上司によるパワハラが原因で自殺した社員のご遺族に、トヨタの豊田章雄社長が直接謝罪し、再発防止を徹底するとの和解合意書を交わしたとの報道がありました。
この社員はパワハラで体調を崩したため休職し、その後別の上司の下で復職しましたが、両親や会社の同期にSOSを発しながら自殺してしまったのです。
こうした悲劇を繰り返さないために、再発防止措置を講ずるのは当然であり、豊田社長のパワハラ撲滅への意気込みが感じられる謝罪行動も評価できますが、この問題はパワハラ対応にとどまらない組織における重要なテーマを投げかけています。
発生当時、自殺の事実は豊田社長に報告されましたが、その経緯は報告されませんでした。
豊田社長は労基署が自殺とパワハラの因果関係を認めたという報道により事実を知ったということですから事態は深刻です。
発生直後には事実関係がはっきりしないことが多いですから報告がなかったとしても不思議ではありません。
しかし、こうした重大案件では、社内調査により事実関係を明らかにし、それを適時に社長に報告するのが当然と考えられますが、なぜか行われませんでした。
優秀なトヨタの社員が揃いも揃って事の重大さに気づかなかったとは考えにくく、隠蔽したと考えるのが普通でしょう。
こうした隠蔽志向はどの組織にもあることを我々は自覚しなければなりません。
目の前の危機を回避したいがために隠蔽する、時がたてば忘れ去られるだろうと期待して黙る、嘘をついてその場をかわすなどの性向が人間にはあります。
ましてや組織では仲間を守るためにみんなで嘘をつくことが少なくありません。
これらを防止するためには、人間心理、集団心理について理解を深め、まずい状況が発生した時こそ、自分たちの立場と責任について冷静である必要があります。
そのためには日頃から自分たちの言動を省みることを日常化するのです。
まずいことを容易に口にできる風土を醸成するには、定期的に自分たちの行動について問題はないか、不安はないかを相互確認する。
問題や不安は通常ありますから、全くないとすればむしろ異常で、そうした時こそ慎重に確認する。
リーダーが率先して反省事項を口にすることも大切でしょう。
なお、その際に気をつけなければならないのは個人攻撃にならないようにすることです。
原因を個人に帰してしまいがちなのも人間の性向ですので注意が必要です。
最近、組織における心理的安全性なる概念が注目されています。
それはまずいことを皆で容易に口にできる風土であり、それは日常から形成するしかないのです。