岸田内閣が注力している「新しい資本主義実現会議」が策定した新しい資本主義のグランドデザイン及び実行計画(案)が明らかになりました。
成長戦略を描くのは当然として、新自由主義で課題となった「格差」の是正や「分配」についてどのような道筋を描くのか、この点が「新しい資本主義」の肝といっていいでしょう。

草案では、「我が国においては、成長の果実が、地方や取引先に適切に分配されていない、さらには、次なる研究開発や設備投資、そして従業員給料に十分に回されていないといった、「目詰まり」が存在する。その「目詰まり」が次なる成長を阻害している。待っていても、トリクルダウンは起きない。積極的な政策関与によって、「目詰まり」を解消していくことが必要である。」としています。

また、「分厚い中間層の形成は、民主主義の健全な発展にとって重要であり、新たな資本主義における経済社会の主要な担い手である中間層が潤うことで、格差の拡大と固定化による社会の分断を回避し、サステナブルな経済社会を実現できる。このため、賃金引上げや中小企業への取引の適正化等のフロー、教育・資産形成等のストック両面から中間層への分配を進めるとともに、今後の人手不足時代に対応したデジタル投資等への支援を通じて持続可能な分配を下支えする」と分配の基本的な考え方を明らかにしています。

分配には賃金の改善が不可欠ですが、「賃金引上げの推進」を図るために、
①    賃上げ税制等の一層の活用
②    重点業種を示した政府を挙げた中小下請取引適正化
③    介護・障害福祉職員、保育士等の処遇改善のための公的価格の更なる見直し
といった形で、特に中小企業や処遇が低い業種の処遇改善の道筋が明確化された点は評価できるでしょう。

また、「男女間の賃金差異」の解消に向けて、女性活躍推進法に基づき開示の義務化を行うとして、
①    情報開示は、連結ベースではなく、企業単体ごとに求める。ホールディングス(持株会社)も、当該企業について開示を行う。
②    男女の賃金の差異は、全労働者について、絶対額ではなく、男性の賃金に対する女性の賃金の割合で開示を求めることとする。加えて、同様の割合を正規・非正規雇用に分けて、開示を求める。
として、かなり踏み込んだ開示を企業に求めており、男女間の賃金格差是正へむけた強力な誘因となるでしょう。

さらに、「女性の就労の制約となっている社会保障や税制」の「130万円の壁」や「106万円の壁」についても、「最低賃金の引上げによって、解消されていくことが見込まれる。」としています。

全体を通して、官と民が協力して対応することが肝心として、官の関与を強化することがうたわれており、新自由主義への反省が色濃く出ている内容です。
まるで社会主義のようだと批判する向きもありますが、こうした官の関与がないと、うまく動けないのが日本人です。
以前、「世界で唯一社会主義がうまくいっている国がある。それは日本だ。」と誰かが言ったそうですが、日本の特徴をうまく言い当てています。
「新しい資本主義」で「一億総中流社会」よ、もう一度です。