遂行力、マネジメント力、問題解決力、ネットワーク(人脈)、指導育成力などはもちろんのこと、修羅場を潜り抜けてきているため胆力や調整力といった人間性の高さもあります。また、失敗も相応に経験してきており、リスク対応力も高いといえるでしょう。
これらはすべて仕事に必要な能力であり、若年層や中堅層はまだ十分に経験できていないことを経験してきているところが強みといえるでしょう。

問題はこれらの能力をいかに十分に発揮してもらうかですが、これがうまくいっていないケースが少なくありません。私も経験しましたが、現場では福祉的雇用の考え方が支配的だったりします。
役職定年になりそれまでの部下あるいは年下の後輩が上司になり、仕事への期待など何も言われず、腫れ物にさわるような対応をされるといった状況です。
シニア人材はモチベーションが低いという指摘が多いですが、そうなる必然のコミュニケーションをしていることが多いのです。
これはシニア人材活用が人事施策として確立されていない典型例であり、これらの問題を解決していけばシニア人材の有効活用は進んで行くことになります。

まずはシニア人材への期待を明らかにし、期待に応えられるかどうかを意欲の面も含めて人事部が中心になって本人との対話で確認する。つまり業務とのマッチングを丁寧に行うことが出発点です。
また、ミドル層時代からキャリアに関する自分なりの視座を涵養する機会を研修などの形で行うことも重要です。シニア人材になってからどうするかを考えるのではなく、準備をしておくということです。
そしてなにより、シニア人材との対話をマネジメント(年下の上司)が丁寧に行い、敬意を表したうえで、しっかりと目標管理により仕事をしていくということでしょう。

シニア人材は引き続き会社に貢献したいという意欲は高いはずです。
また、これまで貢献してきたという自負もあります。
そうした心情面への配慮を忘れずに、対話を丁寧に行いながら働いてもらえば、きっと引き続き貢献してくれるはずです。