日本の貧困率が15%(正確には15.7% 国民生活基礎調査2018)で、国民の6人に1人が貧困状態にあることは、最近よく報道されるようになったのでご存じの方が多いでしょう。
この貧困率は相対的貧困率であり、正確には可処分所得の中央値の半分未満しか所得のない層の割合を表しています。
2018年の可処分所得の中央値は248万円で、その半分は124万円です。年間124万以下で生活している層が6人に1人いるということになります。
欧米諸国をみてみると、米国は18.0%で日本より多く、英国は12.4%、ドイツは9.8%、フランスは8.4%となっています。(OECD 2019)ヨーロッパでは所得補償や年金などの社会的な補償が厚いことから貧困層も少ないと考えていいでしょう。
逆に米国は自由競争が徹底されることで、多くの弱者を生んでしまっていると言えるでしょう。アメリカンドリームもいいですが、ほぼ5人に1人が貧困層である。それが米国の現実です。
日本の状況を時系列でみると、1985年の貧困率は12.0%でした。貧困率のピークは2012年で16.1%です。
新自由主義的改革は1990年代から本格化しますから、その改革に沿った形で貧困率は上昇しており、ここ数年がピークで変化がなく踊り場となっています。
一方、可処分所得は違った変化をしていきます。
1985年は216万円で、ピークは1997年で297万円です。そこから徐々に下がり続け2018年に248万円になります。
所得はバブル崩壊後も数年間上がり続け、1997年を境に下がっていくのです。
この変化はマクロの経済状態とは直接関係が見いだせず、企業の人事施策と関係が深いと考えられます。
派遣法が制定されたのが1985年で、その後改定を繰り返し、1996年には多くの業務に派遣社員の導入が可能となりました。そして、派遣社員だけでなく、期間限定や職務限定を理由にした処遇の低い非正規職員も増加していきました。
これらの動きは、可処分所得の下降が始まった1997年と同期しており無関係とは思えません。
こうした官民あげての施策が、賃金全体を抑制する方向に働いたことは否定できないでしょう。
貧困率を改善するには、所得を上げることと社会的な救済(生活保護や年金)を厚くすることが必要です。社会的救済にはコストが必要ですから、所得を上げることを中心課題と考えるのが妥当でしょう。
国は岸田首相主導の『新しい資本主義実現会議』において、『成長と分配』を基本テーマとして、『分配』の見直しにより格差の是正を検討すると思われました。しかし、実現会議の議事要旨をみると『成長』について『人』を重視することを中心に検討していますが、分配についての議論は今のところ行われていません。
一方、企業の人事施策で中心になるのは、賃金の底上げと非正規職員の正規化による処遇の改善でしょう。
特にフルタイム非正規職員は直ちに正規化が必要です。非正規はパートタイムに限定するべきで(30数年前までそうでした。)、職責が異なるから非正規にするといった詭弁はやめるべきでしょう。
一次的には人件費増になるでしょうが、それを乗り越えるのが経営であり、詭弁によりフルタイム職員の人件費まで削るのは、単なるコストカッターであり、人倫にもとる行為に思えます。