マッキンゼー・アンド・カンパニーが実施した上場企業366社に関する調査結果(2015年)によれば、経営陣の民族的・人種的多様性が上位4分の1に入る企業は、
業界平均を上回る財務リターンを上げる確率が35%高く、性別の多様性が上位4分の1に入る企業は、同様の数字が15%高かったということです。
日本では民族的・人種的多様性は実現が難しいでしょうから、性別多様性に目を向ける必要がありそうですが、上場企業2,220社の女性役員比率は7.4%(2021年3月期決算)であり、また、全就業者のうちの管理職層の割合は15.4%(厚労省調べ 2021年)ですので、そもそも割合が低く多様性指標としてはまだ活用できそうもありません。
しかし、多様性にはまさに多様な視点があります。学歴、経歴、キャリア志向性、性格、価値観などです。
こうした観点は多様性の指標として扱われることはあまりないようですが、こうした観点こそ多様性を考える際には必要だと思います。
学歴については、確かな統計資料はありませんが、大企業や上級国家公務員の採用をみると、偏差値上位大学出身者でほぼ固定化しているのが現実です。したがって、もう少しバラエティーを意識した採用を行うべきかもしれませんが、偏差値上位大学出身者は仕事の能力が高い人が多いので、採用効率を考えると偏差値基準の採用は合理的です。
そのほかの多様性視点である経歴、キャリア志向性、性格、価値観などは面談等により確かめることが可能であり、積極的に行う必要があるでしょう。
私がいた組織では、厳格な採用基準があったわけではないのですが、結果として似たような人材ばかり採用するようになってしまったため、性格・能力テストと面接の回数を多くして人材の多様性を図るようにしたところ、それまでと比較して格段に多様な人材を採用することができました。
彼らの活躍の程度は、私が退職してしまったので確認できませんが、当たり前ですが、多様な人材を採用するだけでは多様性を活かすことにはなりません。
組織はもともと凝集性や同調性を求める性質がありますから、たとえ多様な人材を採用したとしても、無策ですと多様な人材として活用できない可能性が高まります。特に日本ではこの傾向が強いのではないでしょうか。
日本の組織はOJTにより自社内で通用する知識・技能を習得させることに長けており、せっかく多様な人材を採用しても時間が経過するにつれ、どんどん似た者人材を育成してしまうのです。つまり、多様な人材を育む風土が希薄です。共同体意識が強いことがさらにそれを助長します。
こうした金太郎飴製造装置を内蔵した日本企業は十分留意して多様性を扱わなければなりません。
多様な人材が多様な視点を活かして協働することを奨励し、特に経営陣や管理職は率先垂範する必要があるでしょう。
この過程では、意見の対立が多く発生しますが、対立を避けずによく話し合い、そこから止揚して新たな考え、価値を生み出さなければならないのです。対立を恐れず、むしろそれを楽しむようでないと多様性を活かした組織にはなり得ないのだと思います。
「和をもって貴しとなす」の「和」は単に仲良くすることではなく、よく話し合うという意味があります。古来から大切にされてきた価値を現代においても体現することを求められているのです。