経営課題を考える時、実務の観点から考えるのか、理論の観点から考えるのかということがあります。

豊富な経験があれば実務中心で考えるかもしれないし、経験が少なければ先人の理論を中心に考えることが多いかもしれません。

 

私は実務家でしたので、「理論は机上の空論、現実は違う」という考えでした。

しかし、人様にアドバイスをする立場になると、さすがに自分の拙い経験と少々の理論をベースにした自論だけでは不十分ですから、広く様々な理論を学び続けています。

 

そのなかで感じるのは、理論は実践的であるということです。

理論は言うまでもなく机上だけで生まれるものではありません。

研究者が実務のフィールドを何年もかけて研究し、事実を十分に咀嚼し理論化していきます。

つまり、事実がベースにあるため実践的なのです。

但し、理論を実践する際に気をつけなければならないのは、前提条件や環境の差異です。

それらを十分に考慮して実践しないと理論が活きてきません。

 

たとえば、優れたチームは役割分担が明確でありながらお互いによく助け合うことが知られています。

ある新しいチームが立ち上がった時の話です。

リーダーは仕事の分担を明確化しそれをメンバーに共有し相互の協力を要請しました。

メンバーもそれをよく理解してスタートしました。

しかし、残念なことにそのチームは日が経つにつれ、各自が自分の仕事だけに集中し、協力を惜しむチームになってしまいました。

なぜなら、実際にはメンバーの能力不足で、他の人の仕事を代わりに行うことが難しかったからです。

立ち上がったばかりのチームだったので、リーダーは各自の能力を的確に把握できていませんでした。

各自への期待が大き過ぎたのかもしれません。

チームワークを機能させるためには、メンバー各自の能力と適性を十分に把握したうえで役割分担を決めなければならないことは理解していたのですが、焦りがあったのでしょう。見切り発車してしまったのです。

 

このケースでは能力、適性を見極めることが前提条件です。

前提が整っていなければ違った結果が出ることは容易に予想できますが、残念ながら気がつかなかったのです。

理論を実践するためには、前提条件と環境を十分に把握し、必要な場合には調整を惜しんではならないことを教えてくれた私の苦い経験です。

 

なお、このチームの後日談ですが、役割を複数で担当する形に変更することで、能力向上はもとより、仕事の中身の相互理解も進み、助け合いがスムーズに行えるチームになっていきました。