春闘が始まっています。
1990年代までは今の季節になると今年はどのくらい賃金があがるのだろうと、自分の給与が関心の第一でありながら、社会の賃金模様も気になったものです。
90年代に入りバブルがはじけるとそんな関心も薄れてしまいました。個人の賃金は昇格や年功により多少上がるにせよ、社会全体でみると上がらなくなってしまったからです。
日本の平均賃金が他の先進国に比べて劣ることと、少なくとも20年間は上がっていないことは大問題です。
経済学の観点からも究明すべき問題と思いますが、なぜかあまり問題視しない空気があり、報道も最近までほとんどされていませんでした。
マスコミ、特に全国紙やテレビのキー局は高給与で知られていますので、自分たちが困っていないから報道しないのだろうと勘ぐってしまいます。
もっと勘ぐれば、大企業は高給与であり、日本の平均賃金が上がらずとも困らないので、連合などの組合も問題視しなかったとも思ってしまいます。
現状をあらためて確認すると、1997年の平均賃金は467万円であり、2020年の平均賃金は433万円となり、上がらないどころか30万円も減少しています。驚愕の数字だと私は思いますがいかがでしょうか。
これに対して米国は、2000年に432万円だったのが2020年には786万円と82%増になり、英国は284万円から475万円とこちらも67%増です。
この間、株主への配当は5倍を上回るレベルで増額され、役員報酬は億単位の者が数百名になり(情報公開されている上場企業のみ)、内部留保に至っては480兆円との報道もあります。
これは何を意味しているかといえば、経営者が儲けを従業員に十分に還元せず、株主と自分たちにだけ還元してきたと言えます。
どうしてこんな無茶なことが起きたのか、そして今だに修正を図る方向を感じないのか。
様々な意見はあると思いますが、政策面の影響が少なくないでしょう。
アベノミクスでは企業の儲けを増やし、株主への還元を求め、株価の上昇を企図しました。
2014年に伊藤邦夫一橋大学教授を座長に、『持続的成長への競争力とインセンティブ~企業と投資家の望ましい関係~』が発表され、この中で「最低限8%を上回るROE(自己資本利益率)を達成することに各企業はコミットすべきである」とされました。
なぜ8%なのか、なぜコミットすべきなのか、大きなお世話だと思いますが、日本の経営者はお上に従順なのでしょう。せっせと儲けに励んだのです。
儲けることは非難されるべきことではありませんが、そのためのプロセスに誤りがありました。
企業は人件費を変動費として扱うことを覚えてしまったのです。
それまでは人件費は固定費でしたが、非正規職員を増やすなどして変動費として総額を抑えることに注力し、儲けを増やし株主と自分たちへの還元に励んだのです。
非正規職員が増えたのは小泉政権時代からですから、アベノミクスにすべての責があるとは言えませんが、企業の儲けを社員にまで還元しない構図を生みそれを強化したのはアベノミクスといって間違いないでしょう。
今年の春闘はどうなるのでしょうか。